解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第284話 罠

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「話を聞く限りではブロックゴーレムは転移台の周辺を縄張りにしているようですからね、つまり私達に残された手段はブロックゴーレムを倒すか、あるいは出し抜いて転移台を使用して外の世界へ帰還するしか方法はありません」
「それはそうだが……そのブロックゴーレムというのはとんでもない化物なんだろう?いったいどうやって倒すんだ?何か手段はあるのか?」
「そこは大丈夫ですよ、無策で突っ込むほど愚かではありません」


そういいながらリリスは石板を置いて転移台を指差し、この転移台を突破しない限りはどうしようもない事を告げる。


「ブロックゴーレムを何とかしない限りは私達は元に戻る事は出来ません。ならば残された手段は戦うか、あるいはブロックゴーレムの気を引いて罠に嵌めるかです」
「罠に嵌める?」
「ブロックゴーレムは獲物を発見すると執拗に追いかけてくる、それは間違いないですね」
「確かでござる。拙者が見つかったときもしつこく追い掛け回されて死ぬかと思ったでござる」


ハンゾウが転移台に接近してブロックゴーレムに近付いた際、彼女はブロックゴーレムに追い掛け回されて死にかけたという。レイナの時もブロックゴーレムに見つかったときは急いで身を隠す事で難を逃れたが、しばらくの間はブロックゴーレムは広場の周囲の建物を破壊してレイナを探していた。

この事から考えるにブロックゴーレムは自分の縄張りを犯した存在は決して許さず、執拗に追い掛け回す性格の魔物だと考えられた。ならばそれを逆に利用してブロックゴーレムを広場から別の場所に引き寄せる「囮役」を用意すれば他の者は転移台を使用して外に避難できる可能性があった。


「ここは班を二つに分けましょう。まずはブロックゴーレムを引き寄せる囮班、そしてブロックゴーレムに罠を仕掛ける罠班の二つです」
「わ、罠?」
「作戦としてはこうです。事前にこの街中で罠を仕掛け、ブロックゴーレムを足止めする方法を用意します。そして囮班がブロックゴーレムを引き寄せ、頃合いを見計らって罠班が罠を作動させる。そしてブロックゴーレムが罠に引っかかって足止めを食らっている間に私達は転移台へ移動して脱出……正に完璧な作戦です!!」
「な、なるほど……」
「ちょ、ちょっと待ってください!!それ、いくらなんでも無理があるんじゃ……」
「あんな化物をどうやって足止めする罠を作るんですか!?」


リリスの説明にオウソウは納得しかけるが、他の団員達は慌てて彼女に抗議を行う。相手は体長が30メートルを超える巨体、しかも移動速度も遅くはなく、体格差を考えてもいくら身体能力が高い獣人族で構成されている部隊と言えども確実に逃げ切れる保証はない。


「言っておきますけど、これ以外に方法はありません。もう私達がこの第三階層へ訪れてから相当な時間が経過しています。もしもこのまま外の人たちが私達の救助のために第三階層へ転移したらさらに面倒な事態に陥ります。そうなる前に早く脱出する必要があるんですよ」
「でも、罠といっても具体的にどんな罠を……」
「相手は30メートルを超える化物ですからね、落とし穴を作って待ち構えるわけにもいきませんし……仕方ありませんね、こうなったらあれを使いましょう」
「あれ?」


鞄を取り出したリリスは残念そうな表情を浮かべながらも中から大量の黒色の魔石を取り出し、それをレイナ達に見せつける。

いったい彼女が何を取り出したのかと全員が驚く中、いち早くハンゾウが魔石の正体を見抜いて驚いた声を上げた。


「むっ……これは闇属性の魔石でござるか!?しかもこんな大量に……」
「そうです、私達が避難した古城で発見しました。恐らくは死霊魔術師が保管していた代物だと思われますが、これを使ってブロックゴーレムを嵌めましょう」
「こ、こんな魔石でどうするつもりだ?」
「きゅろっ……これ、あんまり触りたくない」
「ぷるぷるっ?」


大量の闇属性の魔石を取り出したリリスにレイナ達は戸惑うが、彼女も考えも無しに魔石を取り出したわけではなく、闇属性の魔石の特徴を伝える。


「闇属性の魔石は破壊した場合、黒霧のような魔力を放出します。この魔力は触れても問題はないんですが、粘着質のある煙のようにまとわりついて簡単には引き剥がせません。しかもこれを浴びた生物は五感の感覚が狂い、まともに動けなくなります」
「分かったでござる!!リリス殿はこの闇属性の魔石を破壊する事で発生する黒霧をブロックゴーレムに放ち、相手が怯んでいる隙に逃げ出すのでござるな!?」
「流石はリリス……こういう悪知恵だったら誰も勝てない。そこに痺れる、憧れ……はしない」
「やかましいですよっ」


ハンゾウがリリスの作戦を察するとネコミンも感心するが、他の団員達は本当にうまくいくのかと不安を抱く。
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