解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第305話 第四階層「密林」

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――光の柱に飲み込まれたレイナは前回の第三階層の時を考慮して事前に皆と手を繋ぎ、転移の際にはぐれないようにしっかりと握りしめていた。やがて視界の光が収まると、最初に視界に入ったのは「ジャングル」を想像させる光景だった。


「ここは……」
「……どうやら無事に転移したようだな。皆、ちゃんといるな?」
「大丈夫」
「クゥ~ンッ」
「ワフッ」
「問題ありません、全員います!!」


転移して早々にレイナ達は人数を確認し、全員がちゃんと同じ場所に転移した事を確かめると、今度は周囲の様子を伺う。密林という言葉に相応しく、視界の範囲内には大量の樹木が密集するように生えており、中には高層ビルほどの大きさの大木も存在した。

地球ではありえない大きさの樹木がいくつも存在し、更にはあちこちから獣の鳴き声を耳にする。レイナ達が存在する場所は周囲を樹木で覆いつくされ、第三階層ほどではないが蒸し暑い。


「くっ……暑いな、こんな事なら夏用の制服を用意するべきだったか」
「そうですね……水分補給を怠るとすぐに倒れそうです」
「熱い……こんな事ならクロミンも連れてくればよかった」
「ああ、クロミンの身体は冷たいからね……今からでも戻って連れてこようかな」
「そんな理由で戻れるか……シロとクロは平気か?」
「「ウォンッ!!」」


元々は野生の魔獣であるシロとクロは特に変化はなく、レイナ達だけが第四階層の蒸し暑さに苦しめられていた。全員が水筒を取り出して水分補給を行うと、リルは周囲を確認したうえでチイとレイナに告げる。


「二人とも地図製作の技能を使用して現在地を把握して先に進んでくれ」
「はい、分かりました」
「こういう時は地図製作が一番役立ちますよね」
「ああ、大迷宮を攻略の際には必要不可欠な技能だと言われているからね。二人がいてくれて心強いよ」


地図製作の技能を所持する人間が大迷宮の攻略に参加するだけで効率が大きく違い、道に迷う心配がないというだけで安心感を抱く。但し、大迷宮内に存在する以上は一瞬の油断も許されず、慎重に周囲を警戒しながら先に進む必要があった。

レイナとチイは地図製作を発動させ、探索を行う。似たような風景が続くので実は同じ場所を動き回っているのではないかという不安に襲われるが、二人の地図製作の技能のお陰で確実に先に進んでいた。


「ふうっ……大分歩いたと思うが、どの程度進んだか分かるか?」
「リル様……残念ながらまだ1キロも歩いていません」
「道が悪くて、あんまり進めていない感じです」
「そうか……この蒸し暑さの中、移動し続けるのはきついな」
「私も……そろそろ休みたくなってきた」
「ウォンッ……」


移動を開始してからそれなりの時間が経過したが、残念ながら予想以上の悪路にレイナ達の移動速度は遅く、だいたい30分も歩き続けて1キロ程度しか移動していなかった。


「……仕方がない、このままでは埒が明かなそうだ。少し、辺りの様子を上から見てくる」
「え?それはどういう……」
「とうっ!!」
「うわっ!?」


リルは勢いよく飛び上がると、人間離れした跳躍力で大樹の枝の上に乗りかかり、そのまま跳躍を続けて大樹を上っていく。その様子を見たレイナはリルが大樹の頂上から周囲の様子を伺おうとしている事に気づき、獣人族特融の身体能力の高さを改めて思い知らされる。

高く飛び上がる事だけならばレイナも「瞬動術」を駆使すれば真似出来るが、リルの場合は着地した次の瞬間には別の場所に飛び移っていた。レイナの瞬動術には出来ない芸当であり、一度飛び上がればレイナの場合は休憩を必要とする。しかし、リルの場合は一瞬の間を置いて楽々と別の枝に移動を行う。

彼女は大樹の頂上付近まで到達すると、周囲の様子を伺い、自分達の現在地の確認を行う。そしてリルは周囲を把握すると、驚くべき光景を目にした。


「あれは……火山か?」


位置的にはリル達の現在地から北の方角に密林に取り囲まれた大きな山が存在し、山頂から煙が噴き出していた。リルは事前の第四階層に関する資料で火竜が住み着いているという火山が存在する事を知っていたが、まさかその火山が密林の中央地帯に存在した事に驚く。


(あそこが火竜の住処か……迂闊に近づくのは止めた方がよさそうだが、もしかしたら……)


火竜が住み着いていると思われる火山を発見したリルは鋭い視線を向け、普通の人間ならば火竜が住み着いているような場所に近付くはずがない。しかし、彼女は考えは違った。


(今までに何百人、何千人の冒険者が挑んでも見つからなかった転移台……そして普通の人間ならば決して近づくことがない火竜の住処……となると、考えられる答えは一つか)


リルは第五階層に到達したというたった一人の冒険者の事を思い返し、その人間がどのような人物なのかは残念ながら伝わっていないが、彼女なりにその冒険者がどのような手段を用いて第五階層へ繋がる転移台を発見したのかを想像する。その結果、彼女が辿り着いたのは第四階層の最も危険地帯に赴くという常軌を逸した方法だった。
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