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第57話 魔法の属性
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「出発!!」
「しゅっぱ~つ!!」
「ウォンッ!!」
団長の馬車が走り始めるとハルカが運転する馬車もその後に続き、彼女は巧みに馬車を操作する。カイから学んでいたという話は本当だったらしく、彼女の意外な特技を知ってリンは驚く。
「本当に馬車を運転できるんだ……」
「あ、信じてなかったの?リン君、ひどいよ~」
「ご、ごめん……でも、凄いね」
「うん、頑張って覚えたんだよ」
ハルカは馬車の運転を覚えたのは少し前の事らしく、祖父のカイが覚えておいて損はないという事で直々に教えてくれたらしい。覚えるまで大分苦労したらしいが、今では祖父よりも巧みに馬車を運転できるらしい。
リンはハルカが馬車の運転をできる事を知り、この際に彼女から馬車の操作を学ぼうかと考えた。これから旅をするのであれば馬車などを使う時が来るかもしれず、まずは馬に乗る前に馬車の運転方法を教わる。
「ハルカ、良かったら街に着いたら僕にも馬車の運転を教えてくれる?」
「えっ!?う、うん!!全然いいよ!!」
「ちょ、前々!?」
まさかリンの方からハルカは自分に教わりたい事があると言われるとは思わず、彼女は嬉しそうに承諾した。リンには色々と世話になったため、馬車の操作を教える事を喜んで約束する。
(馬車を運転できるようになれば旅に出る時に必ず役に立つぞ。でも、馬車を買うにもお金がいくらかかるかな……)
ニノに向かう前にリンはそれなりの路銀を貯めているが、馬車を購入するとなると手持ちのお金だけで足りるのか不安はあった。しかし、馬車があれば馬に乗る必要もなくなり、今後の旅も楽になるかもしれない。
(馬車があれば荷物もたくさん運べるし、ウルも一緒に乗れる。どうにか買えないかな……いや、まずは街に着いてから考えよう)
今の時点で色々と考えても仕方がないと判断し、ニノの街に着くまでリンは考えるのを止めた――
――夜通し走り続けた事でリン達は朝日が昇った頃に遂にニノの街を視界に捕えた。徹夜で走ったせいで馬達も大分疲れてしまい、それを運転していた団長とハルカも疲れた様子だった。
「う~……眠いよう」
「ハルカ、大丈夫?少し休もうか?」
「へ、平気だよ~……」
「ふああっ……流石に眠いな」
疲れて眠たそうな表情を浮かべるハルカを心配し、リンは彼女を休ませるべきかと考えた。ニノまではもう少しだが、朝早い時間帯だと城門は開いておらず、中に入る事はできない。
団長は城門が閉まっている事を遠目で確認すると馬車を停止させ、街からそれほど離れていない場所で休憩を行う。街の近くには魔物も寄り付かず、ここならば安心して休めると判断した団長は二人に声を掛ける。
「俺が見張りを行うんで二人は休んでてください」
「え?でも、一人で大丈夫ですか?」
「平気ですよ。一日徹夜したぐらいで駄目になるようなら傭兵団の団長なんか勤まりませんって」
「よ、良かった~……私、もう限界だよ」
「ウォンッ!?」
ハルカは馬車の中に入るとウルに抱きつき、彼を抱き枕代わりにして眠り込む。それを見たリンは彼女の身体に毛布を掛け、ウルに少しだけ我慢する様に告げる。
「ウル、少しだけハルカの傍に居て」
「ウォンッ……」
仕方がないとばかりにウルは従い、ハルカが起きるまで一緒に傍に居てやる事にした。団長は城門が開くまでの間は一人で見張りを行うと言ったが、リンはどうにも寝付けないので馬車の中で回収した熱斧を調べる事にした。
(これが魔道具か……僕の持っている魔力剣や反魔の盾とはどう違うのかな?)
リンはドワーフの鍛冶師のドルトンが制作した武器と盾を持っているが、盗賊の頭が扱っていた魔道具なる「熱斧」はリンが持っている二つとは根本的に異なる。
魔力剣と反魔の盾はリンが体内に宿す魔力を消費して能力を発揮するが、盗賊の頭の場合はどうみても魔法使いとは思えない。恐らくだが魔道具とは一般人でも扱える魔法の力を宿した道具なのかもしれない。
(この宝石……もしかして前に本で読んだ事がある魔石なのかな?)
熱斧に嵌め込まれていた赤色の宝石を見てリンは不思議に思い、彼はかつてマリアから修行を受けた際に「吸魔石」なる物を触れた事を思い出す。
吸魔石は名前の通りに触れただけで魔力を吸い上げる効果を持ち、この吸魔石は実は今もリンは所有している。訓練の時以外は使わないようにしているが、この吸魔石に魔力を限界近くまで吸い上げさせる事でリンは魔力を伸ばしてきた。
しかし、今回の場合は吸魔石と違ってリンの手に入れた熱斧には魔力を宿す宝石が嵌め込まれていた。恐らくだがこの宝石の正体は吸魔石と同じく魔石であり、かつてリンは本に読んだ事がある「火属性の魔石」だと思われた。
(魔法には属性が存在するって聞いた事があるけど……)
森で暮らしていた時にリンはマリアが所有していた本を全て読んでおり、本に寄れば魔法には複数の種類が存在し、例えばリンの身体強化やハルカの回復魔法は「聖属性」の魔法に分類される。
聖属性の魔法は生命力を活性化させる効果があり、肉体の再生の他に身体機能を強化する事もできる。聖属性の適性が高いほどに優れた治癒魔術師になれると言われており、その点ではハルカはリンよりも聖属性の適性が高い。
聖属性以外にも様々な属性が存在し、今回の場合はリンが手に入れた宝石の正体は「火属性」の魔力を宿す鉱石を特殊加工した物だと思われた。火属性は名前の通りに炎を生み出す魔力であり、火属性の適性を持つ人間は炎の魔法を得意とする。
(あの捕まえた男の人はどう見ても魔法使いには見えないし、そもそも普通の魔法使いならこんな斧なんて使わないか)
熱斧は間違いなく攻撃の際に斧の刃に火属性の魔力を宿し、高熱を発する刃は鋼鉄をさえも焼き切る。しかし、所有者の盗賊の頭はどう見ても魔法使いではなく、そうなると熱斧は所有者が魔法使いでなくても能力を発揮できる事になる。
試しにリンは外に出て熱斧を構えると、宝石に触れて刃に押し込む。すると斧の刃が熱を帯びて赤く変色し、火属性の適性を持たないはずのリンでも扱える事が判明した。
「僕でも使えるのか……これが魔道具か」
予想通りと言うべきか魔道具は普通の人間でも扱える代物らしく、試しにリンは熱斧から手を放すと勝手に宝石が元に戻って刃も通常の状態に戻った。この熱斧は誰かが持っていなければ自動的に効果が切れるらしく、それを知ったリンは熱斧を拾い上げる。
「中々強力そうな武器だけど、使いこなすのは難しそうだな……」
森で暮らしていた時にリンは薪割りなども行っていたので斧の類を扱うのは初めてではないが、人や魔物と戦う際に使用した事はない。反魔の盾や魔力剣は普通の状態でも問題なく扱えるが、熱斧の場合は普通の斧と同じく重量があるので武器として扱うには身体強化を発動しなければならない。
身体強化は便利ではあるが効果が切れると一時的に動けなくなり、その間に敵に襲われてしまうと対処できない。しかも重い武器を扱うとなれば肉体の負担も大きくなって身体強化を持続させるのも困難になり、今のリンでは到底扱い切れない。
「鍛錬の道具には丁度いい重さなんだけどな……」
折角手に入れた熱斧ではあったが、リンは素振りを行って身体を鍛えるには丁度いい重さだと思うだけでとても武器として扱える自信はなかった――
「しゅっぱ~つ!!」
「ウォンッ!!」
団長の馬車が走り始めるとハルカが運転する馬車もその後に続き、彼女は巧みに馬車を操作する。カイから学んでいたという話は本当だったらしく、彼女の意外な特技を知ってリンは驚く。
「本当に馬車を運転できるんだ……」
「あ、信じてなかったの?リン君、ひどいよ~」
「ご、ごめん……でも、凄いね」
「うん、頑張って覚えたんだよ」
ハルカは馬車の運転を覚えたのは少し前の事らしく、祖父のカイが覚えておいて損はないという事で直々に教えてくれたらしい。覚えるまで大分苦労したらしいが、今では祖父よりも巧みに馬車を運転できるらしい。
リンはハルカが馬車の運転をできる事を知り、この際に彼女から馬車の操作を学ぼうかと考えた。これから旅をするのであれば馬車などを使う時が来るかもしれず、まずは馬に乗る前に馬車の運転方法を教わる。
「ハルカ、良かったら街に着いたら僕にも馬車の運転を教えてくれる?」
「えっ!?う、うん!!全然いいよ!!」
「ちょ、前々!?」
まさかリンの方からハルカは自分に教わりたい事があると言われるとは思わず、彼女は嬉しそうに承諾した。リンには色々と世話になったため、馬車の操作を教える事を喜んで約束する。
(馬車を運転できるようになれば旅に出る時に必ず役に立つぞ。でも、馬車を買うにもお金がいくらかかるかな……)
ニノに向かう前にリンはそれなりの路銀を貯めているが、馬車を購入するとなると手持ちのお金だけで足りるのか不安はあった。しかし、馬車があれば馬に乗る必要もなくなり、今後の旅も楽になるかもしれない。
(馬車があれば荷物もたくさん運べるし、ウルも一緒に乗れる。どうにか買えないかな……いや、まずは街に着いてから考えよう)
今の時点で色々と考えても仕方がないと判断し、ニノの街に着くまでリンは考えるのを止めた――
――夜通し走り続けた事でリン達は朝日が昇った頃に遂にニノの街を視界に捕えた。徹夜で走ったせいで馬達も大分疲れてしまい、それを運転していた団長とハルカも疲れた様子だった。
「う~……眠いよう」
「ハルカ、大丈夫?少し休もうか?」
「へ、平気だよ~……」
「ふああっ……流石に眠いな」
疲れて眠たそうな表情を浮かべるハルカを心配し、リンは彼女を休ませるべきかと考えた。ニノまではもう少しだが、朝早い時間帯だと城門は開いておらず、中に入る事はできない。
団長は城門が閉まっている事を遠目で確認すると馬車を停止させ、街からそれほど離れていない場所で休憩を行う。街の近くには魔物も寄り付かず、ここならば安心して休めると判断した団長は二人に声を掛ける。
「俺が見張りを行うんで二人は休んでてください」
「え?でも、一人で大丈夫ですか?」
「平気ですよ。一日徹夜したぐらいで駄目になるようなら傭兵団の団長なんか勤まりませんって」
「よ、良かった~……私、もう限界だよ」
「ウォンッ!?」
ハルカは馬車の中に入るとウルに抱きつき、彼を抱き枕代わりにして眠り込む。それを見たリンは彼女の身体に毛布を掛け、ウルに少しだけ我慢する様に告げる。
「ウル、少しだけハルカの傍に居て」
「ウォンッ……」
仕方がないとばかりにウルは従い、ハルカが起きるまで一緒に傍に居てやる事にした。団長は城門が開くまでの間は一人で見張りを行うと言ったが、リンはどうにも寝付けないので馬車の中で回収した熱斧を調べる事にした。
(これが魔道具か……僕の持っている魔力剣や反魔の盾とはどう違うのかな?)
リンはドワーフの鍛冶師のドルトンが制作した武器と盾を持っているが、盗賊の頭が扱っていた魔道具なる「熱斧」はリンが持っている二つとは根本的に異なる。
魔力剣と反魔の盾はリンが体内に宿す魔力を消費して能力を発揮するが、盗賊の頭の場合はどうみても魔法使いとは思えない。恐らくだが魔道具とは一般人でも扱える魔法の力を宿した道具なのかもしれない。
(この宝石……もしかして前に本で読んだ事がある魔石なのかな?)
熱斧に嵌め込まれていた赤色の宝石を見てリンは不思議に思い、彼はかつてマリアから修行を受けた際に「吸魔石」なる物を触れた事を思い出す。
吸魔石は名前の通りに触れただけで魔力を吸い上げる効果を持ち、この吸魔石は実は今もリンは所有している。訓練の時以外は使わないようにしているが、この吸魔石に魔力を限界近くまで吸い上げさせる事でリンは魔力を伸ばしてきた。
しかし、今回の場合は吸魔石と違ってリンの手に入れた熱斧には魔力を宿す宝石が嵌め込まれていた。恐らくだがこの宝石の正体は吸魔石と同じく魔石であり、かつてリンは本に読んだ事がある「火属性の魔石」だと思われた。
(魔法には属性が存在するって聞いた事があるけど……)
森で暮らしていた時にリンはマリアが所有していた本を全て読んでおり、本に寄れば魔法には複数の種類が存在し、例えばリンの身体強化やハルカの回復魔法は「聖属性」の魔法に分類される。
聖属性の魔法は生命力を活性化させる効果があり、肉体の再生の他に身体機能を強化する事もできる。聖属性の適性が高いほどに優れた治癒魔術師になれると言われており、その点ではハルカはリンよりも聖属性の適性が高い。
聖属性以外にも様々な属性が存在し、今回の場合はリンが手に入れた宝石の正体は「火属性」の魔力を宿す鉱石を特殊加工した物だと思われた。火属性は名前の通りに炎を生み出す魔力であり、火属性の適性を持つ人間は炎の魔法を得意とする。
(あの捕まえた男の人はどう見ても魔法使いには見えないし、そもそも普通の魔法使いならこんな斧なんて使わないか)
熱斧は間違いなく攻撃の際に斧の刃に火属性の魔力を宿し、高熱を発する刃は鋼鉄をさえも焼き切る。しかし、所有者の盗賊の頭はどう見ても魔法使いではなく、そうなると熱斧は所有者が魔法使いでなくても能力を発揮できる事になる。
試しにリンは外に出て熱斧を構えると、宝石に触れて刃に押し込む。すると斧の刃が熱を帯びて赤く変色し、火属性の適性を持たないはずのリンでも扱える事が判明した。
「僕でも使えるのか……これが魔道具か」
予想通りと言うべきか魔道具は普通の人間でも扱える代物らしく、試しにリンは熱斧から手を放すと勝手に宝石が元に戻って刃も通常の状態に戻った。この熱斧は誰かが持っていなければ自動的に効果が切れるらしく、それを知ったリンは熱斧を拾い上げる。
「中々強力そうな武器だけど、使いこなすのは難しそうだな……」
森で暮らしていた時にリンは薪割りなども行っていたので斧の類を扱うのは初めてではないが、人や魔物と戦う際に使用した事はない。反魔の盾や魔力剣は普通の状態でも問題なく扱えるが、熱斧の場合は普通の斧と同じく重量があるので武器として扱うには身体強化を発動しなければならない。
身体強化は便利ではあるが効果が切れると一時的に動けなくなり、その間に敵に襲われてしまうと対処できない。しかも重い武器を扱うとなれば肉体の負担も大きくなって身体強化を持続させるのも困難になり、今のリンでは到底扱い切れない。
「鍛錬の道具には丁度いい重さなんだけどな……」
折角手に入れた熱斧ではあったが、リンは素振りを行って身体を鍛えるには丁度いい重さだと思うだけでとても武器として扱える自信はなかった――
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