解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
347 / 367
獣人王国編

第345話 リリスの前世

しおりを挟む
洞穴の出入口は狭かったが、奥の方に進むとやがて広い場所に出た。そこには地面に魔法陣のような物が記され、その中央には光り輝く宝石のような物が存在した。

子供心に光り輝く宝石を見たリリスは興味を抱き、つい魔法陣の上に乗り込んで宝石を手にしてしまう。その直後、彼女が宝石を手にした瞬間に熱い何かが身体の中に入り込む感覚に襲われ、彼女は意識を失う。



――次に意識が目覚めた時、彼女が存在したのは「地球」の病院だった。いったい何が起きたのか理解できなかったが、リリスは赤子の状態で看護師に抱き上げられていたという。



何が何だか分からないままにリリスは地球に存在する赤子になってしまった彼女は戸惑いながらもそれから15年の月日を過ごしたという。幸いにも赤子の彼女の両親は優しい人物でそれなりに幸せな人生を送ったという。

最初の頃は元の世界の記憶もあって地球の環境に慣れるのに戸惑ったが、数年も経過すると元の世界の事は子供の頃の自分の夢だと思い込むようになった。しかし、普通ならば赤ん坊の時の記憶など忘れるはずなのだが、リリスはしっかりと覚えていた。

元の世界の記憶が忘れられず、普通の地球の女子高生として生活を送る日々だったが、ある時に彼女は歩道橋を歩いていた時に激しい地震が発生して彼女は歩道橋から落ちてしまったという。

歩道橋から落ちる際、彼女は自分がアスファルトの道路に叩きつけられると思い込んでいた。しかし、彼女が地上に落ちる前に唐突に空間に亀裂が走り、その亀裂の中に彼女は飲み込まれてしまう。

何が起きたのかは理解できなかったが、その後の事はリリスも覚えておらず、次に意識が目覚めた時は彼女は元の世界の魔法陣の上に存在したという。唐突に自分が暮らしていた世界に戻ってきたリリスは戸惑いを隠せず、彼女の手元には輝きを失ったただの石ころが握りしめられていた。




――その後のリリスは精神年齢が20才の状態で5才の身体を取り戻し、地球の記憶が消えないまま生活を送る羽目になった。こちらの世界よりも平和で生きやすい地球での生活に慣れすぎたせいで彼女は元の世界の生活が馴染めず、ここである決意を抱く。




このまま村に残ってもリリスは猟師である父親か薬屋を経営している母親の後を継ぐ事になる。しかし、どちらの職業も彼女は受け継く事を拒否すると、彼女は家を出て王都に赴き、そこでリルと偶然にも出会って彼女に仕えた。

理由としてはかつてケモノ王国では勇者を召喚したという話が存在し、その勇者の正体が地球人だと考えたリリスはあの世界に戻る方法を得るため、故郷を離れてここへ戻ってきたという。



「――という事で、私はレイナさんの世界、つまり地球人の記憶を持っているんです」
「そ、そうだったんだ……まさかリリスが転生者だったなんて」
「まあ、実際の所はあの世界の記憶が本当に私の記憶なのかは分かりません。だけど、子供の頃の私が見つけた不思議な宝石のお陰で私は自分の前世を思い出す事が出来たと思うんです」
「ぷるるんっ(アンコール)」


リリスの話を聞き終えたレイナは驚きを隠せず、少し前からリリスの言動に引っかかりを覚えていたが、まさか自分と同じく地球人だったという話に呆然とした。正確に言えばレナの場合は異世界転移、リリスの場合は地球の記憶を持つ転生者なのだが、ともかく初めてレイナはこの世界で地球の存在を知る人間に出会えたことになる。

地球の記憶を蘇ったリリスはあの世界に戻る方法があるとすれば過去に勇者を召喚した事もあるケモノ王国が何かを知っていると判断し、リルに近付いて彼女に従ったという。美少女好きなリルに取り入るのは簡単だったのだが、問題なのは薬屋を営んでいた母親の元で薬学を学んでいたリリスはすぐに薬剤師として仕事を与えられてしまい、肝心の調査が進んでいないという。


「レイナさんがここへ来た時は正直に言えば嬉しかったですよ。なにしろ、あの世界の人間にまた出会えるなんて思いもしませんでしたからね」
「もっと早く言ってくれればよかったのに……」
「いや、私も機会は伺っていたんですよ?でも、いつもレイナさんの傍に他の人間がいたので話しかけられなかったんです」
「そういえばそうだったかな……」


言われてみればレイナはリリスと二人きりの状況になった事はなかったのかもしれず、いつも傍には誰か他の人間がいたように思える。リリスとしても話す内容が地球に関する事なので慎重に動き、今まで黙っていたらしい。


「こちらの世界の人間には迂闊にあの世界の話はしないようにしてるんです。両親にも私が転生者である事を明かしたときは、数日ぐらいは優しく接せられましたね。きっとあれは私が変な妄想癖を発症したと思ったんでしょうね……」
「ああ、うん……それはまあ、どんまい」


残念ながらこの世界の人間にはリリスが体験した地球の話は信じてもらえず、実の両親からも話を信じてもらえなかったリリスは仕方なく他の人間には地球の記憶を話さないように心掛けたのも無理はない。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...