249 / 367
獣人王国編
第247話 レイナとして
しおりを挟む
どうして勇者レアとして団員に受け入れられたにも関わらず、レイナの格好で行動しなければならないのかというと、団員の中に未だにオウソウのようにレナが新参者でありながらリリス達と同じ地位に就いている事に不満を持つ者もいた。
もちろん、レイナの実力はここまでの道中で示しているが、彼女が気に入られているのは勇者レアがレイナを気に入っているだけに過ぎないと思い込む物も多い。
一応は他の人間の印象をよくするために食材調達も兼ねた狩猟を行うときはレイナは率先して魔物を退治している。だが、彼女の部隊に所属する者たちの多くは実力者のため、いくらレイナが頑張っても戦っている姿を見ていない者は他の人間が魔物退治に尽力しただけでレイナは何もしていないのではないかと疑う輩もいた。
「レイナ君には苦労を掛けるが、ここまで君の存在が他の人間に知られた以上はレイナ君がレア君であることを明かすわけにはいかない。それに女性の姿の君の方がいろいろと都合がいいことも多いだろうし、明日からはその姿で存分に手柄を立ててくれ」
「はい……まあ、実を言えばこっちの姿の方が戦闘に慣れてますからね」
「明日からは拙者たちも他の部隊と共に大迷宮に挑むのでござるな?」
「ああ、といっても全員で赴くわけじゃない。今回は君たちを筆頭に第一から第三部隊と共に行動してもらう。あまりに大人数で動きすぎるとこちらも対処しにくいからな。今回はチイも同行させるから安心してくれ」
「チイも?」
「ああ、私が3つの部隊の指揮を行う。だが、次の階層は資料によると最も過酷な環境のようだからな……準備は怠るなよ」
チイの言葉にレイナたちは頷き、明日から挑む第三階層は現在確認されている階層の中で最も環境が厳しく、同時にこの場所に訪れて迷宮の攻略を断念した冒険者も多い。
「明日からの探索は全員、長袖とマントを身に着けていくんだ」
「え?熱いところに行くのに長袖とマントを身に着けるのでござるか?」
「熱いからこそ身に着ける必要があるんだよ。肌を晒しているとだけで火傷を起こすこともあるからね」
「なんとっ!?それは盲点でござった……レイナ殿は物知りでござるな」
「それと水分補給は小まめに行う事、砂漠は乾燥しているから汗もかきにくいけど、知らないうちに相当に水分を消耗している事があるらしいからね。定期的に水を飲んで進まないとすぐに脱水症状を起こすよ」
「ほうっ……そんなことも知っていたのか」
「レイナは物知り」
地球の砂漠の知識を語るレイナに他の者たちは少し意外そうな表情を浮かべるが、リリスが最後に注意を付け足す。
「それと砂漠での移動は相当に体力を消耗するので気を付けて下さい。敵は魔物だけではなく、環境そのものだと考えてください」
「リリスの言うとおりだ。皆、明日以降に備えて今日はもう休んでくれ」
リルの言葉に全員が従い、明日以降の探索に備えて万全な体力を身に着けておくために身体を休めることにした――
――翌日の朝、全員が準備を整えると転移台の元に集まり、今回は4つの部隊が挑む事になるが、一度に転移を行える人数は限られているため、2つの部隊同士が転移台に乗り込んで転移を行う事が決まる。
「転移を行う際、最初に行うのは部隊の合流だ。今回の任務は転移台の祭壇を見つけ出さない限り、我々は戻る手段を失う。そのために失敗は許されない、だからこそここに集められたのは白狼騎士団の精鋭だ!!」
「精鋭……!!」
「俺たちが……!!」
副団長であるチイの言葉に団員達の指揮は上がり、今回の階層の攻略は決して失敗は許されず、祭壇を見つけ出さない限りはレイナ達は戻る手段がない。非常に危険だが、成功すれば第三階層を突破し、危険を冒さずに第四階層まで辿り着くことが出来る。
「第三階層か……ふうっ、気合を入れないと」
「レイナ殿、そう気負わずとも良いでござる。困ったときは仲間同士で助け合うのが一番でござるよ」
「ありがとうハンちゃん……でも、その恰好だといわれるとすごく違和感があるな」
現在のハンゾウは男物の服装に着替え、現在はレアの変装を行っていた。彼女は女性だけではなく、背丈が近い人間ならば男性にも変装する事が出来るため、傍から見れば他の人間には勇者レアにしか見えない。
ネコミンのように鼻が鋭い獣人には気づかれてしまう恐れがあるが、そのためにハンゾウは「消臭石」と呼ばれる魔石を装備しており、これを身に着けていれば体臭を完全に消すことが出来る。そのお陰でハンゾウの正体に気づく者もいない。
現在もレイナを落ち着かせるために近づいたハンゾウだが、傍から見ればレアがレイナのことを気遣っているようにしか見えず、そのせいで他の人間の中には好奇の視線を向ける者もいた。
もちろん、レイナの実力はここまでの道中で示しているが、彼女が気に入られているのは勇者レアがレイナを気に入っているだけに過ぎないと思い込む物も多い。
一応は他の人間の印象をよくするために食材調達も兼ねた狩猟を行うときはレイナは率先して魔物を退治している。だが、彼女の部隊に所属する者たちの多くは実力者のため、いくらレイナが頑張っても戦っている姿を見ていない者は他の人間が魔物退治に尽力しただけでレイナは何もしていないのではないかと疑う輩もいた。
「レイナ君には苦労を掛けるが、ここまで君の存在が他の人間に知られた以上はレイナ君がレア君であることを明かすわけにはいかない。それに女性の姿の君の方がいろいろと都合がいいことも多いだろうし、明日からはその姿で存分に手柄を立ててくれ」
「はい……まあ、実を言えばこっちの姿の方が戦闘に慣れてますからね」
「明日からは拙者たちも他の部隊と共に大迷宮に挑むのでござるな?」
「ああ、といっても全員で赴くわけじゃない。今回は君たちを筆頭に第一から第三部隊と共に行動してもらう。あまりに大人数で動きすぎるとこちらも対処しにくいからな。今回はチイも同行させるから安心してくれ」
「チイも?」
「ああ、私が3つの部隊の指揮を行う。だが、次の階層は資料によると最も過酷な環境のようだからな……準備は怠るなよ」
チイの言葉にレイナたちは頷き、明日から挑む第三階層は現在確認されている階層の中で最も環境が厳しく、同時にこの場所に訪れて迷宮の攻略を断念した冒険者も多い。
「明日からの探索は全員、長袖とマントを身に着けていくんだ」
「え?熱いところに行くのに長袖とマントを身に着けるのでござるか?」
「熱いからこそ身に着ける必要があるんだよ。肌を晒しているとだけで火傷を起こすこともあるからね」
「なんとっ!?それは盲点でござった……レイナ殿は物知りでござるな」
「それと水分補給は小まめに行う事、砂漠は乾燥しているから汗もかきにくいけど、知らないうちに相当に水分を消耗している事があるらしいからね。定期的に水を飲んで進まないとすぐに脱水症状を起こすよ」
「ほうっ……そんなことも知っていたのか」
「レイナは物知り」
地球の砂漠の知識を語るレイナに他の者たちは少し意外そうな表情を浮かべるが、リリスが最後に注意を付け足す。
「それと砂漠での移動は相当に体力を消耗するので気を付けて下さい。敵は魔物だけではなく、環境そのものだと考えてください」
「リリスの言うとおりだ。皆、明日以降に備えて今日はもう休んでくれ」
リルの言葉に全員が従い、明日以降の探索に備えて万全な体力を身に着けておくために身体を休めることにした――
――翌日の朝、全員が準備を整えると転移台の元に集まり、今回は4つの部隊が挑む事になるが、一度に転移を行える人数は限られているため、2つの部隊同士が転移台に乗り込んで転移を行う事が決まる。
「転移を行う際、最初に行うのは部隊の合流だ。今回の任務は転移台の祭壇を見つけ出さない限り、我々は戻る手段を失う。そのために失敗は許されない、だからこそここに集められたのは白狼騎士団の精鋭だ!!」
「精鋭……!!」
「俺たちが……!!」
副団長であるチイの言葉に団員達の指揮は上がり、今回の階層の攻略は決して失敗は許されず、祭壇を見つけ出さない限りはレイナ達は戻る手段がない。非常に危険だが、成功すれば第三階層を突破し、危険を冒さずに第四階層まで辿り着くことが出来る。
「第三階層か……ふうっ、気合を入れないと」
「レイナ殿、そう気負わずとも良いでござる。困ったときは仲間同士で助け合うのが一番でござるよ」
「ありがとうハンちゃん……でも、その恰好だといわれるとすごく違和感があるな」
現在のハンゾウは男物の服装に着替え、現在はレアの変装を行っていた。彼女は女性だけではなく、背丈が近い人間ならば男性にも変装する事が出来るため、傍から見れば他の人間には勇者レアにしか見えない。
ネコミンのように鼻が鋭い獣人には気づかれてしまう恐れがあるが、そのためにハンゾウは「消臭石」と呼ばれる魔石を装備しており、これを身に着けていれば体臭を完全に消すことが出来る。そのお陰でハンゾウの正体に気づく者もいない。
現在もレイナを落ち着かせるために近づいたハンゾウだが、傍から見ればレアがレイナのことを気遣っているようにしか見えず、そのせいで他の人間の中には好奇の視線を向ける者もいた。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる