解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第326話 再突入前の準備

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――レイナが意識を取り戻したのは彼女が帰還してから翌日の朝だった。成長痛によって苦しめられたが、意識を取り戻したときにはもう身体の痛みは消えていた。文字変換でレベルを強制的に上げた時とは違い、最初の内はあまりの痛みに身体を動かす事も出来なかったが、時間が経過するにつれて痛みもなくなっていく。

火竜を倒した影響で一気にレベルが上昇したが事が原因のため、現在のレイナは恐らくは他の勇者よりもレベルが高い。だが、相変わらず魔法と戦技の方は覚える様子はないが、レベルが上昇した事で身体能力の方は更に高まっていた。


「くっ、うおおおおっ!!」
「オウソウ、無暗に突っ込むな!!」
「ぬうっ……隙があるのに隙が無いでござる!!」
「おっとっと……やるね皆」

そして現在のレイナはオウソウ、チイ、ハンゾウの3人を相手に組手を行っていた。半日近くも眠り込んでいたので少し身体を解そうとしたのだが、リハビリも兼ねてリーリスの提案で組手を行う。

最初の内はチイと組み手を行っていたのだが、復活したレイナの身体能力は異様なまでに上昇している事が発覚し、現在はオウソウとハンゾウも交えて対戦を行う。一応は戦技の使用は禁止されているのだが、それでも実力者であるはずの3人を相手にレイナは1人で互角に戦う所か余裕さえ見せていた。


「す、凄い……レイナさん、あんなに強かったのか!?」
「オウソウはともかく、チイやハンゾウさんまで手も足も出ないなんて……」
「勇者様とどっちが強いんだ?」
「あれ?そういえば勇者様は何処にいるんだ?」


4人の戦闘を見ていた団員達はレイナの脅威的な強さに驚かされ、身体能力だけで3人を相手にする彼女の姿は正に異常だった。しかも本来は人間よりも運動能力が優れているはずの獣人族を相手にレイナはそれ以上の力で3人を圧倒する。

やがてデュランダルを握りしめたレイナは剣を横に構えると、力を込めて身体を回転させながら振り抜く。その攻撃によって3人は同時に吹き飛ばされるほどだった。


「せいやぁっ!!」
「うおおっ!?」
「きゃんっ!?」
「ぬあっ!?」


吹き飛ばされた3人は地面に倒れると、団員達は驚愕の声を上げ、一方でレイナの方はデュランダルを確認する。前は両手を使用して振り抜いていたが、現在は片腕だけでも十分に扱える事を確認し、腕力の方も大分強化されている様子だった。


「くっ……ま、参った」
「強い、まさかこれほどとは……」
「ぬううっ……悔しいでござる」
「ふうっ……ありがとう3人とも、でも3人も戦技を使っていたら勝てなかったと思うよ」


倒された3人は悔しげな表情を浮かべるが、レイナの方は自分が勝てたのは3人が戦技を使用するのを控えたからだと悟り、仮にチイ達も本気で戦っていたら結果は違ったかもしれない。

レベルが上昇した事で確実に成長したレイナだが、残念ながら戦技や魔法の類を覚える様子は一切ない。こればかりは文字変換の能力でもどうしようも出来ず、そのため今後の戦闘でも苦労させられそうだった。


(俺も皆みたいに必殺技とか覚えられたな……何かいい方法はないかな)


文字変換の能力は戦闘中においては発動が難しいという欠点もあるため、もしも強敵と遭遇した時に戦える技を持っていれば便利ではある。だが、必殺技といってもレイナが戦技と魔法を覚える事が出来ない以上、自力で生み出すのではなく武器に頼る方法しかない。


(エクスカリバーみたいに武器の効果で攻撃が出来るのはいいんだけどな……そういう意味ではデュランダルが一番役立つかな)


デュランダルの能力は衝撃波を生み出す事が出来るため、あらゆる戦闘において非常に役立つ。他にもエクスカリバーの場合は普通の生物には効果が薄いが「光刃」を生み出すという性質も持つ。

フラガラッハの場合は装備しているだけで攻撃力が増強され、アスカロンの場合はその鋭すぎる切れ味が頼りになる。そう考えると、レイナの必殺技は聖剣その物に頼る事が必殺技と言えるかもしれない。だが、聖剣が存在しない状態で戦う場合、やはりレイナも他の人間のように戦技や魔法の類を扱えるようになりたいと考えていた。


(必殺技は今後の課題だな……)


デュランダルを背中に戻して倒れた3人の元に歩み寄ろうとしたとき、リルがその場に現れてレイナ達に声をかける。


「ふむ、どうやら完全復活を果たしたようだね」
「あ、り、リル様!?」
「団長……くっ、見苦しい所を見られたな」
「不覚を取ったでござる」
「そう落ち込む必要はないさ、たとえ負けたとしても生きているなら次に生かせばいい」


レイナに敗北した3人はリルの顔を見ると落ち込んだ表情を浮かべるが、そんな3人に対してリルは優しく言い返すと、改めてレイナに振り返って体調を完全に取り戻した事を確認して安堵の表情を浮かべた。


「どうやらもう身体の方は大丈夫そうだね、これなら任務に戻れるかな?」
「あ、はい。それは問題ありません」
「よし、なら皆をここに集めてくれ。第四階層の本格的な攻略の事を話し合い合いたい」
『おおっ!!』


リルの言葉に団員達に緊張が走り、即座にその場に居合わせた者たちは全団員の招集を行う。
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