解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第266話 捜索範囲の拡大

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「問題があるとしたら転移台を先に見つけて他の団員が先に帰還していた場合、きっと団長は私達の救助に動こうとするでしょう。だけど、この第三階層へ飛ぼされた時の事を思い出してください」
「あっ……俺達、じゃなくて私達は別々に転移してたよね」
「そういう事です。この階層では何故か全員一緒ではなく、一人一人が別々に飛ばされてしまう仕組みなんです。だから外の人間が私達の救助を行おうとした場合、私達のように別々の場所に転移してしまう可能性があります」
「こんな危険な場所に別々に飛ばされるなんて……」
「そんな事になったら救助に訪れた奴が危険に晒されるじゃないですか!?」


身を以て自分たちが危険な目に遭っただけに団員達は救助に赴くであろう他の団員の身を案じてしまう。そこでリリスはある提案を行った。


「このまま残っていたとしても他の団員と合流できる保証はありません。ですが、大人数で砂漠を移動して転移台を探すとしても危険があるので、二手に分かれてこの古城に残る班と、転移台と他の団員を捜索する班に分かれましょう」
「待て、それだと捜索する団員の方が負荷が大きいのではないか?」
「待機組の方が安全とは限りませよ。誰かが迎えに来るまではここに残らなければなりませんからね、捜索班が転移台を見つけて外へ抜け出さない限り、古城に残る待機班は待ちぼうけを食らいますからね」
『…………』


リリスの言葉に団員達は黙り込み、誰も彼女の案に反対する事は出来なかった。正直に言えば反対しようにも彼女の考えた作戦以外に方法は見当たらず、ここにいつまでも残っていても救助が訪れるという保証はない。それならば自分たちで転移台を見つけ出し、外への脱出路を確保するのが良いのではないかと考えてしまう。


「あ、あの……捜索班が転移台を発見した場合、そのまま外へ抜け出すんですか?」
「時と場合によっては何人かは先に地上へと送り返します。但し、全員が地上へ転移するわけではありません。待機班の迎えに行くために誰かが残らなければなりません」
「なら、俺が……いや、私が残るよ。地図製作の技能もあるから道に迷う事はないし、それにここの階層の魔物と戦えるのは私だけだろうしね」
「た、隊長……!!」
「俺たちのために……」


レイナの発言に団員達は感動の涙を流し、自分達のために危険を犯してこの階層に残ることを告げたレイナに彼等は更に信頼を寄せる。一方でレイナの方は一人称に気を付け、油断するとすぐに男言葉に戻りそうになる。


(ちょっとレイナさん、ちゃんと女らしく振舞ってくださいよ)
(ごめん……気が抜けるとつい俺と言いそうになる)
(それならいっその事、俺っ娘で通しますか?団長だって自分の事を時々「僕」とか言ってますし、そう説明すれば案外誰も違和感を抱きませんよ)
(え、そんなのでいいの?)


一人称に関してはレイナは女性時の時は「私」と使うように気を付けていたが、いちいち癖で「俺」と使いそうになってしまう。その事をリリスに注意されたレイナは気を付ける事を誓うと、不意にサンが耳元を動かす。


「きゅろっ!?」
「わっ!?どうしたのサン?」
「ぷるんっ?」
「……何か聞こえる、外の方から!!」
「外って……通路の事ですか?誰かここへやってきたんでしょうか?」
「違う、足音じゃない!!変な音がする!!」


サンの言葉にレナ達は疑問を抱き、彼女が聞こえた音の正体を確かめるために全員が部屋を抜け出す。特に通路の方に異変はなかったが、建物が僅かに振動している事が判明し、不思議に思ったレイナ達は出入口代わりに利用している窓へ向かう。

階段を上がったレイナ達は古城に入り込むために利用した窓を発見した瞬間、外の光景を見て驚愕の表情を浮かべた。いつの間にか外では砂嵐が発生したかの様に大量の砂煙が舞い上がり、派手に大量の砂が窓を通して建物の中に入り込む。


「うわっぷっ!?」
「ちょ、まずいですよこれは……避難してください!!」
「ぷるぷるっ!?」


サンが聞こえた音というのはどうやら地上で発生した砂嵐の音らしく、レイナ達は砂まみれになりながらも階段を下りて安全な通路へと避難した。服にこびり付いた砂を振り払いながらレイナ達は階段の様子を伺い、この状態では外へ出向くのは危険すぎた。


「……どうやら砂嵐が止むまではここからは出られないようですね。困りました」
「な、何で建物の中で砂嵐なんかが……」
「今更それを気にするのか?ここは大迷宮だぞ……俺達の常識は通じん」
「きゅろろっ……凄い風だった」


古城の外は激しい砂嵐によって外へ出られる状況ではなくなり、この様子では他の団員が生き残っていたとしても古城の中に辿り着けるのも難しいだろう。レイナ達もしばらくの間は古城から抜け出す事も出来ず、仕方なく砂嵐が止むまでの間は待機するしかなかった――
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