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第60話 巨人族との綱引き
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「リンく~んっ!!次はあそこに行こうよ!!」
「う、うん……でも、そろそろお父さんの所に行かないの?」
「え~?大丈夫だよ、もう少しだけ遊ぼう!!だって祭りは今日で終わっちゃうんだよ!?」
ハルカに連れられてリンは色々な屋台を周り、彼女は次に興味を示したのは射的屋だった。射的と言ってもこの世界には銃の類は存在しないため、子供でも引ける弓を使って用意されている的に当てる。的に当てる事ができれば好きな商品と交換できるが、中々上手くはいかない。
「えっと……この弓を使えばいいのかな?」
「おや、挑戦されますか?一回撃つ事に銅貨一枚です。もしも的の中心に当てる事ができればこちらに並んでいる商品の一つを差し上げます」
「射的か……そういえば僕、やった事がないな」
「そうなんだ。なら私が手本を見せるね」
弓を手にしたハルカは意外な事に慣れた手つきで弓を構え、彼女は的に視線を向けて矢を番える前に弦を引っ張って張力を確認する。そして正面から撃つのではなく、少し上向きに弓を構えて撃ち込む。
「えいっ!!」
「えっ、凄い!?」
「あ、当てた!?」
ハルカの放った矢は弧を描きながら的に向かい、見事に真ん中に的中させた。それを見たリンは驚き、射的屋の主人も驚く。彼女は一発で当てた事に満足し、弓を置いてリンに笑いかける。
「えへへ、凄いでしょ~?私、弓には自信があるんだ」
「うん、凄いけど……なんか意外だな」
「昔、エルフの友達に弓の使い方を教えて貰ったんだよ~」
「エルフの友達?」
「お、お見事です!!お客様、どうぞ好きな物を持って行ってください!!」
リンはハルカの言葉を聞いて少し気になったが、射的屋の主人がハルカに好きな商品を選んで持ち帰るように促す。ハルカは並べられている商品を確認し、その中から自分が欲しい物を選ぶ。
「えっと……これが欲しいな」
「それは……ぬいぐるみ?」
「うん、ウル君と似てるから可愛いね」
「クゥ~ンッ」
犬のぬいぐるみを選んだハルカは嬉しそうに抱き上げ、それを見たウルは尻尾を振る。心無しか彼女が選んだぬいぐるみはウルと似ており、少しだけウルも気になっている様子だった。
ハルカの意外な特技がまたもや判明し、彼女は馬車の運転だけではなく弓の扱いにも長けていた。嬉しそうにぬいぐるみを抱くハルカを見てリンは彼女がぬいぐるみが好きだと知る。
「ハルカはぬいぐるみが好きなの」
「うん……子供っぽいと言われるけど、ぬいぐるみが大好きなんだ。だから大人になったらぬいぐるみを作るお店を開いたいと思ってるんだ」
「へえ、なんかハルカらしいね」
「もしもお店を開いたらリン君にもぬいぐるみを作ってあげるからね」
「えっ、あっ、うん……楽しみにしてるよ」
「ウォンッ」
リンはハルカの言葉に苦笑いを浮かべるが、彼女の夢が叶う事を祈る。射的屋を後にしたリン達は広場へと辿り着く。広場の方では大勢の人だかりができており、どうやら何か催し物が行われているらしい。
「何だろう、あの人だかり……」
「あ、もしかして……きっと巨人族の人が来てるんだよ!!毎年ここで面白い催し物が行われてるんだよ!!」
「巨人族って……うわっと!?」
広場の人だかりの中心には身長が軽く3メートルを超える大男が数名存在し、彼等を見てリンは「巨人族」だと知る。巨人族の存在は知っているが、実際に見たのは初めてだった。
(ほ、本当に大きい……僕の身長の倍以上あるぞ)
巨人族の成人男性の身長は平均で4メートルを超え、女性でも軽く3メートルは超える。また、巨人族の殆どが筋骨隆々とした体型であり、広場に集まっている男性も筋肉の鎧をまとったかのような立派な体つきだった。
「さあさあ、次の挑戦者は誰だ!?ここにいる4人の巨人族の戦士の内、1人でも勝てればここにある豪華賞品を好きなだけ持ち帰れますよ!!」
「ふんっ!!」
「ぬんっ!!」
「むんっ!!」
「掛かってきなさい!!」
広場の中心に居る巨人族は4名であり、その内の3人が男性で最後の1人は女性だった。全員が自分の筋肉を見せつけるようにポーズを取り、そんな巨人族の姿を見てリンは戸惑う。
「な、何あれ?」
「毎年ここで行われている行事だよ。巨人国から来てくれた巨人族の人と戦えるんだよ」
「えっ!?戦う!?」
「うん、戦うと言っても別に本当に戦うわけじゃなくて、綱引きとか、かけっこで勝負するんだよ」
「あ、なるほど……」
広場に集まった巨人族はわざわざ他国から訪れたらしく、毎年にこの場所で巨人族と競い合っているらしい。集められた巨人族の内の1名を指定し、その内の誰でもいいから勝負して勝てば豪華賞品を貰えるらしい。
商品として用意されたのは豪華そうな鎧や剣、他にも高そうな装飾品や極めつけには馬車までも用意されていた。馬車も商品として置かれている事にリンは驚き、こちらの馬車が一番の豪華賞品である事は間違いない。
「さあさあ、今の所は巨人さん達の連勝中です!!いったい誰が彼等を打ち破れるのか、次の挑戦者は誰だ!?」
「おう、次は俺だ!!」
「待て待て、俺もやるぞ!!」
「よし、俺もだ!!」
集まった人間の中から3人の男性が名乗り上げ、巨人族の元へ訪れる。彼等は巨人族を間近で見上げて冷や汗を流し、体格的には大人と子供ぐらいの差があった。
「おっと!!ここで挑戦者が3名も集まりました!!彼等の勇気ある行動に拍手を!!」
「頑張れよ!!」
「そろそろ勝ってくれ!!」
「負けるんじゃないぞ!!」
集まった人々は挑戦者に対して拍手を行い、そんな彼等の反応に巨人族の4人は余裕の笑みを浮かべる。集まった男達は巨人族の中から唯一の女性を指名した。
「あ、あんただ!!俺達はあんたに挑戦するぞ!!」
「ふふっ……それは嬉しいわね」
「おっと、挑戦者が指名したのは女戦士バルルだ!!」
女性の巨人族はバルルという名前らしく、男達の前に移動した。リンは一対一で戦うのではない事を初めて知り、巨人族側は1人で戦うが挑戦者側は複数名で挑んでいい事を初めて知る。
「3人で戦ってもいいの?」
「うん、だって巨人族の人と戦うならそれぐらいはいないと勝てないもん」
「へ、へえっ……」
巨人族は見た目通りに腕力にも優れており、一人で挑んでも決して勝ち目はない。だからこそ挑戦する側は常に数名がかりで挑むのが当たり前らしく、3人の挑戦者は綱引きで挑む。
バルルと3人の男は綱を掴むと、男達は緊張した様子でバルルと向かい合う。その一方でバルルの方は綱を片手だけで掴み、余裕の表情を浮かべていた。
「何時でもいいよ、怪我しないように手加減してやるからね」
「な、舐めやがって!!」
「いくら巨人族だからって、相手は女だ!!」
「俺達が負けるはずがねえっ!!」
男達はバルルの言葉に怒りを抱き、全力で綱を握りしめる。司会者はそれを確認すると、勝負の合図を行う。
「それでは……始めっ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
「くっ!?」
勝負が始まった瞬間に男達は全力で縄を引っ張り、それに対して意外な事にバルルは引っ張られていく。その姿を見た人々は驚きの声を上げ、ハルカも意外そうな表情を浮かべる。
「す、凄い!!あの人たち、もしかして勝てるかな!?」
「いや……無理だと思うよ」
一見は挑戦者側が有利に思えるが、リンはバルルの様子を見て彼女が敢えて苦戦しているふりをしている事に気が付いた。実際に彼女は片腕だけで綱を引いており、しかも表情は余裕の笑みを浮かべていた。
「う、うん……でも、そろそろお父さんの所に行かないの?」
「え~?大丈夫だよ、もう少しだけ遊ぼう!!だって祭りは今日で終わっちゃうんだよ!?」
ハルカに連れられてリンは色々な屋台を周り、彼女は次に興味を示したのは射的屋だった。射的と言ってもこの世界には銃の類は存在しないため、子供でも引ける弓を使って用意されている的に当てる。的に当てる事ができれば好きな商品と交換できるが、中々上手くはいかない。
「えっと……この弓を使えばいいのかな?」
「おや、挑戦されますか?一回撃つ事に銅貨一枚です。もしも的の中心に当てる事ができればこちらに並んでいる商品の一つを差し上げます」
「射的か……そういえば僕、やった事がないな」
「そうなんだ。なら私が手本を見せるね」
弓を手にしたハルカは意外な事に慣れた手つきで弓を構え、彼女は的に視線を向けて矢を番える前に弦を引っ張って張力を確認する。そして正面から撃つのではなく、少し上向きに弓を構えて撃ち込む。
「えいっ!!」
「えっ、凄い!?」
「あ、当てた!?」
ハルカの放った矢は弧を描きながら的に向かい、見事に真ん中に的中させた。それを見たリンは驚き、射的屋の主人も驚く。彼女は一発で当てた事に満足し、弓を置いてリンに笑いかける。
「えへへ、凄いでしょ~?私、弓には自信があるんだ」
「うん、凄いけど……なんか意外だな」
「昔、エルフの友達に弓の使い方を教えて貰ったんだよ~」
「エルフの友達?」
「お、お見事です!!お客様、どうぞ好きな物を持って行ってください!!」
リンはハルカの言葉を聞いて少し気になったが、射的屋の主人がハルカに好きな商品を選んで持ち帰るように促す。ハルカは並べられている商品を確認し、その中から自分が欲しい物を選ぶ。
「えっと……これが欲しいな」
「それは……ぬいぐるみ?」
「うん、ウル君と似てるから可愛いね」
「クゥ~ンッ」
犬のぬいぐるみを選んだハルカは嬉しそうに抱き上げ、それを見たウルは尻尾を振る。心無しか彼女が選んだぬいぐるみはウルと似ており、少しだけウルも気になっている様子だった。
ハルカの意外な特技がまたもや判明し、彼女は馬車の運転だけではなく弓の扱いにも長けていた。嬉しそうにぬいぐるみを抱くハルカを見てリンは彼女がぬいぐるみが好きだと知る。
「ハルカはぬいぐるみが好きなの」
「うん……子供っぽいと言われるけど、ぬいぐるみが大好きなんだ。だから大人になったらぬいぐるみを作るお店を開いたいと思ってるんだ」
「へえ、なんかハルカらしいね」
「もしもお店を開いたらリン君にもぬいぐるみを作ってあげるからね」
「えっ、あっ、うん……楽しみにしてるよ」
「ウォンッ」
リンはハルカの言葉に苦笑いを浮かべるが、彼女の夢が叶う事を祈る。射的屋を後にしたリン達は広場へと辿り着く。広場の方では大勢の人だかりができており、どうやら何か催し物が行われているらしい。
「何だろう、あの人だかり……」
「あ、もしかして……きっと巨人族の人が来てるんだよ!!毎年ここで面白い催し物が行われてるんだよ!!」
「巨人族って……うわっと!?」
広場の人だかりの中心には身長が軽く3メートルを超える大男が数名存在し、彼等を見てリンは「巨人族」だと知る。巨人族の存在は知っているが、実際に見たのは初めてだった。
(ほ、本当に大きい……僕の身長の倍以上あるぞ)
巨人族の成人男性の身長は平均で4メートルを超え、女性でも軽く3メートルは超える。また、巨人族の殆どが筋骨隆々とした体型であり、広場に集まっている男性も筋肉の鎧をまとったかのような立派な体つきだった。
「さあさあ、次の挑戦者は誰だ!?ここにいる4人の巨人族の戦士の内、1人でも勝てればここにある豪華賞品を好きなだけ持ち帰れますよ!!」
「ふんっ!!」
「ぬんっ!!」
「むんっ!!」
「掛かってきなさい!!」
広場の中心に居る巨人族は4名であり、その内の3人が男性で最後の1人は女性だった。全員が自分の筋肉を見せつけるようにポーズを取り、そんな巨人族の姿を見てリンは戸惑う。
「な、何あれ?」
「毎年ここで行われている行事だよ。巨人国から来てくれた巨人族の人と戦えるんだよ」
「えっ!?戦う!?」
「うん、戦うと言っても別に本当に戦うわけじゃなくて、綱引きとか、かけっこで勝負するんだよ」
「あ、なるほど……」
広場に集まった巨人族はわざわざ他国から訪れたらしく、毎年にこの場所で巨人族と競い合っているらしい。集められた巨人族の内の1名を指定し、その内の誰でもいいから勝負して勝てば豪華賞品を貰えるらしい。
商品として用意されたのは豪華そうな鎧や剣、他にも高そうな装飾品や極めつけには馬車までも用意されていた。馬車も商品として置かれている事にリンは驚き、こちらの馬車が一番の豪華賞品である事は間違いない。
「さあさあ、今の所は巨人さん達の連勝中です!!いったい誰が彼等を打ち破れるのか、次の挑戦者は誰だ!?」
「おう、次は俺だ!!」
「待て待て、俺もやるぞ!!」
「よし、俺もだ!!」
集まった人間の中から3人の男性が名乗り上げ、巨人族の元へ訪れる。彼等は巨人族を間近で見上げて冷や汗を流し、体格的には大人と子供ぐらいの差があった。
「おっと!!ここで挑戦者が3名も集まりました!!彼等の勇気ある行動に拍手を!!」
「頑張れよ!!」
「そろそろ勝ってくれ!!」
「負けるんじゃないぞ!!」
集まった人々は挑戦者に対して拍手を行い、そんな彼等の反応に巨人族の4人は余裕の笑みを浮かべる。集まった男達は巨人族の中から唯一の女性を指名した。
「あ、あんただ!!俺達はあんたに挑戦するぞ!!」
「ふふっ……それは嬉しいわね」
「おっと、挑戦者が指名したのは女戦士バルルだ!!」
女性の巨人族はバルルという名前らしく、男達の前に移動した。リンは一対一で戦うのではない事を初めて知り、巨人族側は1人で戦うが挑戦者側は複数名で挑んでいい事を初めて知る。
「3人で戦ってもいいの?」
「うん、だって巨人族の人と戦うならそれぐらいはいないと勝てないもん」
「へ、へえっ……」
巨人族は見た目通りに腕力にも優れており、一人で挑んでも決して勝ち目はない。だからこそ挑戦する側は常に数名がかりで挑むのが当たり前らしく、3人の挑戦者は綱引きで挑む。
バルルと3人の男は綱を掴むと、男達は緊張した様子でバルルと向かい合う。その一方でバルルの方は綱を片手だけで掴み、余裕の表情を浮かべていた。
「何時でもいいよ、怪我しないように手加減してやるからね」
「な、舐めやがって!!」
「いくら巨人族だからって、相手は女だ!!」
「俺達が負けるはずがねえっ!!」
男達はバルルの言葉に怒りを抱き、全力で綱を握りしめる。司会者はそれを確認すると、勝負の合図を行う。
「それでは……始めっ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
「くっ!?」
勝負が始まった瞬間に男達は全力で縄を引っ張り、それに対して意外な事にバルルは引っ張られていく。その姿を見た人々は驚きの声を上げ、ハルカも意外そうな表情を浮かべる。
「す、凄い!!あの人たち、もしかして勝てるかな!?」
「いや……無理だと思うよ」
一見は挑戦者側が有利に思えるが、リンはバルルの様子を見て彼女が敢えて苦戦しているふりをしている事に気が付いた。実際に彼女は片腕だけで綱を引いており、しかも表情は余裕の笑みを浮かべていた。
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