解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第248話 第三階層へ

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「おい、あの二人また一緒にいるぞ」
「いいよな、勇者様はあんな可愛い女の子に囲まれて……」
「ちっ……勇者様のお気に入りだからって偉そうにしやがって」
「でも、あの二人なんか似てないか?もしかして兄妹だったりして……なわけないか」


変装したハンゾウと話しているだけでレイナは侮蔑や嫉妬の視線を向けられ、肩身の狭い思いを抱く。勇者レアとして行動しているときは先日の件もあってやっと他の者たちからも信頼を得てきたが、この姿の状態では未だにリル達以外の者には冷たくあしらわれる。


「雑音など気にするな、お前はいつも通りに動けばいい。そうすれば奴らもお前の事を認めてくれるさ」
「チイ……ありがとう」
「でも、そういうチイも最近までは割とレイナに厳しかった」
「こ、こら!!ネコミン、余計なことを言うんじゃない!!」


チイが慰めるようにレイナの肩に手を置くと、彼女も大分レイナに心を許しており、ネコミンに茶化されて頬を赤らめながら怒る。その様子を見てリルはレイナに視線を向けると、応援するようにウィンクを行う。


「では、これより第三階層の調査を行う!!隊を二つに分けてまずは転移するぞ!!」


転移台の元に最初にレイナ達の部隊と、第一部隊が乗り込む。人数的には魔法陣で一度に転移を行えるのは20人限りのため、調査隊は二手に分かれて捜査を行わなければならない。

魔法陣に移動するとレイナは第一部隊の面子に視線を向け、その中にオウソウも交じっている事に気づく。彼もこの部隊に配属されていたらしく、どうやら隊長ではないようだがレイナと同行する事に不満があるのか彼女と目を合わせない。


「ふんっ……せいぜい足を引っ張るなよ」
「こっちの台詞だ……です」
「なんだと……」


オウソウの挑発にレイナは咄嗟に男言葉で言い返しそうになったが、慌てて他人がいるときは女言葉を使うように言われていたことを思い出し、言い直す。だが、どちらにしろ挑発を返した事に変わりはないのでオウソウはこめかみに青筋を立てるが、そんな彼の前にハンゾウとネコミンが立ちふさがる。


「拙者の部隊の仲間を挑発するのは止めてほしいでござる」
「それにレイナも上官……口の利き方には気を付けた方がいい」
「ちっ……団長のお気に入りだからといって偉そうにしおって」
「偉そうではなく、偉いんですよ。あまり生意気なことを言うと団長に直訴して解雇させますよ」
「ぐうっ……」


リリスの言葉にオウソウは悔しげな表情を浮かべるが解雇は嫌なのか黙り込み、しぶしぶと引き下がる。その様子を見てレイナは本当にこれから彼等と共に行動できるのか不安を抱くが、ここまで来た以上は引き返す事はできない。


(よし、頑張るぞ……)


頬を軽く叩いて気合を入れなおすと、リリスが台座の前に立ち、第三階層の転移の合言葉を告げた。


「砂漠」


リリスが告げた瞬間、転移台が光り輝き、一瞬にして光の柱と化してレナ達の身体を飲み込む――





――光に飲み込まれてから体感的には数秒後、レイナの視界が徐々に戻り、巨大な砂丘が映し出された。レイナは目の前に現れた砂丘に驚くが、すぐに天井から降り注ぐ強い光に気づき、同時に異様の暑さに襲われる。


「くっ……ここが、第三階層?」


レイナは上空を見上げると、そこには本物の太陽の如く光り輝く光石が存在する事に気づき、第一階層や第二階層と比べても巨大な光石が天井に埋め込まれていた。まるで本物の砂漠に来たかのような強い熱気に襲われ、レイナは身に着けていたローブを頭まで被って周囲の様子を伺う。

周囲一帯が完全に先ほどまで存在した場所とは異なり、広大な砂漠に取り残されたかのような風景が広がっていた。照り付ける光、異常なまでの温度、砂丘、ここが大迷宮内だと信じられないほどに完璧に砂漠を再現していた。


(暑い……このままだと蒸し焼きになりそうだ)


あまりの暑さにレイナは頭を押さえ、咄嗟に水筒を取り出して水分補給を行う。この暑さだと他の人間も参っているのではないかとレイナは心配して振り返るが、どういう事なのかなぜか自分の周りには誰も人はいなかった。


「あれ……皆?何処にいるの!?」


レイナは慌てて周囲を見渡すが何故か一緒に転移したはずのネコミン達の姿が見えず、慌ててレイナは皆を探すために砂丘を駆け上がる。


(どうして皆いないんだ……まさか、俺だけが別の場所に転移された?)


砂丘を駆け上がりがながら他の人間が傍にいないことにレイナは戸惑い、今までの階層は転移する際は必ず魔法陣内の人間と共に飛ばされたが、今回の場合はレイナが他の皆と別の場所に飛ばされたとしか思えず、慌てて他の人間の姿を探すために行動を開始した。

だが、砂丘を上る途中でどういう事なのか全く足が進まなくなり、不審に思ったレイナは足元を確認すると、いつのまにか自分の足元の砂が下の方に飲み込まれるよう流動している事に気づく。
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