解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
314 / 367
獣人王国編

第312話 火竜との戦闘

しおりを挟む
「ギャギャッ!!ギャギャッ!!」
「にゃうっ……!?」
「くっ、なんて声を……!?」


奇声とも取れる鳴き声を放つ火竜の幼体に対してレイナとネコミンは耳を塞ぎ、シロも苦痛の表情を浮かべる。だが、問題なのは火竜が奇声を発した直後に出入口の方向に向けて駆け出し、そのまま逃げ出してしまう。

走り去っていく火竜の幼体を見てレイナ達は戸惑うが、その直後に洞穴に振動が走り、外の方角から凄まじい鳴き声が響く。それを聞いたレイナ達は先ほどの火竜の幼体の行動の意図を察する。


「まさか、今の鳴き声で親を呼んだ!?」
「レイナ、すぐに外に出る!!」
「ウォンッ!!」


シロは自分に乗り込めとばかりに体勢を低くすると、レイナとネコミンはその背中に乗り込み、シロは出入口に向けて駆け出す。その際に振動は徐々に強まっていき、洞穴の天井に亀裂が走った。


「まずい!?崩壊する!?」
「シロ、頑張って!!」
「ウォオオンッ!!」


全速力で洞穴の外へとシロは駆け出すが、その前に天井が崩壊して落盤が襲い掛かり、レイナ達の背後から無数の瓦礫が落ちていく。このままでは脱出する前に瓦礫に潰されると思ったレイナは鞄に手を伸ばすと、前方から落ちてきた巨大な瓦礫にデュランダルを振り抜く。


「砕けろっ!!」
「おおっ」
「ウォンッ!?」


前方の通路を塞ごうとした瓦礫をデュランダルの放つ衝撃波によって粉々に破壊すると、そのままシロは洞穴の外に飛び出して転倒してしまう。レイナとネコミンは地面に叩きつけられてしまうが、痛みに耐えながらも起き上がる。

シロの全力疾走のお陰でどうにか潰されずには済んだが、洞穴は崩壊してしまい、完全に瓦礫で塞がれてしまう。これではもう火属性の魔石の回収は出来なくなってしまったが、今はそんな事を構っている暇はなく、どうにか起き上がったレイナはネコミンに手を貸す。


「ネコミン、大丈夫?」
「ううっ……お尻を打った」
「シロ君も平気?」
「クゥンッ……」


ネコミンもシロも派手に転んだ割には大きな怪我はないらしく、どうにか起き上がるとレイナは周辺の様子を伺う。すると少し離れた場所に先ほど遭遇した火竜の幼体が存在し、こちらを警戒するように睨みつけていた。


「シャウッ……!!」
「グルルルッ……!!」
「火竜の子供……さっきの鳴き声、私達に対する威嚇というより、他の火竜に助けを求めていたように見えた」
「という事は……ここに火竜が来る?」


目の前に立つ火竜の幼体の行動を知ってレイナはここに留まるのは危険だと判断すると、すつに退散するためにシロに乗り込もうとした。しかし、時はすでに遅く、レイナ達の足元が大きな影に覆われ、上空から巨大な火竜が姿を現した。


「ガァアアアアッ!!」
「火竜……!?」
「まずい、こっちに来る!?」
「ウォンッ!?」


幼体の火竜の親が現れたのか、先ほどレイナ達が見かけた火竜と同一個体と思われる火竜が襲い掛かり、咄嗟にレイナ達はその場を飛んで回避する。結果としては上空から降りてきた火竜の鉤爪が地面をえぐり込み、派手に土煙が舞い上がる。

回避行動が間に合っていなければレイナ達は確実に死んでいたのは間違いなく、地面に倒れ込んだレイナはすぐに起き上がると、火竜と向かい合う。火竜は怒りの態度を浮かべながらレイナを睨みつけた。


「ガァアッ!!」
「くっ……やっぱり、こうなるのか!!」


火竜との戦闘を避けられないと判断したレイナは解析の能力を発動させ、即座に詳細画面を開いて文字変換の能力を発動しようとした。だが、火竜はそんなレイナに対して両腕を振りかざし、鉤爪を振り下ろす。

詳細画面を改竄する前に攻撃を仕掛けてきた火竜に対してレイナは咄嗟にデュランダルを構えると、強烈な衝撃に襲われて吹き飛ばされる。この世界に訪れてから一番の衝撃がレナの身体に襲い掛かり、吹き飛ばされる途中でレイナは殴りつけられたと気づいた。


(なんて力……!?)


今までにも相当な数の魔物と戦ったレイナだが、火竜の一撃はデュランダルで防いでも耐え切れず、そのまま10メートル近くも吹き飛ばされてしまう。気絶せずに済んだのは事前にレイナの元にシロが駆け込み、地面に叩きつけられる前にシロが彼の身体を受け止める。


「キャインッ!?」
「うわっ……!?」
「レイナ、シロ!!」


シロのお陰で地面への直撃は避けられたレイナだが、どちらも地面に倒れ込み、そのまま苦痛の表情を浮かべて横たわる。その姿を見てネコミンは駆け出すが、一方で火竜の方は自分の子供の元へ向かい、舌を出す。


「ガアッ……」
「シャアアッ」


子供の方は親が現れた事で嬉しそうに擦り寄り、その様子を見て火竜は子供の無事を確かめると安心したように子供を下がらせ、レイナの元へ顔を向ける。子供の安全を確認したとはいえ、自分の子供の「餌場」に現れた人間たちを見て激しい怒りを抱く。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

処理中です...