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第53話 魔獣の森
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――黒狼が去った事で橋は安全となり、無事に通過できるようになった。だが、リンは勝手に黒狼に近付いた事に兵士達に怒られてしまったが、彼が居なければ黒狼を追い払う事ができなかったので兵士以外の人間には感謝された。
「君、さっきの凄かったね!!まさかあんな化物を追い払うなんて……」
「もしかして噂に聞く魔物使いというかい!?あらゆる魔物を使役する魔法使いがいるとは聞いた事があるが、まさか君がそうなのかい!?」
「おいおい、悪いがこっちも急いでるんだよ。坊ちゃん、早く乗って下さい。予定よりも大分遅れてるんで急いで向かわないと」
「あ、はい……すいません、そういう事なので」
橋に集まっていた人々は黒狼を橋から離れさせたリンに興味津々だったが、護衛の傭兵は彼を急いで馬車に乗せて次の目的地であるニノの街へ向けて出発する。
この調子で進めばニノの街には明日の朝には到着する予定であり、それまでの間はリンは馬車の中でウルとハルカと過ごす。リンは黒狼が落とした牙を見つめ、いったいどんな存在が黒狼に怪我を負わせたのか気になった。
(あの傷跡……人間にやられた傷とは思えない。と言う事は他の魔物に敗れたのか?でも、あんなに大きい黒狼に怪我を負わせる魔物なんているのか?)
魔物の事に関してはリンはあまり詳しくはなく、ニノ地方では黒狼以上の危険な存在が居るのか気になったリンはハルカに尋ねた。
「ハルカはニノ地方に現れる魔物の事は知っている?」
「え?えっと……ごめん、よく知らない」
「そっか……」
「あ、でも出発前にお祖父ちゃんから貰った本があるよ!!これを読めばどんな魔物が現れるのか分かると思う!!」
ハルカはリンの言葉を聞いて自分の荷物の中から本を取り出し、それをリンに手渡した。リンは不思議に思いながらも本を受け取ると、表紙には「魔物図鑑」と記されていた。
中身を開くと各地方に生息すると思われる魔物の詳細情報が記されており、イチノ地方の項目を調べると「白狼種」の事も記されていた。図鑑によれば白狼種は伝説の魔物として扱われており、その姿を見る者は滅多にいないと書かれていた。
「その魔物図鑑は少し前に発行されたばかりだから、正確な情報が記されているってお祖父ちゃんが言ってたよ」
「そうなんだ……少し借りて良い?」
「うん、それは構わないけど……」
リンはハルカの魔物図鑑を確認し、ニノ地方に出現する魔物の事を調べた。イチノ地方と比べてニノ地方は魔物の数が多いらしく、白狼種以外の魔物は殆ど生息しているらしい。
魔物図鑑にはニノ地方の地図も記されており、具体的にどの地方にどんな魔物が現れるのかも記されていた。そしてリンは自分達が走っている場所を確認すると、少し離れた所に森が広がっている事に気付く。
「この森は……」
「あ、そこは魔獣の森だよ。結構有名な場所だけど、リン君は知らないの?」
「う~ん……」
地図に記された森は恐らくはリンが暮らしていた森よりも広く、名前の通りに多数の魔獣が生息する危険地帯だと書かれていた。この森にはリンが暮らしていた森よりも危険な魔獣が生息しており、だからこの森に近付く者は滅多にいない。
「魔獣の森か……さっきの黒狼も魔獣の森から出てきたのかな?」
「う~ん……それは分からないけど、前にお父さんから黒狼種は魔獣の森に住んでるって聞いた事がある」
「え、そうなの?」
「お父さんの知り合いに魔物の専門家さんがいるんだけど、黒狼種は滅多に草原では見かけないから、魔獣の森の奥地に住んでるとしか考えられないって」
「……なるほど、確かに誰も立ち寄らない森の中に住んでいるとしたら黒狼種が見かけなくてもおかしくはないか」
黒狼種が生息するとすれば魔獣の森以外に考えられず、実際に白狼種のハクも森の中で暮らしていた。黒狼種と白狼種は草原には住み着かず、森の中でしか生きていけない種かもしれない。
「リン君、今日も魔法の練習はしないの?」
「うん……旅の間は魔力を温存しておこうと思う。ハルカと違って僕は魔力量もそんなに多くないし、回復するのにちょっと時間が掛かるしね」
「そっか……なら、いっぱいお話ししようね!!」
「そうだね……」
旅をしている間はリンはできる限り魔力を使わないように心掛け、魔法の練習も中断する。理由としては旅の間に誰かが怪我をしたり、または魔物に襲われた時の事を考慮して魔力は常に温存しておく事に決めた。
今回は傭兵の護衛と馬車で移動しているので心配し過ぎかと思ったが、最近は魔物による被害も増加しているため、決して油断はできない。だから移動中の間もリンは無駄に魔力を消費しないように心掛けていたが、突如として馬車が停まった。
「うおっ!?な、何だありゃっ!?」
「うわっ!?」
「わあっ!?」
「ウォンッ!?」
リン達が乗っていた馬車の御者が驚きの声を上げ、馬車を急停止させた。そのためにリンは体勢を崩してハルカを押し倒してしまい、二人の顔が近付くとハルカは頬を赤くする。
「リ、リン君……駄目だよ、こんな場所で……」
「い、いや、そんなつもりは……って、それよりどうしたんですか!?」
頬を赤らめながらリンはハルカから退いて御者に何が起きたのかを尋ねると、御者は上空を指差す。
「あ、あれを見てください!!」
「あれって……うわっ!?」
「え、何々!?」
リンとハルカは御者が指し示す方向に視線を向けると、そこには巨大な船が空を飛んでいた。船の大きさはリン達が乗る馬車の何十倍もの大きさを誇り、そんな巨大な物体が空に浮かんでいる事に動揺を隠せない。
「な、何だあれ!?」
「すご~いっ!!あれ、飛行船だよね!?初めて見たよ!!」
「飛行船?」
「何だ、坊ちゃんは見た事ないのか?あれは空を飛ぶ船だよ」
馬車の護衛を勤める傭兵達は飛行船を見ても特に驚いた様子もなく、彼等の話を聞いたリンは「飛行船」という言葉を聞いて名前の通りに空を飛ぶ船なのかと驚く。
「あの船、どうして浮いてるんですか!?」
「いや、俺達もどうやって空を飛ぶのかまでは知らないけどよ……王都とかでは割とよく見かけるぜ」
「あの船の形からすると、きっとシノからやってきた商船だな」
「こっちではあんまり見かけないから珍しいでしょう?」
傭兵達の話によると彼等は飛行船を何度か見かけた事があるらしく、王都では頻繁に見かけるらしい。この地方では飛行船は滅多に飛んでこないらしく、ハルカも見たのは初めてらしい。
御者の男も飛行船を初めて見たので驚いて止まってしまったが、正体を知っている傭兵達からすれば別にそれほど驚く代物ではないらしい。しかし、船を見た事自体がリンは初めてであり、しかもその船が空を飛んでいるのだから最初に見た時の衝撃は大きかった。
(あんな巨大な船が浮いているなんて……何だか凄いな)
リンは飛行船が向かう方向を確認すると、どうやらあの飛行船もニノへ向かっている事が判明した。恐らくはニノに停泊すると思われ、もしかしたら間近で飛行船を見れるかもしれないと傭兵は告げる。
「あの船の行先はニノみたいだな……急いで行けば着陸した状態の飛行船が見れるかもしれませんよ」
「えっ!?本当ですか!?」
「ははは、大人びていると思ったけどやっぱり坊ちゃんも子供ですね。そんなにあの飛行船が気になるんですか?」
「いや、あんなの大人の人だって気になるでしょ!?」
「そりゃそうだわな」
飛行船に興味津々なリンに対して団長はニノで飛行船を間近で見る機会があるかもしれないと告げると、リンはニノに辿り着く楽しみが増えて喜んだ――
「君、さっきの凄かったね!!まさかあんな化物を追い払うなんて……」
「もしかして噂に聞く魔物使いというかい!?あらゆる魔物を使役する魔法使いがいるとは聞いた事があるが、まさか君がそうなのかい!?」
「おいおい、悪いがこっちも急いでるんだよ。坊ちゃん、早く乗って下さい。予定よりも大分遅れてるんで急いで向かわないと」
「あ、はい……すいません、そういう事なので」
橋に集まっていた人々は黒狼を橋から離れさせたリンに興味津々だったが、護衛の傭兵は彼を急いで馬車に乗せて次の目的地であるニノの街へ向けて出発する。
この調子で進めばニノの街には明日の朝には到着する予定であり、それまでの間はリンは馬車の中でウルとハルカと過ごす。リンは黒狼が落とした牙を見つめ、いったいどんな存在が黒狼に怪我を負わせたのか気になった。
(あの傷跡……人間にやられた傷とは思えない。と言う事は他の魔物に敗れたのか?でも、あんなに大きい黒狼に怪我を負わせる魔物なんているのか?)
魔物の事に関してはリンはあまり詳しくはなく、ニノ地方では黒狼以上の危険な存在が居るのか気になったリンはハルカに尋ねた。
「ハルカはニノ地方に現れる魔物の事は知っている?」
「え?えっと……ごめん、よく知らない」
「そっか……」
「あ、でも出発前にお祖父ちゃんから貰った本があるよ!!これを読めばどんな魔物が現れるのか分かると思う!!」
ハルカはリンの言葉を聞いて自分の荷物の中から本を取り出し、それをリンに手渡した。リンは不思議に思いながらも本を受け取ると、表紙には「魔物図鑑」と記されていた。
中身を開くと各地方に生息すると思われる魔物の詳細情報が記されており、イチノ地方の項目を調べると「白狼種」の事も記されていた。図鑑によれば白狼種は伝説の魔物として扱われており、その姿を見る者は滅多にいないと書かれていた。
「その魔物図鑑は少し前に発行されたばかりだから、正確な情報が記されているってお祖父ちゃんが言ってたよ」
「そうなんだ……少し借りて良い?」
「うん、それは構わないけど……」
リンはハルカの魔物図鑑を確認し、ニノ地方に出現する魔物の事を調べた。イチノ地方と比べてニノ地方は魔物の数が多いらしく、白狼種以外の魔物は殆ど生息しているらしい。
魔物図鑑にはニノ地方の地図も記されており、具体的にどの地方にどんな魔物が現れるのかも記されていた。そしてリンは自分達が走っている場所を確認すると、少し離れた所に森が広がっている事に気付く。
「この森は……」
「あ、そこは魔獣の森だよ。結構有名な場所だけど、リン君は知らないの?」
「う~ん……」
地図に記された森は恐らくはリンが暮らしていた森よりも広く、名前の通りに多数の魔獣が生息する危険地帯だと書かれていた。この森にはリンが暮らしていた森よりも危険な魔獣が生息しており、だからこの森に近付く者は滅多にいない。
「魔獣の森か……さっきの黒狼も魔獣の森から出てきたのかな?」
「う~ん……それは分からないけど、前にお父さんから黒狼種は魔獣の森に住んでるって聞いた事がある」
「え、そうなの?」
「お父さんの知り合いに魔物の専門家さんがいるんだけど、黒狼種は滅多に草原では見かけないから、魔獣の森の奥地に住んでるとしか考えられないって」
「……なるほど、確かに誰も立ち寄らない森の中に住んでいるとしたら黒狼種が見かけなくてもおかしくはないか」
黒狼種が生息するとすれば魔獣の森以外に考えられず、実際に白狼種のハクも森の中で暮らしていた。黒狼種と白狼種は草原には住み着かず、森の中でしか生きていけない種かもしれない。
「リン君、今日も魔法の練習はしないの?」
「うん……旅の間は魔力を温存しておこうと思う。ハルカと違って僕は魔力量もそんなに多くないし、回復するのにちょっと時間が掛かるしね」
「そっか……なら、いっぱいお話ししようね!!」
「そうだね……」
旅をしている間はリンはできる限り魔力を使わないように心掛け、魔法の練習も中断する。理由としては旅の間に誰かが怪我をしたり、または魔物に襲われた時の事を考慮して魔力は常に温存しておく事に決めた。
今回は傭兵の護衛と馬車で移動しているので心配し過ぎかと思ったが、最近は魔物による被害も増加しているため、決して油断はできない。だから移動中の間もリンは無駄に魔力を消費しないように心掛けていたが、突如として馬車が停まった。
「うおっ!?な、何だありゃっ!?」
「うわっ!?」
「わあっ!?」
「ウォンッ!?」
リン達が乗っていた馬車の御者が驚きの声を上げ、馬車を急停止させた。そのためにリンは体勢を崩してハルカを押し倒してしまい、二人の顔が近付くとハルカは頬を赤くする。
「リ、リン君……駄目だよ、こんな場所で……」
「い、いや、そんなつもりは……って、それよりどうしたんですか!?」
頬を赤らめながらリンはハルカから退いて御者に何が起きたのかを尋ねると、御者は上空を指差す。
「あ、あれを見てください!!」
「あれって……うわっ!?」
「え、何々!?」
リンとハルカは御者が指し示す方向に視線を向けると、そこには巨大な船が空を飛んでいた。船の大きさはリン達が乗る馬車の何十倍もの大きさを誇り、そんな巨大な物体が空に浮かんでいる事に動揺を隠せない。
「な、何だあれ!?」
「すご~いっ!!あれ、飛行船だよね!?初めて見たよ!!」
「飛行船?」
「何だ、坊ちゃんは見た事ないのか?あれは空を飛ぶ船だよ」
馬車の護衛を勤める傭兵達は飛行船を見ても特に驚いた様子もなく、彼等の話を聞いたリンは「飛行船」という言葉を聞いて名前の通りに空を飛ぶ船なのかと驚く。
「あの船、どうして浮いてるんですか!?」
「いや、俺達もどうやって空を飛ぶのかまでは知らないけどよ……王都とかでは割とよく見かけるぜ」
「あの船の形からすると、きっとシノからやってきた商船だな」
「こっちではあんまり見かけないから珍しいでしょう?」
傭兵達の話によると彼等は飛行船を何度か見かけた事があるらしく、王都では頻繁に見かけるらしい。この地方では飛行船は滅多に飛んでこないらしく、ハルカも見たのは初めてらしい。
御者の男も飛行船を初めて見たので驚いて止まってしまったが、正体を知っている傭兵達からすれば別にそれほど驚く代物ではないらしい。しかし、船を見た事自体がリンは初めてであり、しかもその船が空を飛んでいるのだから最初に見た時の衝撃は大きかった。
(あんな巨大な船が浮いているなんて……何だか凄いな)
リンは飛行船が向かう方向を確認すると、どうやらあの飛行船もニノへ向かっている事が判明した。恐らくはニノに停泊すると思われ、もしかしたら間近で飛行船を見れるかもしれないと傭兵は告げる。
「あの船の行先はニノみたいだな……急いで行けば着陸した状態の飛行船が見れるかもしれませんよ」
「えっ!?本当ですか!?」
「ははは、大人びていると思ったけどやっぱり坊ちゃんも子供ですね。そんなにあの飛行船が気になるんですか?」
「いや、あんなの大人の人だって気になるでしょ!?」
「そりゃそうだわな」
飛行船に興味津々なリンに対して団長はニノで飛行船を間近で見る機会があるかもしれないと告げると、リンはニノに辿り着く楽しみが増えて喜んだ――
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