322 / 367
獣人王国編
第320話 成長痛の脅威、再び
しおりを挟む
「た、倒した……のか?」
「凄い……」
「何だ今のは……まさか、これが勇者の魔法なのか!?」
「いえ、違います。俺の世界に存在する武器を作り出しただけです。大迷宮の時にも使った……!?」
「「ウォンッ?」」
火竜が倒れた光景を見てリル達が茫然とする中、レイナは自分の攻撃が成功した事に安心したのも束の間、全身に異常な程の激痛が襲い掛かる。
最初は火竜に吹き飛ばされた時の痛みが遅れてやってきたのかと思ったが、この世界に訪れたばかりの頃、似たような感覚をレイナは既に何度か味わっている。すぐに肉体の異変の原因を察したレイナはその場に倒れ込む。
(まさか……成長痛!?どうして……!?)
全身に襲い掛かる痛みにレイナは声を上げる事もできず、身体が麻痺したように動けない。唐突に倒れたレイナを見てリル達は驚き、慌ててリルがレイナを抱き上げて状態を調べた。
「レイナ君!?どうしたんだ急に……」
「あ、がぁっ……」
「レイナ!!しっかりしろ、何処か怪我をしたのか!?ネコミン、すぐに回復魔法を……」
「これは……怪我じゃない、多分だけど成長痛に襲われている」
「成長痛!?いったいどうして……そうか、火竜と火竜の経験石を破壊した事でレイナ君の身体に膨大な経験値が入ったのか。それでレベルが急激に上昇して……」
「成長痛は回復魔法では治せない。だけど、いずれは肉体の成長も終われば痛みもなくなるはず。今はレイナの身体を安全に休ませる必要がある」
ネコミンはすぐにレイナの身体の異変に気付くと、自分の回復魔法では治せないことを悟る。現在のレイナの肉体はより強靭な身体へと作り変えられているため、下手に回復魔法を施せば逆に悪影響を及ぼす可能性があった。
もう既に半ば意識が飛んでいるレイナをリルは抱きかかえると、倒れた火竜に視線を向けて残念ながら素材の回収を諦めるしかなかった。今は一刻も早くレイナを安全な場所に連れていくため、彼女は指示を出す。
「一刻も早く、ここからレイナ君を連れ出す。まずは安全な場所を探すんだ、シロ、クロ!!周囲を警戒しろ!!」
「「ウォンッ!!」」
「シャウッ?」
命令を受けたシロとクロは周囲に気を配り、鼻を引くつかせながら近くに魔物が存在しないのかを確認を行う。一方でアカの方はレイナの異変に気付くと、彼の元に顔を近づけ、苦しそうな表情を見て首を傾げる。
「シャアアッ……」
「アカ!!今はお前に構っている暇はないんだ、下がっていろ!!」
「待て……レイナ君が何か伝えようとしている」
「レイナ?」
痛みで意識が朦朧としながらもレイナは顔を近づけてくるアカに対して何事かを囁き、その声を聞いたアカは頷くとリル達に顔を向けて鳴き声を上げた。
「シャアッ、シャアッ!!」
「な、何だ?」
「付いて来い、と言っている様に見える」
「私もそう思った。だが、何処へ連れて行く気だ?」
意識を失いかけているレイナに何らかの指示を受けたのか、アカはその場を移動するとリル達に付いて来いとばかりに鳴き声を上げる。その様子を見てレイナを抱えたリルは考えた末、ここはレイナを信じてアカの後に続く。
アカの先導の元、リル達は後を付いてくとやがてアカは洞穴の前まで辿り着く。最初にアカが餌場としていた洞穴とは別の場所に存在し、この中に入るようにアカは促す。
「シャウッ!!」
「ここは……洞穴なのか?」
「でも、何か変な感じがします……ここの洞窟だけ、妙に岩壁が滑らかというか」
「前に牙山でレイナが作った「とんねる」と似ている気がする」
火竜が案内した洞穴はまるで人工的に作り出されたトンネルと酷似しており、随分と奥まで続いていた。しかも天井の部分には光り輝く魔石が埋め込まれているらしく、中は意外と明るい。
天井に嵌め込まれた魔石を見てリルは「光石」と呼ばれる聖属性の魔石の一種だと確認し、この光石のお陰で洞穴内は常に明かりが灯されていた。火竜は洞穴の奥の方へと移動を行い、その様子を見てリル達も意を決して洞穴の中に入り込む。
「この洞穴……前にレイナが作り出した「とんねる」と本当によく似ていますね」
「ああ、もしかしたらレイナ君と同じ勇者が作り出した物かもしれない」
「という事は……」
「……もしかしたら私達が向かう先に目的地が存在するのかもしれないな」
リルは「トンネル」の奥に何が待ち構えているのかを薄々と感じ取ると、やがて彼女の予想を裏切らず、トンネルの奥には大きな空間が存在した。そして案の定というべきか、リル達が最も探し求めていた建造物が待ち構えていた。
――トンネルの最奥に存在したのは巨大な転移台が存在し、今までにリル達が使用した転移台と比べると3倍近くの大きさを誇っていた。第四階層に訪れてから半日も経過しないうちにリル達は目的の物を発見し、レイナを抱えた状態でリルは転移台の台座に近付く。
「凄い……」
「何だ今のは……まさか、これが勇者の魔法なのか!?」
「いえ、違います。俺の世界に存在する武器を作り出しただけです。大迷宮の時にも使った……!?」
「「ウォンッ?」」
火竜が倒れた光景を見てリル達が茫然とする中、レイナは自分の攻撃が成功した事に安心したのも束の間、全身に異常な程の激痛が襲い掛かる。
最初は火竜に吹き飛ばされた時の痛みが遅れてやってきたのかと思ったが、この世界に訪れたばかりの頃、似たような感覚をレイナは既に何度か味わっている。すぐに肉体の異変の原因を察したレイナはその場に倒れ込む。
(まさか……成長痛!?どうして……!?)
全身に襲い掛かる痛みにレイナは声を上げる事もできず、身体が麻痺したように動けない。唐突に倒れたレイナを見てリル達は驚き、慌ててリルがレイナを抱き上げて状態を調べた。
「レイナ君!?どうしたんだ急に……」
「あ、がぁっ……」
「レイナ!!しっかりしろ、何処か怪我をしたのか!?ネコミン、すぐに回復魔法を……」
「これは……怪我じゃない、多分だけど成長痛に襲われている」
「成長痛!?いったいどうして……そうか、火竜と火竜の経験石を破壊した事でレイナ君の身体に膨大な経験値が入ったのか。それでレベルが急激に上昇して……」
「成長痛は回復魔法では治せない。だけど、いずれは肉体の成長も終われば痛みもなくなるはず。今はレイナの身体を安全に休ませる必要がある」
ネコミンはすぐにレイナの身体の異変に気付くと、自分の回復魔法では治せないことを悟る。現在のレイナの肉体はより強靭な身体へと作り変えられているため、下手に回復魔法を施せば逆に悪影響を及ぼす可能性があった。
もう既に半ば意識が飛んでいるレイナをリルは抱きかかえると、倒れた火竜に視線を向けて残念ながら素材の回収を諦めるしかなかった。今は一刻も早くレイナを安全な場所に連れていくため、彼女は指示を出す。
「一刻も早く、ここからレイナ君を連れ出す。まずは安全な場所を探すんだ、シロ、クロ!!周囲を警戒しろ!!」
「「ウォンッ!!」」
「シャウッ?」
命令を受けたシロとクロは周囲に気を配り、鼻を引くつかせながら近くに魔物が存在しないのかを確認を行う。一方でアカの方はレイナの異変に気付くと、彼の元に顔を近づけ、苦しそうな表情を見て首を傾げる。
「シャアアッ……」
「アカ!!今はお前に構っている暇はないんだ、下がっていろ!!」
「待て……レイナ君が何か伝えようとしている」
「レイナ?」
痛みで意識が朦朧としながらもレイナは顔を近づけてくるアカに対して何事かを囁き、その声を聞いたアカは頷くとリル達に顔を向けて鳴き声を上げた。
「シャアッ、シャアッ!!」
「な、何だ?」
「付いて来い、と言っている様に見える」
「私もそう思った。だが、何処へ連れて行く気だ?」
意識を失いかけているレイナに何らかの指示を受けたのか、アカはその場を移動するとリル達に付いて来いとばかりに鳴き声を上げる。その様子を見てレイナを抱えたリルは考えた末、ここはレイナを信じてアカの後に続く。
アカの先導の元、リル達は後を付いてくとやがてアカは洞穴の前まで辿り着く。最初にアカが餌場としていた洞穴とは別の場所に存在し、この中に入るようにアカは促す。
「シャウッ!!」
「ここは……洞穴なのか?」
「でも、何か変な感じがします……ここの洞窟だけ、妙に岩壁が滑らかというか」
「前に牙山でレイナが作った「とんねる」と似ている気がする」
火竜が案内した洞穴はまるで人工的に作り出されたトンネルと酷似しており、随分と奥まで続いていた。しかも天井の部分には光り輝く魔石が埋め込まれているらしく、中は意外と明るい。
天井に嵌め込まれた魔石を見てリルは「光石」と呼ばれる聖属性の魔石の一種だと確認し、この光石のお陰で洞穴内は常に明かりが灯されていた。火竜は洞穴の奥の方へと移動を行い、その様子を見てリル達も意を決して洞穴の中に入り込む。
「この洞穴……前にレイナが作り出した「とんねる」と本当によく似ていますね」
「ああ、もしかしたらレイナ君と同じ勇者が作り出した物かもしれない」
「という事は……」
「……もしかしたら私達が向かう先に目的地が存在するのかもしれないな」
リルは「トンネル」の奥に何が待ち構えているのかを薄々と感じ取ると、やがて彼女の予想を裏切らず、トンネルの奥には大きな空間が存在した。そして案の定というべきか、リル達が最も探し求めていた建造物が待ち構えていた。
――トンネルの最奥に存在したのは巨大な転移台が存在し、今までにリル達が使用した転移台と比べると3倍近くの大きさを誇っていた。第四階層に訪れてから半日も経過しないうちにリル達は目的の物を発見し、レイナを抱えた状態でリルは転移台の台座に近付く。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる