解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
360 / 367
獣人王国編

第358話 謎の襲撃者

しおりを挟む
「貴様っ!!何者だっ!?」
「ひいっ!?」


ガームは自分に向かってくる黒装束の人物に対して腰の剣を抜こうとしたが、その前に相手の方がクナイを構えると、ガームの剣を引き抜こうとした右手に向けて放つ。

結果から言えばガームが剣を抜く前に彼の右手の甲にクナイが突き刺さり、痛みで剣を抜く事が出来なかった。苦痛の表情を浮かべるガームに対して黒装束の人物は腰に差していた短刀を引き抜く。


「死ねっ!!」
「ぐっ……舐めるなぁっ!!」
「があっ!?」


だが、相手が次の攻撃に移る前にガームは右足を突き出し、襲撃者を蹴り飛ばす。元は大将軍を務めていた事もあるガームの膂力はライオネルにも劣らず、吹き飛ばされた襲撃者は床に転がり込み、それでも気絶には至らなかったのかすぐに起き上がる。

ガームは右手に突き刺さったクナイを引き抜き、その武器を確認して驚いた表情を浮かべる。そして敵の正体を見抜いたとばかりに告げた。


「まさか……貴様、忍びか!!
「し、しのび?」
「……このクナイを扱えるのは和国の暗殺者、忍者や忍びと呼ばれる人間以外には扱えんはずだ。だが、何故この俺を襲う!?答えろ!!」
「……御免!!」


襲撃者はガームの言葉に答えもせず、そのまま窓を破って外へと抜け出す。ガームはそれを見て慌てて破壊された窓の元へ近づくが、既に忍者の姿は消えてしまい、それを確認したガームはクナイを握りしめる。


「くそぉっ!!貴様かぁっ!!国王を殺したのは、貴様かぁあああっ!!」
「お、叔父上……!!」
「な、何の騒ぎだ!?」
「あ、あれは……ガーム将軍!?どうしてここに!?」


騒動を聞きつけたのか兵士が通路に駆け寄ると、倒れているユダンとその傍に存在するガオ、そしてクナイを握りしめたガームを見て兵士達は戸惑う。いったい何が起きたのかと混乱する中、兵士の隊長がガームに近付く。


「が、ガーム将軍……これはいったい何事ですか?いや、それよりもどうして将軍がここに……」
「お前は……近衛隊長か、貴様何をしていた!!賊が現れたぞ!!」
「賊!?そんな馬鹿なっ……ど、何処にいるのですか!?」
「た、大変です!!」


国王の近衛兵の隊長だと気づいたガームは襲撃者の侵入を許した事に叱りつけようとしたが、即座に別の兵士が駆けつけ、彼は顔色を青くしながら跪く。

尋常ではない様子の兵士を見てガームと近衛隊長は驚き、何事が起きたのかと問い質す前に兵士は大粒の涙を流しながら報告した。


「こ、国王様が……国王様がお亡くなりに……!!」
「な、何だと!?」
「それは……」


どうやらこちらの兵士は国王の部屋に入り、国王が死んだことを確認したらしく、近衛隊長は動揺したように目を見開く。一方でガームの方は事前にユダンから話を聞いていたので取り乱す様子もなく、動揺するのも仕方がない事だが今は逃げた襲撃者を追うように指示を出そうとしたとき、兵士が予想外の事を言い出す。


「国王様の遺体には……剣が突き刺さっていました!!あ、暗殺です!!」
「何だと!?」
「馬鹿なっ!?」
「ど、どういう意味だ!?」


兵士の言葉に今度は近衛隊長だけではなく、ガオもガームも驚き、ユダンから彼等は国王の死んだ理由は病のせいだと聞いていた。しかもユダンは国王から遺言も受けていたはずであり、剣で殺されたなどと一言も言っていない。

いったいどういう事なのかと現れた兵士に近衛隊長とガームは近づくと、兵士は涙声を流しながら国王の遺体の状態を説明する。


「わ、私は見ました……国王様の部屋から奇妙な物音が聞こえ、何事かあったのかと尋ねました。しかし、部屋から返事はなく、音が聞こえなくなった事で不安を覚えたので私は扉を開いたときには……国王様が壁際に倒れ、胸元に剣が突き刺さっていました……!!」
「ば、馬鹿なっ……!!」
「だ、誰だ!!誰がそんな事をした!!」


国王が殺されていたと証言する兵士にガームは狼狽し、近衛隊長は涙を流しながらも兵士の首を掴んで壁に押し付けると、彼は苦し気な表情を浮かべながらも答えた。


「わ、分かりません……私が来た時には既に部屋の中には誰もおらず、窓が開かれた状態でした……!!で、ですが、国王様の遺体に刺さっていた剣は……」
「剣がどうした!?」
「……が、ガオ王子様が制作させた黒狼騎士団の紋章が刻まれていました。刃も、柄も、全体が黒く染められていました」
「なん、だと……」
「そ、そんな馬鹿なっ!?嘘だ、あり得ない!!」


兵士の言葉に誰もがガオに視線を向け、彼は顔色を青くさせて混乱を隠せず、必死に否定する。しかし、その態度が逆に怪しく感じられ、兵士の言葉が真実ならば国王を殺した武器はガオが制作させた黒狼騎士団の騎士の装備となる。

ガオは助けを求めるように周囲に視線を向けるが、兵士達も近衛隊長も彼に対して警戒心を抱き、一方でガームはこのままではまずいと判断して甥の元へ向かう。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...