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第39話 天才と凡人の差
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――その日、結局はリンは種に芽を生やすのが限界で修行を終えた。ハルカは見事に種から花を咲かせるまでに成長させる事に成功し、改めてリンはハルカとの差を思い知らされる。
(……ハルカは天才だ。それに比べて僕はただの凡人か)
一緒に修行をした事でリンはハルカの凄さを思い知り、彼女は自分を落ちこぼれと思い込んでいたが、実際は魔法使いとしての一番重要な才能を持っていた。それは生まれながらに膨大な魔力を有しているという事であり、今よりも魔力操作の技術を磨けば必ず優秀な魔術師になれるだろう。
ハルカと違ってリンは普通の人間であり、魔力を操作する技術を磨いていくうちに魔力も伸ばす事ができた。だが、ハルカと比べるとリンは自分の魔力はちっぽけな物に感じられ、天才と凡人の差を思い知らされて落ち込む。
「羨ましいな……」
生まれた時から膨大な魔力を持つハルカにリンは羨ましく思い、もしも彼女のように自分も膨大な魔力を持って生まれていたらと考えてしまう。しかし、そんなありもしない妄想をするより、現実に向き合わなければならない。
「……修行するか」
「ウォンッ?」
部屋の中でぶつぶつと呟くリンにウルは不思議に思うが、すぐに昼寝を再開した。家の中に居る間はウルはのんびりと過ごし、食事の時だけ目を覚ます。森の中ではあり得ない生活であるため、ウルは今の生活を満喫していた。
「全く、僕よりも贅沢しているな」
呑気に眠り始めたウルにリンは苦笑いを浮かべ、彼は屋敷に滞在する間はカイに依頼された回復薬の製作の仕事を行っている。だから仕事もしないで食べては寝るだけの生活を送るウルに呆れてしまう。
「さてと、修行修行」
昼寝を始めたウルを放っておいてリンは鞄の中から水晶玉を持ち出し、森を出る時にリンはマリアが残した吸魔水晶を持ち出していた。吸魔水晶はただの鍛錬器具ではなく、魔力を故意に吸い上げさせる事で魔力量を伸ばす道具にもなる。
魔力の限界を伸ばすためには一度は魔力を使い切る必要があり、自然回復するまで待つ。マリアが調合した薬を飲めば回復速度も速まるが、生憎と今のリンは薬は持ち合わせていない。調合技術は身に付けたが、魔力の回復を早める薬の素材は持ち合わせていない。
「ふうっ……」
水晶玉を手にした状態でリンは座禅を行い、まずは水晶玉に魔力を送り込む。魔力を水晶玉に注ぎ込むと水晶玉の内部に白炎が灯り、どんどんとリンは身体の力が失われていく。
「くっ……まだまだ」
意識を失わないように気をつけながらリンは魔力を水晶玉に注ぎ込み、限界まで魔力を送り込むと座禅したまま動かない。ここから先は魔力の回復に集中する。
(回復させるんだ、魔力を……)
何年も費やしてリンは魔力を伸ばす訓練を続けた結果、彼は自力で魔力を回復させる方法を身に付けていた。但し、この方法を実践するには高い集中力を必要とするため、回復させている間は身動きすらもできない。
失った魔力の代わりに新しい魔力を体内で生成する場合、精神力だけではなく体力も消耗する。そのためにリンは森に居た頃は身体を鍛えるのと同時に体力を伸ばし、そのお陰で彼は魔力を自力で回復させる事ができるようになった。
「はあっ、はあっ……やっぱり、この修行が一番きつい」
どうにか動けるまでに魔力を回復させると、リンは全身から汗を流していた。この回復手段は体力を大幅に消耗し、しかも回復させるためにはかなりの時間を必要とする。だが、この方法ならば体力がある限りは何度でも魔力を回復させる事ができた。
(きついけど、後でもう一回ぐらいしないとな……)
魔力を伸ばすためには地道に毎日訓練を行い、時間は掛かるが着実に魔力を増やす事はできる。だから昔は普通の人間にしか過ぎなかったリンも今では魔物を倒せる程の力を身に付けることができた。
だが、今回は修行を終えた後と言う事もあってリンはいつも以上に疲れて座り込む。もしも自分がハルカだったらこんな修行をする必要もないのかと考える。
(ハルカは修行無しで僕以上の魔力を持っている……世知辛いな)
ハルカが全く悪くはないがリンは彼女の才能に嫉妬してしまい、しかし頭を振って邪な考えを振り払う。
(ハルカは凄くいい子なんだ。それに他の人間と比べる必要なんてない、僕は僕なりに成長すればいい)
自分と他人と比べる事が馬鹿らしくなったリンは考えを改め直し、自分のできる事を始める事にした。まずは種から花を咲かせるまで成長させる事に専念し、どうして修行が上手くいかないのかを考える。
「種が上手く成長しないのは魔力を上手く送り込めないのが原因なんだ。実際、修行を終わっても僕の魔力はかなり残ってた」
ハルカのように種を成長させるにはリンは今以上に魔力を送り込む方法を極める必要があると考え、彼は吸魔水晶に視線を向けた。この吸魔水晶は触れるだけで強制的に魔力を吸収する代物だが、そのお陰でリンは魔力を留める技術を身につけられた。
魔力を留める事ができるようになると自然と外部に発散する方法も身に付け、そのお陰でれリンは他の生物の怪我も治せるようになった。しかし、ハルカの回復魔法と比べてまだまだ粗削りであり、彼女のように瞬く間に怪我を回復させるには魔力を送り込む技術を本格的に極める必要があった。
「長丁場になりそうだな……でも、やり遂げて見せるぞ」
気を取り直してリンはハルカに頼んで修行を再開しようとした時、不意に彼は机の上に置かれている木箱に気が付く。この木箱は今朝に薬草が入っていた木箱であり、まだ返し忘れていた事を思い出す。
「これ、返しに行かないと……待てよ?」
リンは薬草が入っていた木箱を見てある考えが浮かび、カイが用意してくれた薬草は森で生えている薬草と比べて質が悪く、調合しても市販の回復薬よりも少しだけ効果の高い物しか作り出せない。
薬草の質が高ければもう少しは良い回復薬を作れると常々思っていたが、リンはハルカとの修行を思い出す。
「もしかしたら……」
慌ててリンは空の木箱を持ち上げて新しい薬草をカイから受け取りに向かう――
※次回はリン以外の人間の視点の話になります
(……ハルカは天才だ。それに比べて僕はただの凡人か)
一緒に修行をした事でリンはハルカの凄さを思い知り、彼女は自分を落ちこぼれと思い込んでいたが、実際は魔法使いとしての一番重要な才能を持っていた。それは生まれながらに膨大な魔力を有しているという事であり、今よりも魔力操作の技術を磨けば必ず優秀な魔術師になれるだろう。
ハルカと違ってリンは普通の人間であり、魔力を操作する技術を磨いていくうちに魔力も伸ばす事ができた。だが、ハルカと比べるとリンは自分の魔力はちっぽけな物に感じられ、天才と凡人の差を思い知らされて落ち込む。
「羨ましいな……」
生まれた時から膨大な魔力を持つハルカにリンは羨ましく思い、もしも彼女のように自分も膨大な魔力を持って生まれていたらと考えてしまう。しかし、そんなありもしない妄想をするより、現実に向き合わなければならない。
「……修行するか」
「ウォンッ?」
部屋の中でぶつぶつと呟くリンにウルは不思議に思うが、すぐに昼寝を再開した。家の中に居る間はウルはのんびりと過ごし、食事の時だけ目を覚ます。森の中ではあり得ない生活であるため、ウルは今の生活を満喫していた。
「全く、僕よりも贅沢しているな」
呑気に眠り始めたウルにリンは苦笑いを浮かべ、彼は屋敷に滞在する間はカイに依頼された回復薬の製作の仕事を行っている。だから仕事もしないで食べては寝るだけの生活を送るウルに呆れてしまう。
「さてと、修行修行」
昼寝を始めたウルを放っておいてリンは鞄の中から水晶玉を持ち出し、森を出る時にリンはマリアが残した吸魔水晶を持ち出していた。吸魔水晶はただの鍛錬器具ではなく、魔力を故意に吸い上げさせる事で魔力量を伸ばす道具にもなる。
魔力の限界を伸ばすためには一度は魔力を使い切る必要があり、自然回復するまで待つ。マリアが調合した薬を飲めば回復速度も速まるが、生憎と今のリンは薬は持ち合わせていない。調合技術は身に付けたが、魔力の回復を早める薬の素材は持ち合わせていない。
「ふうっ……」
水晶玉を手にした状態でリンは座禅を行い、まずは水晶玉に魔力を送り込む。魔力を水晶玉に注ぎ込むと水晶玉の内部に白炎が灯り、どんどんとリンは身体の力が失われていく。
「くっ……まだまだ」
意識を失わないように気をつけながらリンは魔力を水晶玉に注ぎ込み、限界まで魔力を送り込むと座禅したまま動かない。ここから先は魔力の回復に集中する。
(回復させるんだ、魔力を……)
何年も費やしてリンは魔力を伸ばす訓練を続けた結果、彼は自力で魔力を回復させる方法を身に付けていた。但し、この方法を実践するには高い集中力を必要とするため、回復させている間は身動きすらもできない。
失った魔力の代わりに新しい魔力を体内で生成する場合、精神力だけではなく体力も消耗する。そのためにリンは森に居た頃は身体を鍛えるのと同時に体力を伸ばし、そのお陰で彼は魔力を自力で回復させる事ができるようになった。
「はあっ、はあっ……やっぱり、この修行が一番きつい」
どうにか動けるまでに魔力を回復させると、リンは全身から汗を流していた。この回復手段は体力を大幅に消耗し、しかも回復させるためにはかなりの時間を必要とする。だが、この方法ならば体力がある限りは何度でも魔力を回復させる事ができた。
(きついけど、後でもう一回ぐらいしないとな……)
魔力を伸ばすためには地道に毎日訓練を行い、時間は掛かるが着実に魔力を増やす事はできる。だから昔は普通の人間にしか過ぎなかったリンも今では魔物を倒せる程の力を身に付けることができた。
だが、今回は修行を終えた後と言う事もあってリンはいつも以上に疲れて座り込む。もしも自分がハルカだったらこんな修行をする必要もないのかと考える。
(ハルカは修行無しで僕以上の魔力を持っている……世知辛いな)
ハルカが全く悪くはないがリンは彼女の才能に嫉妬してしまい、しかし頭を振って邪な考えを振り払う。
(ハルカは凄くいい子なんだ。それに他の人間と比べる必要なんてない、僕は僕なりに成長すればいい)
自分と他人と比べる事が馬鹿らしくなったリンは考えを改め直し、自分のできる事を始める事にした。まずは種から花を咲かせるまで成長させる事に専念し、どうして修行が上手くいかないのかを考える。
「種が上手く成長しないのは魔力を上手く送り込めないのが原因なんだ。実際、修行を終わっても僕の魔力はかなり残ってた」
ハルカのように種を成長させるにはリンは今以上に魔力を送り込む方法を極める必要があると考え、彼は吸魔水晶に視線を向けた。この吸魔水晶は触れるだけで強制的に魔力を吸収する代物だが、そのお陰でリンは魔力を留める技術を身につけられた。
魔力を留める事ができるようになると自然と外部に発散する方法も身に付け、そのお陰でれリンは他の生物の怪我も治せるようになった。しかし、ハルカの回復魔法と比べてまだまだ粗削りであり、彼女のように瞬く間に怪我を回復させるには魔力を送り込む技術を本格的に極める必要があった。
「長丁場になりそうだな……でも、やり遂げて見せるぞ」
気を取り直してリンはハルカに頼んで修行を再開しようとした時、不意に彼は机の上に置かれている木箱に気が付く。この木箱は今朝に薬草が入っていた木箱であり、まだ返し忘れていた事を思い出す。
「これ、返しに行かないと……待てよ?」
リンは薬草が入っていた木箱を見てある考えが浮かび、カイが用意してくれた薬草は森で生えている薬草と比べて質が悪く、調合しても市販の回復薬よりも少しだけ効果の高い物しか作り出せない。
薬草の質が高ければもう少しは良い回復薬を作れると常々思っていたが、リンはハルカとの修行を思い出す。
「もしかしたら……」
慌ててリンは空の木箱を持ち上げて新しい薬草をカイから受け取りに向かう――
※次回はリン以外の人間の視点の話になります
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