解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
292 / 367
獣人王国編

第290話 転移までの時間稼ぎ

しおりを挟む
「はぁああああっ!!」
『ゴォオオオッ!!』


転移台に迫りくるサンドゴーレムの大群に対してレイナはデュランダルを振りかざし、幾度も衝撃波を放つ。既に団員達にはレイナがデュランダルの所持者である事を話しており、仮に知らない人間がいたとしてもこの状況では隠し通す事が出来ない。

サンドゴーレムの肉体は砂で構成されているため、剣や槍で攻撃を仕掛けたところで通り抜けてしまう。サンドゴーレムの体内に存在する核を破壊すれば倒せるのだが、その核もビー玉程度の大きさしかなく、しかも常に身体の中を移動しているので狙うのも難しかった。

しかし、クロミンが吐き出した水を浴びたサンドゴーレムは肉体が泥のように固まり、その状態だと簡単に身体が崩れて再生は出来なくなるので他の団員達でも対処できた。彼等はクロミンの放水で固まったサンドゴーレムを突き飛ばす。


「おらぁっ!!隊長だけに無理をさせるな!!」
「このっ、このっ!!」
「ちぃっ、まだ発動しないのか!?」
「もうちょっと頑張ってください!!ほら、早く発動しろこのっ!!斜め45度チョップ!!」
「そ、それで発動するのでござるか!?」



転移台に向けてリリスはチョップを繰り出して早く発動するように念じるが、そんな古いテレビの直し方が通じるはずもなく、転移魔法が発動する様子はない。一応は魔法陣の輝きは増しているのでこのままいけば30秒程度で魔法が発動すると思われた時、広場に振動が走った。


「うわっ!?地震かっ!?」
「いや、この反応はまさか……!?」
「ブロックゴーレムでござる!!」


振動が走った事でオウソウは地震と勘違いしかけるが、すぐに気配感知が扱えるレイナとハンゾウは巨大な気配を感じ取り、振動の正体を見抜く。案の定というべきか街道の方角から振動音と共にブロックゴーレムが姿を現し、自分の縄張りの状況を見て怒りを現すように咆哮を放つ。


『ゴルァアアアアアッ!!』
「うおおっ!?」
「き、切れてる……絶対にやばいって!?」
「まずいですね、このままだと間に合いませんよ!!」


怒り心頭のブロックゴーレムは転移台に存在するレイナ達に目掛けて走り出し、その光景を確認した団員達は慌てて逃げ出そうとしたが、既に転移台の周囲はサンドゴーレムに取り囲まれていた。

地上へ逃げれば無数のサンドゴーレムの餌食となり、かといって転移台に留まればブロックゴーレムに狙われる。正に絶体絶命の状況の中、レイナだけはブロックゴーレムに視線を向け、迎撃の体勢を整える。


(解析!!)


接近してくるブロックゴーレムに対してレイナは「解析」を発動させ、視界に詳細画面を表示させる。よくよく考えたらブロックゴーレムのステータスをまともに確認するのはこれが初めてかもしれず、視界に表示された画面を見てレイナは対抗策を考えた。



――――ブロックゴーレム――――

種類:ブロックゴーレム(ゴーレム亜種)

性別:無し

状態:激怒

特徴:岩石や砂で構成されたロックゴーレムやサンドゴーレムとは異なり、煉瓦で構成されたゴーレム。人工的に作り出されたゴーレムであるため、通常のゴーレムよりも戦闘力が高く、煉瓦の強度も魔法金属のミスリルに匹敵する。体内には魔法金属の素材となる鉱石を保有している。

――――――――――――――――



視界に表示された画面を確認してレイナはブロックゴーレムの正体を見抜き、同時に指先を状態の項目へと移動させる。ブロックゴーレムが転移台に辿り着く前にレイナは文字を書き込む。


(これで終わりだっ!!)


ブロックゴーレムの状態の項目を「激怒」から「死亡」へと変換させた瞬間、画面が更新されて走り寄ってきたブロックゴーレムの巨体が唐突に停止した。


『ゴガァアアアアッ……!?』
「な、何だっ!?」
「どうしたんだ急に!?」


自分たちに迫ってきたブロックゴーレムが唐突に立ち止まった事に団員達は驚く中、レイナはブロックゴーレムを倒した事を確信する。だが、ブロックゴーレムは人面を想像させる目元の皺から光り輝いていた光が消え去ると、ゆっくりと前のめりに倒れ込む。


「え、ちょっと待て……おい!?」
「やばいでござる!!」
「このままだと押しつぶされますよ!?」
「きゅろろっ!?」
「ぷるるんっ(水を吐き出して萎れている)」


ブロックゴーレムは既に転移台の前にまで詰め寄り、このまま倒れ込めばレイナ達は押しつぶされてしまう。団員達は悲鳴を上げる中、レナはどうするべきか考えた時、ここでハンゾウの聖剣に気づいて彼女に話しかける。


「ハンちゃん!!」
「えっ!?レナ殿、急に何をっ……!?」


レナは反射的にハンゾウの腰に手を伸ばし、この状況で自分の身体に手を伸ばしてきたレナにハンゾウは戸惑うが、レナの狙いは彼女ではなく聖剣フラガラッハだった。今回の作戦は命がけのため、ハンゾウもフラガラッハを身に付けた状態で戦っていたのだが、それが功を奏す。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...