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第30話 オークとの戦闘

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「プギィイイイッ!!」
「なっ!?」
「ウォンッ!?」
「プギャッ!?」


オークに攻撃を仕掛ける前に鳴き声が響き渡り、驚いたリンとウルは鳴き声のした方に振り返ると、そこには別のオークが丘の上に立っていた。


(仲間が居たのか!?)


別行動を取っていた仲間が戻って来たらしく、食事中だったオークはリン達の存在を気付いて慌てて戦闘態勢に入った。ウルは新しく来たオークと向かい合い、リンはもう一体のオークと向き合う。


(このまま行くしかない!!)


見つかってしまった以上は戦うしかなく、オークと向かい合ったリンは魔力剣を抜こうとした。しかし、彼が動く前にオークは拳を振りかざす。


「プギィイイッ!!」
「くっ!?」


殴りかかろうとしてきたオークに対してリンは反魔の盾を構えると、オークの拳を正面から受け止めた。反魔の盾によってオークの攻撃を跳ね返し、相手の体勢を崩す。

オークの拳が盾に衝突すると、衝撃波が発生してオークの拳を弾き飛ばす。それによってオークは体勢が崩れて隙が生まれ、それを見逃さずにリンは魔力剣を振りかざす。


「やああっ!!」
「プギャアアッ!?」


体勢を崩したオークに目掛けてリンは魔力剣を振り下ろすと、オークの胴体を切りつけた。オークは血飛沫を上げて倒れ込み、それを見たリンは倒したと思った。


「ウル!!」
「ガアアッ!!」
「プギィイイイッ!!」


ウルは丘から駆け下りてきたオークと対峙し、お互いに威嚇していた。それを見たリンは加勢しようと駆け出そうとするが、倒したと思われたオークが起き上がって彼の身体に抱きつく。


「プギィイイッ!!」
「ぐあっ!?」
「ウォンッ!?」


倒したと思い込んでいたオークにリンは捕まってしまい、凄まじい力で締め付けられた。このままでは圧迫死は免れず、どうにか振りほどこうとするがリンの力ではどうしようもできない。


(まずい、このままだと死ぬ……!?)


オークに後ろから抱きつかれた状態でリンは持ち上げられ、凄まじい力で締め付けられる。このままではリンの身体は持たないが、彼は意識を集中させた。


(身体強化だけじゃ振り払えない!!それなら……)


身体能力を強化させたとしてもオークの怪力には敵わないと判断したリンは、手に持っていた魔力剣をオークの腹に押し付け、その状態で魔力を流し込む。

魔力剣から刃が生成され、更に刀身を伸ばす事でオークの肉体を串刺しにする。魔力剣は柄しか存在しないため、手さえ動かせればオークに押し当てる事は容易い。


「喰らえっ!!」
「プギャアアアッ!?」


肉体を光刃で貫かれたオークは悲鳴を上げ、リンを拘束する力が弱まった。その隙を逃さずにリンは身体強化を発動させてオークの腕を振りほどき、拳を固めてオークの顎を打ち抜く。


「くたばれっ!!」
「ブフゥッ!?」


魔鎧を右手に纏った状態でリンはオークの顎を全力で打ち抜き、今度こそオークは倒れて動かなくなった。どうにかオークを倒す事に成功したリンはウルの方へ振り返ると、そこにはオークの首に喰らいつくウルの姿があった。


「グゥウッ……!!」
「プギャアッ……!?」


ウルはオークの首に喰らいつき、凄まじい咬筋力で首元を圧迫した。オークは必死に引き剥がそうとするがウルは離れず、遂には喉元を喰いちぎる。


「ガアアッ!!」
「ガハァッ!?」
「うわぁっ……」


喉元を喰いちぎられたオークは白目を剥いて倒れ込み、首元から大量出血する。子供とはいえ、白狼種のウルの牙の切れ味は鋭利な刃物にも匹敵し、口元が血塗れになりながらもウルは勝利の雄叫びを上げる。

どうにか2体のオークを倒したリンとウルは合流し、お互いに血塗れになってしまった。ウルはともかく、リンは血が滲んだ服を見て困り果てた。


「しまったな……この服で街に入ろうとしたら捕まっちゃうよ。何処かで洗わないと……」
「クゥ~ンッ」
「え?こいつらを食べていいか?別にいいけど、急ぐから早くしてね」
「ウォンッ♪」


ウルは倒したオークの死骸に喰らいつき、あれほど食べたというのにまだ餌を求める彼にリンは呆れてしまう。。


(森に居た時はこんなに食いしん坊じゃなかったのにな……まあ、いいか)


満足するまでウルがオークの肉を食べるのを待ち、その後は身体と衣服を洗うためにリンは川を探す事にした――





――幸運な事に川はすぐに見つかり、リンは下着以外の衣服を洗う。オークの血が染み着いた状態で移動すれば他の魔獣に臭いを嗅ぎつけられて襲われる可能性もあり、念入りに血を洗い流す。


「ふうっ……ようやく休める」
「クゥ~ンッ」


焚火で服を乾かしながらリンは下着だけの姿で岩の上に座り込み、水で血を洗ったウルも焚火の傍で冷えた身体を温める。野生の動物と違って魔物の類は火を恐れず、魔物の中には火を用いる種も存在する(ゴブリンなど)。

身体と服の汚れを落としたリンは地図を開き、明日には街に辿り着けると思われた。今日の所はここで一晩過ごし、明日の朝に出発する事にした。


「今日はここで休もうか。夜は交代で見張りをしよう」
「ウォンッ」


リンの言葉にウルは頷き、二人は焚火を囲んで身体が乾くのを待つ。だが、しばらくするとウルは何かに気付いたように耳を立てる。


「ウォンッ!?」
「ウル?どうかした?」
「ウォオンッ!!」
「えっ、ちょっと何処へ行くの!?」


何かを聞き取ったのかウルは駆け出し、それを見たリンはウルの後を慌てて追いかけた。ウルは向かった先は近くにある丘であり、彼はリンに振り返って鳴き声を上げる。


「ウォンッ!!」
「はあっ、はあっ……いったいどうしたの?」
「ウォオンッ!!」


丘の上に移動したリンにウルは訴えかけるように鳴き声を上げ、彼の行動に不思議に思いながらもリンは視線を向けると、そこには思いもよらぬ光景が広がっていた。



――フゴォオオオッ!!



草原に猪のような鳴き声が響き渡り、派手な砂煙を舞い上げながらボアが草原を駆け抜けていた。しかもボアの前には馬車が走っており、それを見たリンは驚愕した。


「あの馬車、ボアに襲われてる!?」
「グルルルッ……!!」


馬車は全力疾走でボアを振り切ろうとするが、普通の猪と違ってボアは脚力も体力も凄まじく、徐々に距離が縮まっていく。このままでは馬車はボアに追いつかれてしまい、そうなると大変な事態に陥る。

リンは馬車を助けようと思ったが、どうやって助けるのかが問題だった。馬車はリン達がいる場所とは別方向に走っており、ここから全速力で走ったとしてもリンの脚力では追いつけない。


「くそっ!!どうすればいいんだ!?」
「ウォンッ!!」
「あっ!?ウル!?」


ウルは丘の上から降り立つと、ボアに目掛けて駆け出す。子供とはいえ白狼種のウルの脚力ならばボアにも追いつき、彼は馬車に迫るボアに尻に噛みつく。


「ガアアッ!!」
「フガァッ!?」


いきなり尻を噛み付かれたボアは驚愕し、馬車を追いかけるのを中断して慌ててウルを振り払おうとする。その様子を見てリンは今が好機だと判断し、下着姿のまま駆け出す。
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