268 / 367
獣人王国編
第266話 捜索範囲の拡大
しおりを挟む
「問題があるとしたら転移台を先に見つけて他の団員が先に帰還していた場合、きっと団長は私達の救助に動こうとするでしょう。だけど、この第三階層へ飛ぼされた時の事を思い出してください」
「あっ……俺達、じゃなくて私達は別々に転移してたよね」
「そういう事です。この階層では何故か全員一緒ではなく、一人一人が別々に飛ばされてしまう仕組みなんです。だから外の人間が私達の救助を行おうとした場合、私達のように別々の場所に転移してしまう可能性があります」
「こんな危険な場所に別々に飛ばされるなんて……」
「そんな事になったら救助に訪れた奴が危険に晒されるじゃないですか!?」
身を以て自分たちが危険な目に遭っただけに団員達は救助に赴くであろう他の団員の身を案じてしまう。そこでリリスはある提案を行った。
「このまま残っていたとしても他の団員と合流できる保証はありません。ですが、大人数で砂漠を移動して転移台を探すとしても危険があるので、二手に分かれてこの古城に残る班と、転移台と他の団員を捜索する班に分かれましょう」
「待て、それだと捜索する団員の方が負荷が大きいのではないか?」
「待機組の方が安全とは限りませよ。誰かが迎えに来るまではここに残らなければなりませんからね、捜索班が転移台を見つけて外へ抜け出さない限り、古城に残る待機班は待ちぼうけを食らいますからね」
『…………』
リリスの言葉に団員達は黙り込み、誰も彼女の案に反対する事は出来なかった。正直に言えば反対しようにも彼女の考えた作戦以外に方法は見当たらず、ここにいつまでも残っていても救助が訪れるという保証はない。それならば自分たちで転移台を見つけ出し、外への脱出路を確保するのが良いのではないかと考えてしまう。
「あ、あの……捜索班が転移台を発見した場合、そのまま外へ抜け出すんですか?」
「時と場合によっては何人かは先に地上へと送り返します。但し、全員が地上へ転移するわけではありません。待機班の迎えに行くために誰かが残らなければなりません」
「なら、俺が……いや、私が残るよ。地図製作の技能もあるから道に迷う事はないし、それにここの階層の魔物と戦えるのは私だけだろうしね」
「た、隊長……!!」
「俺たちのために……」
レイナの発言に団員達は感動の涙を流し、自分達のために危険を犯してこの階層に残ることを告げたレイナに彼等は更に信頼を寄せる。一方でレイナの方は一人称に気を付け、油断するとすぐに男言葉に戻りそうになる。
(ちょっとレイナさん、ちゃんと女らしく振舞ってくださいよ)
(ごめん……気が抜けるとつい俺と言いそうになる)
(それならいっその事、俺っ娘で通しますか?団長だって自分の事を時々「僕」とか言ってますし、そう説明すれば案外誰も違和感を抱きませんよ)
(え、そんなのでいいの?)
一人称に関してはレイナは女性時の時は「私」と使うように気を付けていたが、いちいち癖で「俺」と使いそうになってしまう。その事をリリスに注意されたレイナは気を付ける事を誓うと、不意にサンが耳元を動かす。
「きゅろっ!?」
「わっ!?どうしたのサン?」
「ぷるんっ?」
「……何か聞こえる、外の方から!!」
「外って……通路の事ですか?誰かここへやってきたんでしょうか?」
「違う、足音じゃない!!変な音がする!!」
サンの言葉にレナ達は疑問を抱き、彼女が聞こえた音の正体を確かめるために全員が部屋を抜け出す。特に通路の方に異変はなかったが、建物が僅かに振動している事が判明し、不思議に思ったレイナ達は出入口代わりに利用している窓へ向かう。
階段を上がったレイナ達は古城に入り込むために利用した窓を発見した瞬間、外の光景を見て驚愕の表情を浮かべた。いつの間にか外では砂嵐が発生したかの様に大量の砂煙が舞い上がり、派手に大量の砂が窓を通して建物の中に入り込む。
「うわっぷっ!?」
「ちょ、まずいですよこれは……避難してください!!」
「ぷるぷるっ!?」
サンが聞こえた音というのはどうやら地上で発生した砂嵐の音らしく、レイナ達は砂まみれになりながらも階段を下りて安全な通路へと避難した。服にこびり付いた砂を振り払いながらレイナ達は階段の様子を伺い、この状態では外へ出向くのは危険すぎた。
「……どうやら砂嵐が止むまではここからは出られないようですね。困りました」
「な、何で建物の中で砂嵐なんかが……」
「今更それを気にするのか?ここは大迷宮だぞ……俺達の常識は通じん」
「きゅろろっ……凄い風だった」
古城の外は激しい砂嵐によって外へ出られる状況ではなくなり、この様子では他の団員が生き残っていたとしても古城の中に辿り着けるのも難しいだろう。レイナ達もしばらくの間は古城から抜け出す事も出来ず、仕方なく砂嵐が止むまでの間は待機するしかなかった――
「あっ……俺達、じゃなくて私達は別々に転移してたよね」
「そういう事です。この階層では何故か全員一緒ではなく、一人一人が別々に飛ばされてしまう仕組みなんです。だから外の人間が私達の救助を行おうとした場合、私達のように別々の場所に転移してしまう可能性があります」
「こんな危険な場所に別々に飛ばされるなんて……」
「そんな事になったら救助に訪れた奴が危険に晒されるじゃないですか!?」
身を以て自分たちが危険な目に遭っただけに団員達は救助に赴くであろう他の団員の身を案じてしまう。そこでリリスはある提案を行った。
「このまま残っていたとしても他の団員と合流できる保証はありません。ですが、大人数で砂漠を移動して転移台を探すとしても危険があるので、二手に分かれてこの古城に残る班と、転移台と他の団員を捜索する班に分かれましょう」
「待て、それだと捜索する団員の方が負荷が大きいのではないか?」
「待機組の方が安全とは限りませよ。誰かが迎えに来るまではここに残らなければなりませんからね、捜索班が転移台を見つけて外へ抜け出さない限り、古城に残る待機班は待ちぼうけを食らいますからね」
『…………』
リリスの言葉に団員達は黙り込み、誰も彼女の案に反対する事は出来なかった。正直に言えば反対しようにも彼女の考えた作戦以外に方法は見当たらず、ここにいつまでも残っていても救助が訪れるという保証はない。それならば自分たちで転移台を見つけ出し、外への脱出路を確保するのが良いのではないかと考えてしまう。
「あ、あの……捜索班が転移台を発見した場合、そのまま外へ抜け出すんですか?」
「時と場合によっては何人かは先に地上へと送り返します。但し、全員が地上へ転移するわけではありません。待機班の迎えに行くために誰かが残らなければなりません」
「なら、俺が……いや、私が残るよ。地図製作の技能もあるから道に迷う事はないし、それにここの階層の魔物と戦えるのは私だけだろうしね」
「た、隊長……!!」
「俺たちのために……」
レイナの発言に団員達は感動の涙を流し、自分達のために危険を犯してこの階層に残ることを告げたレイナに彼等は更に信頼を寄せる。一方でレイナの方は一人称に気を付け、油断するとすぐに男言葉に戻りそうになる。
(ちょっとレイナさん、ちゃんと女らしく振舞ってくださいよ)
(ごめん……気が抜けるとつい俺と言いそうになる)
(それならいっその事、俺っ娘で通しますか?団長だって自分の事を時々「僕」とか言ってますし、そう説明すれば案外誰も違和感を抱きませんよ)
(え、そんなのでいいの?)
一人称に関してはレイナは女性時の時は「私」と使うように気を付けていたが、いちいち癖で「俺」と使いそうになってしまう。その事をリリスに注意されたレイナは気を付ける事を誓うと、不意にサンが耳元を動かす。
「きゅろっ!?」
「わっ!?どうしたのサン?」
「ぷるんっ?」
「……何か聞こえる、外の方から!!」
「外って……通路の事ですか?誰かここへやってきたんでしょうか?」
「違う、足音じゃない!!変な音がする!!」
サンの言葉にレナ達は疑問を抱き、彼女が聞こえた音の正体を確かめるために全員が部屋を抜け出す。特に通路の方に異変はなかったが、建物が僅かに振動している事が判明し、不思議に思ったレイナ達は出入口代わりに利用している窓へ向かう。
階段を上がったレイナ達は古城に入り込むために利用した窓を発見した瞬間、外の光景を見て驚愕の表情を浮かべた。いつの間にか外では砂嵐が発生したかの様に大量の砂煙が舞い上がり、派手に大量の砂が窓を通して建物の中に入り込む。
「うわっぷっ!?」
「ちょ、まずいですよこれは……避難してください!!」
「ぷるぷるっ!?」
サンが聞こえた音というのはどうやら地上で発生した砂嵐の音らしく、レイナ達は砂まみれになりながらも階段を下りて安全な通路へと避難した。服にこびり付いた砂を振り払いながらレイナ達は階段の様子を伺い、この状態では外へ出向くのは危険すぎた。
「……どうやら砂嵐が止むまではここからは出られないようですね。困りました」
「な、何で建物の中で砂嵐なんかが……」
「今更それを気にするのか?ここは大迷宮だぞ……俺達の常識は通じん」
「きゅろろっ……凄い風だった」
古城の外は激しい砂嵐によって外へ出られる状況ではなくなり、この様子では他の団員が生き残っていたとしても古城の中に辿り着けるのも難しいだろう。レイナ達もしばらくの間は古城から抜け出す事も出来ず、仕方なく砂嵐が止むまでの間は待機するしかなかった――
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる