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獣人王国編
第279話 王国の資料の謎
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「やっぱり、この階層は碌な素材が取れませんね。大昔の人々がこの大迷宮を放棄したのはこの第三階層のせいかもしれません」
「え、どうして?」
「いいですか?通常の大迷宮というのは階層を重ねるごとに敵や強くなって罠なども仕掛けられますが、その分に得られる素材の質も高くなります。なのにこの第三階層ときたら当たらわれるのは厄介な砂鮫やらサンドゴーレムやらトレントばかり……どの魔物の素材も碌なもんじゃありません」
リリス曰く、第三階層に現れる魔物たちは危険度の割には回収が行える素材の方は碌な物はなく、実際にこれまでの戦闘でレイナ達は殆ど魔物の素材を得られていない。
特に砂鮫やサンドゴーレムのような砂や石で構成された魔物の場合、素材として回収できる物がないのに倒さなければ延々と追いかけ続ける厄介な敵だった。
「第一階層や第二階層と比べてもここは環境も最悪だし、現れる魔物も強いわりには倒しても得られる素材は殆ど無し……恐らく、この階層で殆どの冒険者が心が折れてしまったんでしょうね」
「でも、第四階層に辿り着いた人がいるんでしょ?なら、その第四階層に辿り着いた人から転移台の合言葉を聞いてこの第三階層を無視して突破した人もいるんじゃないの?」
「理屈的にはそうなんですけど……きっと、第四階層を突破した冒険者は他の人間には合言葉を伝えるような真似はしませんよ」
「どうして?」
レイナの言葉にリリスは否定し、第三階層を突破した冒険者が他の冒険者に合言葉を教える理由がない事を告げる。
「いいですかレイナさん、冒険者という職業は普通の組織とは違うんです。基本的には冒険者というのは競争社会で階級を上げるために他の冒険者を出し抜こうとする輩が非常に多いんですよ。だから仲間意識というのは意外と低いんです」
「そ、そうなんだ?」
「特に昔の時代は今よりも冒険者同士の競争は盛んだったようですからね。レイナさんも冷静になって考えてください、自分たちが苦労して攻略した階層を後から来た人間が、次の階層の合言葉を教えろと言われたら素直に教えますか?自分たちは苦労して突破した階層を後から来た人間が突破せずに自分たちと同じ階層に挑む、正直に言わせてもらえば凄くむかつくでしょう?」
「うん、まあ……イラっと来るね」
「だから冒険者は無暗に次の階層の転移に必要な合言葉を他の冒険者に教えるような真似はしないです。まあ、今回の私達は別に冒険者でもないので協力して動いてますが、普通の冒険者ならこんな真似はしないと思ってください」
「なるほど、よく分かったよ」
リリスの言葉にレイナは納得し、確かに競争社会が激しいのならばわざわざ敵に塩を送るような真似をする冒険者がいるはずがない。ここで話を聞いていたオウソウは今まで抱いていた疑問を尋ねる。
「おい、ちょっと聞きたいことがあるんだが……そもそもどうして俺達はここまで律儀に階層を攻略しているんだ?」
「どういう意味ですか?」
「出発前、ケモノ王国に保管されていた大迷宮に関わる資料の中に各階層の合言葉は記されていなかったのか?合言葉さえ分かっていれば外の転移台から一気に別の階層へ転移できるだろう?合言葉ぐらい残ってもないなかったのか?」
「なるほど、確かにおかしな話だと思いますよね」
オウソウの疑問は最もであり、ケモノ王国が所有する大迷宮に関する資料の中に各階層の合言葉ぐらいは記されていてもおかしくはないと思われたが、リリスによるとケモノ王国の資料には記されていなかったという。
「私が確認した限りでは大迷宮に関わる資料の中で何故か合言葉に関する情報は一切記されていませんでした。なにしろ100年以上も放置された大迷宮ですからね、それでも私の見立てでは不自然に資料が残されていないと思いましたけど」
「え、どういう意味?」
「書庫で保管されていたはずの大迷宮の資料なんですが、私が調べた限りでは何者かが故意に資料の一部を抜き取っているように感じました。そして抜き取られた資料には大迷宮の転移に必要な合言葉が含まれた資料もあるかもしれません……つまり、ケモノ王国内で保管されていた資料は何者かの手によって改竄されている可能性があります」
「馬鹿なっ……いったい誰がそんな真似を?」
「現時点では分かりません。ですけど、そもそもケモノ王国が大迷宮を放棄したという点も気になります。確かにこの巨塔の大迷宮は非常に危険な場所ですが、そもそもここは冒険者が自ら挑まなければ危険も何も起きない場所です。それに大迷宮という性質上、自分の実力を見誤らなければ良質な素材の入手には困らない場所のはず……なのに誰も大迷宮に近付かなくなり、何時しか危険区域として扱われるようになった……何だかおかしくありません」
「確かに言われてみればそうだけど……」
「それにこの階層に存在した剣の魔王の配下を名乗る死霊魔術師の件も気になります。この巨塔の大迷宮、もしかしたら私達の想像以上に大きな秘密が隠されているかもしれません」
リリスの言葉にレイナ達は冷や汗を流し、彼女の推測が否定できなかった。だが、今は脱出に集中する必要があり、これ以上の考察は中止してレイナ達は先を急ぐ。
「え、どうして?」
「いいですか?通常の大迷宮というのは階層を重ねるごとに敵や強くなって罠なども仕掛けられますが、その分に得られる素材の質も高くなります。なのにこの第三階層ときたら当たらわれるのは厄介な砂鮫やらサンドゴーレムやらトレントばかり……どの魔物の素材も碌なもんじゃありません」
リリス曰く、第三階層に現れる魔物たちは危険度の割には回収が行える素材の方は碌な物はなく、実際にこれまでの戦闘でレイナ達は殆ど魔物の素材を得られていない。
特に砂鮫やサンドゴーレムのような砂や石で構成された魔物の場合、素材として回収できる物がないのに倒さなければ延々と追いかけ続ける厄介な敵だった。
「第一階層や第二階層と比べてもここは環境も最悪だし、現れる魔物も強いわりには倒しても得られる素材は殆ど無し……恐らく、この階層で殆どの冒険者が心が折れてしまったんでしょうね」
「でも、第四階層に辿り着いた人がいるんでしょ?なら、その第四階層に辿り着いた人から転移台の合言葉を聞いてこの第三階層を無視して突破した人もいるんじゃないの?」
「理屈的にはそうなんですけど……きっと、第四階層を突破した冒険者は他の人間には合言葉を伝えるような真似はしませんよ」
「どうして?」
レイナの言葉にリリスは否定し、第三階層を突破した冒険者が他の冒険者に合言葉を教える理由がない事を告げる。
「いいですかレイナさん、冒険者という職業は普通の組織とは違うんです。基本的には冒険者というのは競争社会で階級を上げるために他の冒険者を出し抜こうとする輩が非常に多いんですよ。だから仲間意識というのは意外と低いんです」
「そ、そうなんだ?」
「特に昔の時代は今よりも冒険者同士の競争は盛んだったようですからね。レイナさんも冷静になって考えてください、自分たちが苦労して攻略した階層を後から来た人間が、次の階層の合言葉を教えろと言われたら素直に教えますか?自分たちは苦労して突破した階層を後から来た人間が突破せずに自分たちと同じ階層に挑む、正直に言わせてもらえば凄くむかつくでしょう?」
「うん、まあ……イラっと来るね」
「だから冒険者は無暗に次の階層の転移に必要な合言葉を他の冒険者に教えるような真似はしないです。まあ、今回の私達は別に冒険者でもないので協力して動いてますが、普通の冒険者ならこんな真似はしないと思ってください」
「なるほど、よく分かったよ」
リリスの言葉にレイナは納得し、確かに競争社会が激しいのならばわざわざ敵に塩を送るような真似をする冒険者がいるはずがない。ここで話を聞いていたオウソウは今まで抱いていた疑問を尋ねる。
「おい、ちょっと聞きたいことがあるんだが……そもそもどうして俺達はここまで律儀に階層を攻略しているんだ?」
「どういう意味ですか?」
「出発前、ケモノ王国に保管されていた大迷宮に関わる資料の中に各階層の合言葉は記されていなかったのか?合言葉さえ分かっていれば外の転移台から一気に別の階層へ転移できるだろう?合言葉ぐらい残ってもないなかったのか?」
「なるほど、確かにおかしな話だと思いますよね」
オウソウの疑問は最もであり、ケモノ王国が所有する大迷宮に関する資料の中に各階層の合言葉ぐらいは記されていてもおかしくはないと思われたが、リリスによるとケモノ王国の資料には記されていなかったという。
「私が確認した限りでは大迷宮に関わる資料の中で何故か合言葉に関する情報は一切記されていませんでした。なにしろ100年以上も放置された大迷宮ですからね、それでも私の見立てでは不自然に資料が残されていないと思いましたけど」
「え、どういう意味?」
「書庫で保管されていたはずの大迷宮の資料なんですが、私が調べた限りでは何者かが故意に資料の一部を抜き取っているように感じました。そして抜き取られた資料には大迷宮の転移に必要な合言葉が含まれた資料もあるかもしれません……つまり、ケモノ王国内で保管されていた資料は何者かの手によって改竄されている可能性があります」
「馬鹿なっ……いったい誰がそんな真似を?」
「現時点では分かりません。ですけど、そもそもケモノ王国が大迷宮を放棄したという点も気になります。確かにこの巨塔の大迷宮は非常に危険な場所ですが、そもそもここは冒険者が自ら挑まなければ危険も何も起きない場所です。それに大迷宮という性質上、自分の実力を見誤らなければ良質な素材の入手には困らない場所のはず……なのに誰も大迷宮に近付かなくなり、何時しか危険区域として扱われるようになった……何だかおかしくありません」
「確かに言われてみればそうだけど……」
「それにこの階層に存在した剣の魔王の配下を名乗る死霊魔術師の件も気になります。この巨塔の大迷宮、もしかしたら私達の想像以上に大きな秘密が隠されているかもしれません」
リリスの言葉にレイナ達は冷や汗を流し、彼女の推測が否定できなかった。だが、今は脱出に集中する必要があり、これ以上の考察は中止してレイナ達は先を急ぐ。
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