解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第360話 荒れる国内

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「行くぞ、ガオ!!」
「うわっ!?」
「待て!!逃がすな!!」
「拘束しろ!!」


ガオを掴んだガームはそのまま窓に向けて駆け出し、勢いよく窓を割って外へと逃げ出す。その様子を見た近衛隊長は即座に兵士達に逃げ出した二人の拘束を命じる。

二人が逃走を開始した事で疑いは増々強くなり、兵士達は逃げ出した二人の後を追う。その様子を見て国王が死亡した報告を行った兵士は口元に笑みを浮かべ、黙って立ち去る――






――外へと逃げ出したガームはガオを連れて中庭を駆け抜け、その様子を見ていた鍛錬中のライオネルは驚いた表情を浮かべる。彼は大将軍として王都の警備を任されているのだが、どうしてガームがこの場にいるのかと戸惑う。


「待て!!そこにいるのはガームか!?」
「ライオネル……く、こんな時にお前と出くわすとは」
「ん?それはどういう意味だ?」


ライオネルと顔を合わせたガームは冷や汗を流し、一方で事情を理解していないライオネルはガームの言葉に疑問を抱くが、その時にガームの後方から追いかけていた兵士たちがライオネルに事情を伝える。


「ライオネル将軍!!ガーム将軍とガオ王子を捕まえてください!!その者たちは国王様の暗殺容疑者です!!」
「な、何だと!?それはどういう意味だ、国王様が暗殺だと!?」
「ぐぅっ……ガオ、走るぞ!!」
「お、叔父上……!!」


兵士の言葉を聞いてライオネルは目を見開き、まずいと判断したガームはガオを連れて走り出す。その様子を見てライオネルは驚愕の表情を浮かべ、すぐに状況を理解すると烈火のごとく怒り狂う。

国王の暗殺と聞かされればライオネルも落ち着いてはいられず、彼は獣の如き方向を放ちながら逃走中のガームとガオの後を追う。この国の大将軍にして純粋な腕力ならば並ぶ者無しと言われているライオネルと戦えばガームでも無事では済まない。


「待て、ガーム!!貴様、本当に国王様を殺したというのか!!」
「違う!!我々はそんな真似はしない、嵌められたのだ!!」
「ならば何故逃げる!?貴様らが犯人でないならば逃げる必要はないはずだ!!」
「落ち着け、ライオネル!!ここで我々が争えば敵の思う壺だぞ!?」
「問答無用!!獅子爪!!」


ライオネルは右腕の筋肉を肥大化させると、勢いよくガームの背中に向けて振り下ろす。武人でありながら背中を不用意に見せたガームは隙を突かれ、刃物の如く研ぎ澄まされたライオネルの爪がガームの背中を抉り取る。

激痛が背中に走り、ガームは危うく大声を出しそうになったが、どうにか根性で堪えて逃げる事に集中する。その様子を見てライオネルは驚き、ガームならば攻撃をされれば反撃をしてくるだろうと思っていた。


「待て、ガーム!!逃げるのか!!」
「……行け、ガオ!!」
「は、はい!!」


ガームはライオネルを無視してガオと共に城内から抜け出すために駆け抜け、そのまま追跡を振り切って場外へと抜け出す。二人に残された道は最早逃げる事しか出来ず、王都を抜け出したガームは自分の領地へと引き返す事しか出来なかった――





――そして数日後、王都では国王が死去した事が広まり、原因はガオ王子が反乱を起こして彼の叔父でもあるガームが国王の暗殺を行ったという噂が民衆に広まる。先日のギャン宰相の一件、更には王位継承権を剥奪されたガオ王子だからこそ反乱を起こしてもおかしくはなく、王都の民衆はこれからこの国がどうなるのかと不安を抱く。

そんな彼等の元に無事に遠征から戻ってきたリルが訪れると、民衆は彼女の帰還を喜び、ガオが反乱を起こした以上は正式な王位継承権を持つ彼女こそが次の国王に相応しかった。だが、当のリル本人は状況をよく理解できず、未だにガオが反乱を起こしたという話が信じられず、その真偽を確かめるために調査を行う。


「……調べた限りでは国王様が病を患っていたというのは本当のようですね。国王様の側近や城内の兵士から話を伺いましたが、全員が嘘をついていない事はレナさんのお陰で確認済みです」
「そうか……」
「こ、国王様……!!」
「……優しい王様だったのに」
「ううっ……せめて拙者たちが残っていればこんな事にはならなかったのに!!」
「…………」


リルの自室にて全員が集まり、まずは集めてきた情報の整理を行う。リリスはレイナと共に調査を行い、とりあえずは国王が急に病を患ったという話が事実である事を確認する。証言した人間に対してレイナは「解析」の能力で嘘をついていない事を確かめた後、リリスも遺体の確認を行う。

既に国王の死後から数日の時が流れているが、死体の方は腐らないように処理を施され、現在は水属性の魔石を利用して作り上げられた「冷凍室」にて保管されている。死体には腹部に大きな傷が存在し、長剣で突き刺されていたという話は本当だった。
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