解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第265話 引くべきか進むべきか

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「や、やった……本当にこんな化物を、俺達で倒したのか……?」
「砂鮫なんて初めて戦ったのに……」
「やりましたよ隊長!!どうでしたか!?」
「あ、うん……皆、よく頑張ったね」


砂鮫を倒した事に団員達は歓喜しながらレイナに振り返り、彼女に砂鮫を倒した事を報告する。その様子を見てレイナは素直に褒めると団員達は誇らしげな表情を浮かべるが、一方でオウソウの方は手元に握りしめた砂鮫の核の残骸を投げ捨てて呆れた表情を浮かべる。


「馬鹿どもが……砂鮫を倒しただと?調子に乗るな、俺達がこいつらを勝てたのは隊長が最初に砂鮫を砂中から引きずり出したお陰だろうが!!」
「うっ!?い、言われてみれば……」
「そ、そうだな……」
「ふん、自分の力を誇示する前にまずは隊長に礼を言うのが先だろうが……」
「いや、まあ確かにその通りなんですけど……貴方が言うと凄い違和感がありますね」


オウソウの態度に団員達だけではなく、リリスでさえも戸惑う。最初の頃の態度はどうしたのか、大迷宮に入ってからオウソウは上司であるレイナの顔を立てるようになり、どうやら本当に彼女の事を認めたらしい。幾度も命を救われ、更に力を見せつけられた事でつまらないプライドが打ち砕かれ、真にレイナの事を尊敬し始めているのかもしれない。

レイナの方もオウソウの態度の変化に違和感を覚えながらも、彼のお陰で他の団員達も自分の評価を改めているのは間違いなく、ここは彼等の「隊長」らしく振舞う。


「皆もよく頑張ったね、これからも頼りにしてるよ」
「は、はい!!」
「頼りにしてください!!」
「隊長のためなら頑張ります!!」
「ふっ……」


容姿で言えば人間とはいえ、かなり優れているレイナに微笑まれれば男性の団員は頬を赤くして喜び、オウソウも満更ではないのか鼻を鳴らして顔を逸らす。その様子を見てリリスは経緯はどうであれ、団員達がレイナの事を認め始めている事を悟る。


(最初はどうなるかと思いましたけど、この調子ならレイナさんも馴染めそうですね。団長もこうなる事を予測してたんでしょうかね……)


紆余曲折はあったが一部の団員に隊長として認められたレイナを見てリリスは安心する一方、未だに合流していない他の二人組の事を思い出す。砂鮫を倒した事は喜ばしいが、今は勝利を喜ぶよりも先に他の団員の捜索を行わなければならなかった。


「はいはい、それじゃあ探索を再開しますよ。他の団員を探し出さない限り、先には進めないんですからね。ほら、出発!!」
「きゅろろっ……この魚、硬くてまずい」
「あ、こら!!何を食べようとしているのサン!?ほら、ぺっ、しなさい!!ぺっ!!」


サンが倒した砂鮫に喰らいつくというアクシデントは起きたが、レイナ達は無事に砂鮫を討伐して探索を再開した。しかし、その後は古城の周辺を1時間ほどは捜索したが、誰一人として団員の姿を発見できず、結局は引き返す事になった――




――最初に古城に訪れてから2時間近くの時が流れ、古城の一室に立てこもったレイナ達は食事を取りながらも作戦会議を行う。未だに古城に集まった団員の数は捜索隊の半数程度しか存在せず、残りの半数は未だに行方不明の状態であった。


「これは由々しき事態です、既に第三階層に入ってから2時間近くも経過しているの他の団員は一行にここへ集まる様子がありません。この事態を皆さんはどう思いますか?」
「どう思うって……」
「ぶっちゃければこのまま探索を続けるか、あるいは引き返すかを選ぶ必要があります」
「引き返す!?」


リリスの言葉にレイナは驚くが、他の者たちも動揺した表情を浮かべる。しかし、リリスは「副隊長」として冷静に判断した上での発言である。


「あんまりこういう事は言いたくありませんが、この第三階層はあまりにも過酷な環境です。私たちの様に運良くこのような場所に辿り着けたのならともかく、外の砂漠で今もまだ他の団員が生き延びている可能性は限りなく低いでしょう」
「そんな……」
「落ち着いてください、別に私だって意地悪でいっているわけじゃないんです。だけど、冷静になって考えてみてください。こんな魔物が現れる砂漠の中を2時間近くも彷徨って生き延びられていると思いますか?」
『…………』


レイナ達はリリスの言葉に言い返すことはできず、確かに碌な食糧と水も持ち込めず、しかも砂鮫のような危険な魔物が生息している砂漠の中を他の団員たちが無事でいられるとは思えない。だが、悲観するにはまだ早く、リリスは彼等が生き残っている可能性もある事を示す。


「ですが、私たち以外の団員が必ずしも死んだとは限りません。私達よりも先に転移台を発見し、既に外に避難している可能性もあります」
「そ、そうだな!!」
「きっと皆、無事ですよ!!」
「ですけど……その場合だと他の団員達は私達との合流を諦めて避難した事になります。そう考えるといつまでもここに残っていても他の団員と合流も出来ず、待ちぼうけを食らいますね」
『…………』


リリスの言葉に希望を持ちかけた団員たちだが、既に他の団員が脱出しているとなると自分たちはここに置いてけぼりにされた可能性もある事を知り、意気消沈してしまう。
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