解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第363話 決着をつけるまでは……

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「だが、私は王位に継ぐ前にガオとガーム将軍との決着をつけなければならない。そうしなければ死んでしまった陛下の無念が晴らされる事はない!!あの二人ともう一度顔を合わせる日が訪れるまで、私はまだ王女だ!!」
「では、リルル王女はガオ王子とガーム将軍を捕まえなければ王位には就かないという事ですか?」
「無論だ。言っておくが文句は言わせない、まずはガーム将軍の真意を探る!!」


リルの発言に大臣も将軍も言い返せず、確かにガオとガーム将軍の件が解決するまでは不用意に王位を継ぐ事は控えた方が良い。理由としてはここでリルが王の座に継ぐ事を宣言しても、ガオとガームが存在する限りは彼女は王の座に就いても安泰とは言えない。

仮にリルが王位継承を宣言した場合、ガオが自分こそが正統な継承者と名乗るだろう。これまでの歴史上、ケモノ王国の王位は男性が受け継ぐ事が一般的だったため、ガオが王位継承するべきだと考える者も出てくるだろう。実際、ガオは王位継承権を剥奪されたとはいえ、王子という身分を失ったわけではない。

さらに言えばガオの背後にはガームが存在し、彼にはこの国でも精鋭の10万を超える兵士を従えている。もしもリルが王位継承を大々的に伝えた場合、ガームを刺激して10万の軍隊を率いて王都に攻め入れば大惨事に陥る。


(ガーム将軍が本当に反旗を起こしたとすれば王都の軍勢では勝ち目がない。ライオネル大将軍がどうにか二人を捕まえていればいいが……希望は薄いな)


既にガオとガームが姿を消してから数日の時が流れ、未だに二人が捕縛されたという話は聞かない。残念ながらライオネルの追跡は失敗したと考えるべきであり、リルはまずはどのように手を打つのかを考える。


「当面の間は王都の警備を強化し、各地の貴族に援軍要請を行う!!また、冒険者ギルドの方にも連絡を送り、冒険者の協力を取り告げ!!それとライオネル大将軍が戻り次第、すぐに私の元へ来るように伝えろ!!」
「はっ!!分かりました王女様!!」
「いくら王子と言えど、ガオ王子の行為は許されません!!絶対に捕まえて見せましょう!!」
「その通りだ!!」


リルの宣言に家臣たちは従い、その様子を見てリルは内心では複雑な感情を抱く。現在、自分のしたがっている家臣の中にはほんの一か月前まではギャンやガームを味方にしたガオに媚を売り、自分の事を蔑んでいた家臣も存在する。

それが今ではガオを国王の暗殺犯に仕立て上げ、自分に媚を売る。そんな彼等を見てリルは怒りどころか憐れみすら抱く。結局は権力を持つ人間に媚びるしかない相手に信頼を置く事は出来ず、リルは自分が国王になったときは人材を見直すべきかと考えた。


(さて……これからどうするべきか)


当面の間はガオとガームの動向を調べ、彼等の真意を確かめる。一方でガームの勢力を警戒してこちらも兵力を整える必要があり、とりあえずは各領地の貴族や将軍に援軍を要請する。ここまでは良いが、問題があるとすれば時間だった。

兵力を揃えるにしても時間が掛かり、しかも相手が百戦錬磨の将軍となると決して油断は出来ない。王都に戦力を集結させてもガームが相手となると確実に勝利するとは言い切れず、やはり何らかの対抗策が必要だとリルは考える。


(ここはやはり、使える手は全て打つしか無いか)


リルはレアの方に視線を向け、彼に対して言いように利用しているという罪悪感を抱きながらも、今回もレアに協力してもらう事を決めた――





――会議を切り上げてリルはレアを連れて自室に戻ると、誰もいない事を確認してため息を吐きながら座り込む。そんな彼女を見てレアは気を遣い、鞄から缶ジュースを取り出してリルに差し出す。


「リルさん、良かったらどうぞ」
「ん?これは……確か、かんじゅーすといったか?」
「はい、冷えた奴を選んだので良かったらどうぞ」
「ああ、ありがとう」


前にもリルは缶ジュースを飲んだことがあるため、有難く蓋を開いて中身を一気に飲み干す。それを見てレナは慌てて止めようとした。


「あ、それ炭酸が強いので一気に飲むのは……」
「ぶほっ!?げほ、げほっ……な、何だこれは!?」
「すいません、先に言っておくべきでした!!」


前回に飲んだのはオレンジジュースだったのに対し、今回渡されたのは炭酸飲料だったためにリルはせき込み、慌ててレナは背中を摩る。リルは初めての飲み物に少々戸惑うが、慣れると病みつきになる味わいだった。

今度は一気に飲まずにちびちびと飲みながらもリルは心を落ち着かせると、レアに対面の席に座るように促す。レアはリルと向かい合う形で座ると、これからこの国はどうなるのかを質問する。
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