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獣人王国編

第339話 ゴーレム・キングの能力

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「まさか……全身を発熱させて雨を蒸発させている!?」
「分かりました、あいつはマグマゴーレムの能力を取り込んで全身の温度を変化できるんです!!」
「何だと!?」
『ゴアアアアアッ!!』


雨によって崩れ去るかと思われたゴーレム・キングだったが、徐々に全身が赤色に変色し、全身に熱を伝える事で雨水を蒸発させながら登っていく。マグマゴーレムの「体温変化」の能力も所有していたらしく、身体に降り注ぐ水分を蒸発させながら登ってきた。

その様子を見ていたレイナ達は洞穴の様子を確認するが、オウソウとサンが必死で岩石をどかしているがとてもではないが間に合わない。団員達が力を合わせて彼等を手伝ったとしてもゴーレム・キングが存在する限りは振動を受けて再び岩石が崩れる可能性もある。


「ど、どうすればいいんだ!?」
「どうしようもねえよ!!こんなの、逃げるしか……」
「取り乱すな!!冷静になれ、ここで慌てても何も好転しない!!」


絶望的な状況に団員達は取り乱すが、リルが彼等を一括して落ち着かせる。しかし、落ち着かせても状況が変わるわけではなく、このままではゴーレム・キングによって全員が殺されてしまう。

リルは妖刀ムラマサを引き抜き、他の者たちも一応は武器を構えるが、全身を発熱させたゴーレム・キングが迫る光景を見てこのままでは殺される事は分かっていた。それでも最後まで諦めずに戦う事を決意した時、ここでレイナはリルに視線を向ける。


「…………」
「れ、レイナ君?どうしたんだ急に見つめて……」


レイナが自分を見つめてきたことに気づき、リルは戸惑いの表情を浮かべるが、レイナの視線をよく確かめると視線の先に存在するのは自分ではない事に気づく。ならば何を見ているのかとレイナの視線の先にリルは顔を向けると、それは彼女が所有している妖刀ムラマサである事が判明した。

リルが所有しているムラマサを確認したレイナはある方法を思いつき、この方法ならば上手くいけばゴーレム・キングを倒す事が出来るかもしれなかった。だが、この方法が失敗すれば後はなく、もう文字変換の能力でゴーレム・キングを「即死」させるしかない。


「リリス、本当にゴーレム・キングを倒せば大爆発を引き起こすの?」
「え?ええ、確か文献にはそう書いてありましたけど……」
「でもさ、仮にもしも全身が凍り付いた場合はどうなるのかな?それでも爆発するの?」
「全身が凍り付いた場合……あっ!?」


いったい何を言い出すのかとリリスはレイナに振り返ると、彼女が指先を前に伸ばしている事に気づき、文字変換の能力を発動しようとしている事に気づく。



――レイナは視界に表示されたゴーレム・キングの詳細画面の特徴に手を伸ばし、ある二文字を書き込む。その直後、全身が発熱していたゴーレム・キングの肉体に異変が発生し、徐々にゴーレム・キングの動作が鈍くなっていく。



ゴァアアアアアッ――!?



唐突にゴーレム・キングの肉体が変色すると、全身が凍り付いていき、やがて巨大な氷像へと変化を果たす。そして巨体がゆっくりと傾くと、地面に向けて倒れ込む。その衝撃によって凍り付いたゴーレム・キングの肉体が砕け散り、巨大な火属性の核が露出した。

その様子を見ていた者たちは唖然とした表情を浮かべるが、レイナの方は額の汗を拭い、上手く試みが成功した事に安堵する。その様子に気づいたリリスが戸惑いの表情を浮かべながらも尋ねる。


「まさか……まさかとは思いますけど、まさかゴーレム・キングを「凍結」させたんですか?」
「うん、上手くいって良かったよ」


レイナは視界の詳細画面に表示された文字を確認し、特徴の項目を「凍結」と変化させた事を告げた。結果としてゴーレム・キングは身体が凍り付いた事によって熱を奪われてしまい、体内の核も凍結化させられた事で大爆発を引き起こさずに倒す事が出来たという。

正確に言えばゴーレム・キングは完全に死亡したわけではなく、全身が凍り付いた事で肉体の機能が停止し、動けなくなっただけに過ぎない。現在は肉体が崩壊した事でゴーレム・キングの核が出現したが、あくまでも凍結化しただけで死んだわけではなく、氷が溶ければ復活を果たすだろう。だが、復活を果たす頃にはレイナ達はもうこの大迷宮には存在しない。


「ふうっ……死ぬかと思った」


まさか殺しても大爆発を殺す存在が現れるとは思えず、今までレイナはどんな状況に陥ろうと解析と文字変換の能力ならば切り抜けるという自信があった。だが、今回の場合はこの二つの能力でも切り抜けるのがぎりぎりで合ったことを理解し、能力を過信し過ぎていた事を自覚する。


(これからも倒すだけじゃ問題がある敵が現れるかもしれない……油断は出来ないな)


今回はどうにか切り抜ける事が出来たが、改めてレイナは倒すだけでは駄目な敵が存在することを理解すると、改めて皆の様子を伺う。
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