365 / 367
獣人王国編
第363話 決着をつけるまでは……
しおりを挟む
「だが、私は王位に継ぐ前にガオとガーム将軍との決着をつけなければならない。そうしなければ死んでしまった陛下の無念が晴らされる事はない!!あの二人ともう一度顔を合わせる日が訪れるまで、私はまだ王女だ!!」
「では、リルル王女はガオ王子とガーム将軍を捕まえなければ王位には就かないという事ですか?」
「無論だ。言っておくが文句は言わせない、まずはガーム将軍の真意を探る!!」
リルの発言に大臣も将軍も言い返せず、確かにガオとガーム将軍の件が解決するまでは不用意に王位を継ぐ事は控えた方が良い。理由としてはここでリルが王の座に継ぐ事を宣言しても、ガオとガームが存在する限りは彼女は王の座に就いても安泰とは言えない。
仮にリルが王位継承を宣言した場合、ガオが自分こそが正統な継承者と名乗るだろう。これまでの歴史上、ケモノ王国の王位は男性が受け継ぐ事が一般的だったため、ガオが王位継承するべきだと考える者も出てくるだろう。実際、ガオは王位継承権を剥奪されたとはいえ、王子という身分を失ったわけではない。
さらに言えばガオの背後にはガームが存在し、彼にはこの国でも精鋭の10万を超える兵士を従えている。もしもリルが王位継承を大々的に伝えた場合、ガームを刺激して10万の軍隊を率いて王都に攻め入れば大惨事に陥る。
(ガーム将軍が本当に反旗を起こしたとすれば王都の軍勢では勝ち目がない。ライオネル大将軍がどうにか二人を捕まえていればいいが……希望は薄いな)
既にガオとガームが姿を消してから数日の時が流れ、未だに二人が捕縛されたという話は聞かない。残念ながらライオネルの追跡は失敗したと考えるべきであり、リルはまずはどのように手を打つのかを考える。
「当面の間は王都の警備を強化し、各地の貴族に援軍要請を行う!!また、冒険者ギルドの方にも連絡を送り、冒険者の協力を取り告げ!!それとライオネル大将軍が戻り次第、すぐに私の元へ来るように伝えろ!!」
「はっ!!分かりました王女様!!」
「いくら王子と言えど、ガオ王子の行為は許されません!!絶対に捕まえて見せましょう!!」
「その通りだ!!」
リルの宣言に家臣たちは従い、その様子を見てリルは内心では複雑な感情を抱く。現在、自分のしたがっている家臣の中にはほんの一か月前まではギャンやガームを味方にしたガオに媚を売り、自分の事を蔑んでいた家臣も存在する。
それが今ではガオを国王の暗殺犯に仕立て上げ、自分に媚を売る。そんな彼等を見てリルは怒りどころか憐れみすら抱く。結局は権力を持つ人間に媚びるしかない相手に信頼を置く事は出来ず、リルは自分が国王になったときは人材を見直すべきかと考えた。
(さて……これからどうするべきか)
当面の間はガオとガームの動向を調べ、彼等の真意を確かめる。一方でガームの勢力を警戒してこちらも兵力を整える必要があり、とりあえずは各領地の貴族や将軍に援軍を要請する。ここまでは良いが、問題があるとすれば時間だった。
兵力を揃えるにしても時間が掛かり、しかも相手が百戦錬磨の将軍となると決して油断は出来ない。王都に戦力を集結させてもガームが相手となると確実に勝利するとは言い切れず、やはり何らかの対抗策が必要だとリルは考える。
(ここはやはり、使える手は全て打つしか無いか)
リルはレアの方に視線を向け、彼に対して言いように利用しているという罪悪感を抱きながらも、今回もレアに協力してもらう事を決めた――
――会議を切り上げてリルはレアを連れて自室に戻ると、誰もいない事を確認してため息を吐きながら座り込む。そんな彼女を見てレアは気を遣い、鞄から缶ジュースを取り出してリルに差し出す。
「リルさん、良かったらどうぞ」
「ん?これは……確か、かんじゅーすといったか?」
「はい、冷えた奴を選んだので良かったらどうぞ」
「ああ、ありがとう」
前にもリルは缶ジュースを飲んだことがあるため、有難く蓋を開いて中身を一気に飲み干す。それを見てレナは慌てて止めようとした。
「あ、それ炭酸が強いので一気に飲むのは……」
「ぶほっ!?げほ、げほっ……な、何だこれは!?」
「すいません、先に言っておくべきでした!!」
前回に飲んだのはオレンジジュースだったのに対し、今回渡されたのは炭酸飲料だったためにリルはせき込み、慌ててレナは背中を摩る。リルは初めての飲み物に少々戸惑うが、慣れると病みつきになる味わいだった。
今度は一気に飲まずにちびちびと飲みながらもリルは心を落ち着かせると、レアに対面の席に座るように促す。レアはリルと向かい合う形で座ると、これからこの国はどうなるのかを質問する。
「では、リルル王女はガオ王子とガーム将軍を捕まえなければ王位には就かないという事ですか?」
「無論だ。言っておくが文句は言わせない、まずはガーム将軍の真意を探る!!」
リルの発言に大臣も将軍も言い返せず、確かにガオとガーム将軍の件が解決するまでは不用意に王位を継ぐ事は控えた方が良い。理由としてはここでリルが王の座に継ぐ事を宣言しても、ガオとガームが存在する限りは彼女は王の座に就いても安泰とは言えない。
仮にリルが王位継承を宣言した場合、ガオが自分こそが正統な継承者と名乗るだろう。これまでの歴史上、ケモノ王国の王位は男性が受け継ぐ事が一般的だったため、ガオが王位継承するべきだと考える者も出てくるだろう。実際、ガオは王位継承権を剥奪されたとはいえ、王子という身分を失ったわけではない。
さらに言えばガオの背後にはガームが存在し、彼にはこの国でも精鋭の10万を超える兵士を従えている。もしもリルが王位継承を大々的に伝えた場合、ガームを刺激して10万の軍隊を率いて王都に攻め入れば大惨事に陥る。
(ガーム将軍が本当に反旗を起こしたとすれば王都の軍勢では勝ち目がない。ライオネル大将軍がどうにか二人を捕まえていればいいが……希望は薄いな)
既にガオとガームが姿を消してから数日の時が流れ、未だに二人が捕縛されたという話は聞かない。残念ながらライオネルの追跡は失敗したと考えるべきであり、リルはまずはどのように手を打つのかを考える。
「当面の間は王都の警備を強化し、各地の貴族に援軍要請を行う!!また、冒険者ギルドの方にも連絡を送り、冒険者の協力を取り告げ!!それとライオネル大将軍が戻り次第、すぐに私の元へ来るように伝えろ!!」
「はっ!!分かりました王女様!!」
「いくら王子と言えど、ガオ王子の行為は許されません!!絶対に捕まえて見せましょう!!」
「その通りだ!!」
リルの宣言に家臣たちは従い、その様子を見てリルは内心では複雑な感情を抱く。現在、自分のしたがっている家臣の中にはほんの一か月前まではギャンやガームを味方にしたガオに媚を売り、自分の事を蔑んでいた家臣も存在する。
それが今ではガオを国王の暗殺犯に仕立て上げ、自分に媚を売る。そんな彼等を見てリルは怒りどころか憐れみすら抱く。結局は権力を持つ人間に媚びるしかない相手に信頼を置く事は出来ず、リルは自分が国王になったときは人材を見直すべきかと考えた。
(さて……これからどうするべきか)
当面の間はガオとガームの動向を調べ、彼等の真意を確かめる。一方でガームの勢力を警戒してこちらも兵力を整える必要があり、とりあえずは各領地の貴族や将軍に援軍を要請する。ここまでは良いが、問題があるとすれば時間だった。
兵力を揃えるにしても時間が掛かり、しかも相手が百戦錬磨の将軍となると決して油断は出来ない。王都に戦力を集結させてもガームが相手となると確実に勝利するとは言い切れず、やはり何らかの対抗策が必要だとリルは考える。
(ここはやはり、使える手は全て打つしか無いか)
リルはレアの方に視線を向け、彼に対して言いように利用しているという罪悪感を抱きながらも、今回もレアに協力してもらう事を決めた――
――会議を切り上げてリルはレアを連れて自室に戻ると、誰もいない事を確認してため息を吐きながら座り込む。そんな彼女を見てレアは気を遣い、鞄から缶ジュースを取り出してリルに差し出す。
「リルさん、良かったらどうぞ」
「ん?これは……確か、かんじゅーすといったか?」
「はい、冷えた奴を選んだので良かったらどうぞ」
「ああ、ありがとう」
前にもリルは缶ジュースを飲んだことがあるため、有難く蓋を開いて中身を一気に飲み干す。それを見てレナは慌てて止めようとした。
「あ、それ炭酸が強いので一気に飲むのは……」
「ぶほっ!?げほ、げほっ……な、何だこれは!?」
「すいません、先に言っておくべきでした!!」
前回に飲んだのはオレンジジュースだったのに対し、今回渡されたのは炭酸飲料だったためにリルはせき込み、慌ててレナは背中を摩る。リルは初めての飲み物に少々戸惑うが、慣れると病みつきになる味わいだった。
今度は一気に飲まずにちびちびと飲みながらもリルは心を落ち着かせると、レアに対面の席に座るように促す。レアはリルと向かい合う形で座ると、これからこの国はどうなるのかを質問する。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる