解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
364 / 367
獣人王国編

第362話 王位継承

しおりを挟む
――久々に男の姿へと戻り、服装も着替えたレアはリルと共に廊下を歩く。目指す場所は玉座の間だが、到着した時には既に大勢の家臣と将軍が待ち構えていた。彼等はリルが姿を現すと礼を行い、その中でも新たに宰相に就任した男性がリルの前に歩み寄る。


「リルル王女様、お待ちしておりました」
「貴方は……ワン殿でしたね」
「はい、ワン・チャンと申します」
「わんちゃん……」


ワンと名乗った男性は年齢は50代ほどで身長はリルよりも頭一つ分小さく、人懐っこい笑顔を浮かべる。この人物は宰相になる前から国王の信頼が厚く、優秀な文官だった。

ギャンが宰相の任を解かれてからすぐに国王は彼を宰相に任命したのは知っているが、リルはあまり関係を持たなかった相手である。最も彼の噂はよく聞いていたのでリルも宰相に任せる人物は彼以外にはいないと思い、まずは軽く挨拶を行うと玉座の間に視線を向ける。


「父上は……本当にもういないのだな」
「はい、残念ながら……」


リルの呟きにワンは頷き、目元を潤ませる。彼としても偉大な国王の死に涙を流さずにはいられず、それでも今は悲しみに耽る事は許されない。今のケモノ王国は非常に不安定な状況に陥っていた。


「リルル王女様!!国王様が亡き今、この国を引き継げるのは貴女様だけです!!」
「どうか国王様の遺志を継ぎ、貴女がこの国の初代女王となって下さい!!」
「我々家臣一同、リルル様が王の座に就く事を願っています!!」
「…………」


広間に存在する殆どの家臣がリルが王位に就く事を望み、現実的に考えても先王がリルルを次の国王に指定していた事は既に城内の人間には知れ渡っていた。実際に国王は体長を崩す前にリルを呼び出すように命じ、謹慎を言い渡しているガオには何の連絡も与えなかった。この事から国王は次の王位をリルに継承させようとしている事は明白だった。

リルも自分が国王になるために功績を上げ、いずれは国王から王位を受け継ぐ覚悟と決意は抱いていた。しかし、こうも早く自分が王位を継ぐ時が着た事に戸惑いを隠せず、本当にこのまま王位継承をするべきなのかを悩む。


(この玉座に座れば私は国王になれる……だが、それで本当にいいのか?)


このままなし崩し的に玉座に座る事にリルは葛藤し、本当に今ここで王位を継ぐ事を宣言してもいいのかと悩む。そんなリルに対して「レア」は彼女の気持ちを読み取り、ワン宰相に話しかける。


「あの…ワン宰相、聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「おお、貴方が噂の勇者殿ですか。こうしてまともに顔を合わせるのは初めてですな、何か私に聞きたいことでもあるのですか?」
「えっと……ガーム将軍とガオ王子は今はどうなったんですか?」
「……そうだな、確かにそちらを確認する方が先だ」


レアの言葉を聞いてリルはワンに振り返り、今は自分が王位を継ぐべきかどうかよりも逃走した二人の事が気にかかり、ワンに状況を問う。ワンは二人の質問に険しい表情を浮かべて説明を行う。


「現在、ライオネル大将軍が王都の守備軍を率いて追跡を行っていますが、恐らくはガーム将軍はガオ王子を引き連れ、自分の領地へと引き返したと考えられます」
「やはりか……」
「王女様!!すぐに各領地の貴族に兵士を派遣させるように指示を出しましょう!!ガーム将軍はガオ王子と結託し、国王様を暗殺された疑いがあります!!もしもガーム将軍が敵に回られたというのであればガーム将軍の配下10万の兵士が反乱を引き起こす可能性があります!!」
「長年の間、国王様に仕え続けた身でありながらガオ王子と組んで暗殺を企てるなど許せません!!一刻も早く、兵を集めて討つべきです!!」
「私も賛成です!!」
「私も同じ意見です!!」


大臣と将軍の全員が今回の国王の暗殺事件はガームとガオの仕業だと考え、国王は臣下にどれほど慕われていたのかをよく思い知らされる。全員が国王の暗殺犯の可能性が高いガームとガオを一刻も早く捉えて処刑するべきだと主張する。

しかし、ガオとガームの性格をよく知っているリルは本当に二人が手を組んで国王を暗殺したとは思えなかった。今回の件には何か裏があると思い、仮に本当に二人が国王の暗殺を計画していたとしても理由が分からなければリルも納得できなかった。


「……皆の意見は良く分かった。今後の方針はまずはガオとガームの動向を探り、二人がどう動くのかを見極める必要がある。もしもガーム将軍がガオと共に反乱を企てようとしている場合、私は次期国王として二人を断罪しなければならない」
『おおっ!!』


はっきりと自分の事を次期国王と告げたリルに対して家臣は表情を明るくさせ、彼女に国王の後を受け継ぐ意思がある事を知って安心する。だが、リルは続けて今回の件が解決するまでは自分は王位に就かない事を示した。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...