346 / 367
獣人王国編
第344話 リリスの秘密
しおりを挟む
「ふむ……恐らくですが、この場所には物体が劣化しないような特別な仕掛けが施されているようですね。異空間に預けた物が異空間の中では時間の概念を受けず、温かい物はいつまでも温かく、冷たい物は冷たいまま取り出せるのと同じ原理です」
「え、じゃあここは異空間なの?」
「別に驚くほどじゃないですよ。今までの階層だって、建物の中とは思えないほどに広大な空間が広がっていたでしょう?」
「言われてみれば確かに……」
リリスの言葉にレイナは不思議と納得してしまい、確かにこれまでの大迷宮の階層は明らかに異常だった。まるで別世界に転移したかのように建物の内部とは思えない程に広大な空間が広がっていた。
恐らくは今までの階層も含め、この大迷宮自体が特別な構造と化しており、もしかしたらこれまでに訪れた階層は実は大迷宮の中ではなく、全く別の空間に築かれた世界かもしれない。だが、それを確かめる術はなく、今はどうやって皆を起こすのかをレイナは考える。
「皆、起きないな……あ、そうだ。俺の解析と文字変換の力で起こそうか?」
「いや、それは止めておいた方がいいですよ。原因が突き止めていない状態で仮に目を覚ませても、すぐにまた意識を失う可能性があります」
「あ、そうか……でも、俺達はどうして平気なんだろう?」
仮に解析や文字変換の能力を使って眠っている者たちを起こしたとしても、そもそも気絶している原因が不明の状態で起こしても再び意識を失う可能性も考慮しなければならない。しかし、それならばどうして自分達だけは平気なのかとレイナは疑問を抱く。
最初に意識を取り戻したのはレイナ、次にクロミンが彼に起こされ、その後にクロミンがリリスを叩き起こす。だが、後の人間達はどれほどの刺激を与えようと目を覚ます様子はなく、眠っているというよりは動物の冬眠のような状態に陥っていた。
「う~ん……状態が「休眠」と表示されていたのが気になるな。眠っているだけなら睡眠だと表示されるはずなのに」
「ふむ、確かにその点が気になりますね。ほら、起きてください、起きないと顔の悪戯しますよ。貧乳娘って……」
「う、ううんっ……」
リリスがチイの耳元に囁きかけるが彼女は目を覚まさず、普段のチイならばすぐに飛び起きそうなものだが、やはり目を覚まさない。
レイナもネコミンやリルを揺さぶるが、目を覚ます気配はない。クロミンも意外と大きいハンゾウの胸元に飛び跳ねてみるが、起きる気配はない。サンやオウソウも同じく、どんな方法を用いようと意識が戻る様子はなかった。
「このぉっ!!テキサスクローバーホールド!!」
「うぐぐっ……!?」
「ちょ、止めなよ!!オウソウも痛がってるよ!!」
「むうっ……これだけ痛めつけても起きませんか」
試しに痛覚を刺激して起きないのかとリリスはプロレス技を仕掛けるが、オウソウは苦しそうに呻くだけで目を覚まさず、それどころか顔色が悪くなっていた。やはり単純な方法では目を覚まさないようだが、ここでレイナはある事に気づく。
「あれ、ちょっと待って……今のってプロレス技だよね。なんでリリスが知ってるの?」
「あっ……えっと、ですね」
「まさか過去にプロレスラーの勇者も召喚されて伝わってるの!?」
「いや、どんな職業ですかそれは……そうですね、別に隠しておく必要もないと思いますし、お答えしますよ」
「ぷるんっ?」
リリスは仕方がないとばかりに頭を掻き、何か思い悩むように腕を組む。その様子を見ていたレイナは不思議そうにクロミンを抱きかかえると、意を決したようにリーリスは話し始める。
「私、実はこの世界の人間じゃないんですよ」
「え、人間じゃないって……じゃあ、まさか俺みたいにこの世界に召喚された人間!?」
「いえ、私の場合はちょっと特別なんですよ……正確に言えば私はこの世界で生まれましたが、実は地球で暮らしていた頃の記憶を持っている。言ってみれば転生者ですね」
「て、転生者!?」
「ぷるるんっ(何それ?)」
転生者という言葉にレナは驚き、リリスも何処から説明すればいいのか悩んだ表情を浮かべ、まずは彼女は自分の生い立ちから話し始めた。
――リリスは父親が獣人族、母親が森人族であり、彼女は種族的には獣人族として今から20年近く前に生まれた。森人族の血が混じったせいで実年齢よりも4、5才は若く見られるが、実年齢はリルよりも上である。
彼女が生まれたのはケモノ王国の中でも辺境の村らしく、幼少期は両親と共に平和に暮らしていたという。しかし、ある時に彼女は事故に遭ってから自分の前世の記憶がよみがえったという。
発端は彼女が5才の頃、自分の村の近くに存在した山の中で遊んでいると、ある時に子供が通れるような大きさの洞穴を発見した。その洞穴に彼女は興味本位で入った事で彼女の人生は大きく変わってしまう。
「え、じゃあここは異空間なの?」
「別に驚くほどじゃないですよ。今までの階層だって、建物の中とは思えないほどに広大な空間が広がっていたでしょう?」
「言われてみれば確かに……」
リリスの言葉にレイナは不思議と納得してしまい、確かにこれまでの大迷宮の階層は明らかに異常だった。まるで別世界に転移したかのように建物の内部とは思えない程に広大な空間が広がっていた。
恐らくは今までの階層も含め、この大迷宮自体が特別な構造と化しており、もしかしたらこれまでに訪れた階層は実は大迷宮の中ではなく、全く別の空間に築かれた世界かもしれない。だが、それを確かめる術はなく、今はどうやって皆を起こすのかをレイナは考える。
「皆、起きないな……あ、そうだ。俺の解析と文字変換の力で起こそうか?」
「いや、それは止めておいた方がいいですよ。原因が突き止めていない状態で仮に目を覚ませても、すぐにまた意識を失う可能性があります」
「あ、そうか……でも、俺達はどうして平気なんだろう?」
仮に解析や文字変換の能力を使って眠っている者たちを起こしたとしても、そもそも気絶している原因が不明の状態で起こしても再び意識を失う可能性も考慮しなければならない。しかし、それならばどうして自分達だけは平気なのかとレイナは疑問を抱く。
最初に意識を取り戻したのはレイナ、次にクロミンが彼に起こされ、その後にクロミンがリリスを叩き起こす。だが、後の人間達はどれほどの刺激を与えようと目を覚ます様子はなく、眠っているというよりは動物の冬眠のような状態に陥っていた。
「う~ん……状態が「休眠」と表示されていたのが気になるな。眠っているだけなら睡眠だと表示されるはずなのに」
「ふむ、確かにその点が気になりますね。ほら、起きてください、起きないと顔の悪戯しますよ。貧乳娘って……」
「う、ううんっ……」
リリスがチイの耳元に囁きかけるが彼女は目を覚まさず、普段のチイならばすぐに飛び起きそうなものだが、やはり目を覚まさない。
レイナもネコミンやリルを揺さぶるが、目を覚ます気配はない。クロミンも意外と大きいハンゾウの胸元に飛び跳ねてみるが、起きる気配はない。サンやオウソウも同じく、どんな方法を用いようと意識が戻る様子はなかった。
「このぉっ!!テキサスクローバーホールド!!」
「うぐぐっ……!?」
「ちょ、止めなよ!!オウソウも痛がってるよ!!」
「むうっ……これだけ痛めつけても起きませんか」
試しに痛覚を刺激して起きないのかとリリスはプロレス技を仕掛けるが、オウソウは苦しそうに呻くだけで目を覚まさず、それどころか顔色が悪くなっていた。やはり単純な方法では目を覚まさないようだが、ここでレイナはある事に気づく。
「あれ、ちょっと待って……今のってプロレス技だよね。なんでリリスが知ってるの?」
「あっ……えっと、ですね」
「まさか過去にプロレスラーの勇者も召喚されて伝わってるの!?」
「いや、どんな職業ですかそれは……そうですね、別に隠しておく必要もないと思いますし、お答えしますよ」
「ぷるんっ?」
リリスは仕方がないとばかりに頭を掻き、何か思い悩むように腕を組む。その様子を見ていたレイナは不思議そうにクロミンを抱きかかえると、意を決したようにリーリスは話し始める。
「私、実はこの世界の人間じゃないんですよ」
「え、人間じゃないって……じゃあ、まさか俺みたいにこの世界に召喚された人間!?」
「いえ、私の場合はちょっと特別なんですよ……正確に言えば私はこの世界で生まれましたが、実は地球で暮らしていた頃の記憶を持っている。言ってみれば転生者ですね」
「て、転生者!?」
「ぷるるんっ(何それ?)」
転生者という言葉にレナは驚き、リリスも何処から説明すればいいのか悩んだ表情を浮かべ、まずは彼女は自分の生い立ちから話し始めた。
――リリスは父親が獣人族、母親が森人族であり、彼女は種族的には獣人族として今から20年近く前に生まれた。森人族の血が混じったせいで実年齢よりも4、5才は若く見られるが、実年齢はリルよりも上である。
彼女が生まれたのはケモノ王国の中でも辺境の村らしく、幼少期は両親と共に平和に暮らしていたという。しかし、ある時に彼女は事故に遭ってから自分の前世の記憶がよみがえったという。
発端は彼女が5才の頃、自分の村の近くに存在した山の中で遊んでいると、ある時に子供が通れるような大きさの洞穴を発見した。その洞穴に彼女は興味本位で入った事で彼女の人生は大きく変わってしまう。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる