71 / 71
最終話 強くなろう
しおりを挟む
「……頼り過ぎていた、のかな」
「ウォンッ?」
リンは魔力剣を手に取ると、少し落ち込んだ様子で魔力剣を握りしめる。この魔力剣は瞬時に光刃を展開できる武器であり、これさえあれば光剣や光槍を一瞬で造り出して武器として扱える。
しかし、魔力剣を失った際にリンは取り乱してまともな判断もできなかった。魔力剣は確かに優れた魔道具ではあるが、別に魔力剣が無くても光剣や光槍を作り出す事は可能である。
(武器に甘え過ぎていたのかもしれない)
魔力剣は確かに便利な魔道具だが、それ故にリンは魔力剣に頼り過ぎていた事を痛感した。魔力剣のお陰でこれまで何度か危機を脱した事はあったが、その反面にリンは魔力剣に依存していた。
(このままじゃ駄目だ)
マリアがドルトンに頼んで作って貰った魔力剣だが、リンは戦闘の度に魔力剣に頼り切って戦うのは止める事にした。魔力剣を机の上に置いたリンは右手に意識を集中させ、魔力剣無しで光剣を作り出す。
ハルカとの修行のお陰でリンは魔力操作の技術もより磨かれ、そのお陰なのか光剣は森で暮らしていた時よりも簡単に作り出す事ができた。右手に形成された光剣を確認し、改めてリンは頷く。
「よし……これはしばらくは封印しよう」
「ウォンッ?」
魔力剣がなくとも戦えるようになるため、リンは当分の間は魔力剣の使用を禁じる事にした。勿論、ドルトンがわざわざ作ってくれた物なので手放す事はせず、それでも当分の間は装備するだけで武器として扱わない事に決める。
(よし、一からやり直そう)
初心に戻ってリンは森で暮らしていた時のように武器に頼らず、自らの魔力と肉体のみで戦う事にした。バルルからの助言を思い出し、限界強化を頼らなくても十分に戦えるように身体を鍛える事も決めた。
「もっと身体を鍛えれば身体強化の効果も高まるはず……よし、これからはもっと身体を鍛えるぞ!!」
「ウォンッ!!」
「う、う~んっ……はにゃっ?」
リンの言葉にウルが同意する様に鳴き声を上げると、その声で起きたのかハルカが目を覚ます。彼女はまだ寝ぼけているのか、リンがベッドから起き上がっているのを知ると、リンに抱きついてきた。
「えへへ、リンく~んっ」
「うわっ!?ハ、ハルカ!?」
「う~ん、まだ眠いよう……一緒に寝よう」
「キャインッ!?」
寝ぼけたハルカは持ち前の怪力を発揮してリンとウルを両腕で抱きしめ、二人を抱き枕代わりに利用してベッドに寝転がる。リンもウルもハルカから離れようとするが、彼女の力には敵わずに抱きしめられたままベッドに横になる。
「むにゃむにゃっ……」
「く、苦しいっ……!?」
「クゥ~ンッ……」
必死にハルカを引き剥がそうとしたが、今のリンの素の力では到底彼女には敵わず、結局は朝になるまでリンとウルはハルカの抱き枕にされた――
――翌日の朝、いつの間にか眠りこけていたリンは目を覚ますと、ハルカとウルと共にベッドに横たわっていた。結局は一晩中ハルカに抱きしめられたまま過ごしたらしく、抱きしめる力も弱まっているのでリンはハルカから離れた。
「すぅっ、すぅっ……」
「はあっ……まずはハルカに負けないぐらい力を付けないとな」
「グゥウッ……」
ハルカは見た目に寄らず凄まじい怪力を誇り、素の状態でも身体強化を発揮させたリンにも負けない力を誇る。しかも彼女は興奮すれば無意識に力を高めるらしく、実際に巨人族のバルルとの綱引きの際も凄い力を発揮していた。
もっと強くなると誓ったリンだったが、まずは目の前にいる大切な女の子に力負けしない程度に身体を鍛える事を決めた。リンはウルに拳を向けると、それを見たウルは不思議そうに前脚を拳にくっつける。
「一緒に強くなろうな」
「ウォンッ!!」
「う~ん……リン君、ウルちゃん、ずっと一緒に居ようね……」
眠っているハルカの寝言を聞いてリンとウルは驚いたが、彼女の内に秘めた願いを聞いて笑顔を浮かべた――
※これにて魔法使いじゃなくて魔力使いですは完結とさせていただきます。
しおりを挟む
あなたにおすすめの小説
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
風龍佳乃
恋愛
伯爵家に生まれたクリスティーヌは
代々ボーン家に現れる魔力が弱く
その事が原因で次第に家族から相手に
されなくなってしまった。
使用人達からも理不尽な扱いを受けるが
婚約者のビルウィルの笑顔に救われて
過ごしている。
ところが魔力のせいでビルウィルとの
婚約が白紙となってしまい、更には
ビルウィルの新しい婚約者が
妹のティファニーだと知り
全てに失望するクリスティーヌだが
突然、強力な魔力を覚醒させた事で
虐げてきたボーン家の人々に復讐を誓う
クリスティーヌの華麗なざまぁによって
見事な逆転人生を歩む事になるのだった
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に
父が再婚しました
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。