241 / 367
獣人王国編
第239話 魔除けの石の異変
しおりを挟む
「あった、これさえあれば……あれ!?」
「どうしたの?」
「いや、魔除けの石が……色を失ってる?」
レアは自分の鞄から魔除けの石を取り出すが、どういう事なのか取り出した瞬間に魔除けの石の輝きが失せてしまい、無色の水晶玉のように変化してしまう。それだけではなく、水晶玉は徐々に亀裂が走ると、その場で砕けて地面に落ちてしまった。
解析で調べる暇もなく所持していた「魔除けの石」が壊れた事にレアは唖然とするが、その様子を見ていたリリスが水晶玉の破片を拾い上げて残念そうに呟く。
「なるほど……どうやら噂は本当だったようですね」
「う、噂?」
「はい、大迷宮内では一部の魔物を退く効果のある魔道具を持ち込む事は出来ないと聞いた事があります。私も実際に大迷宮に入るのは初めてなので噂が真実だったのかは知りませんでしたが、どうやらこの大迷宮内では魔除けの石のような魔石は何らかの影響を受けて効果を失い、ただの水晶玉と化してしまうようです」
「そんな……」
「という事は……ここでは魔除けの石は使えないという事でござるな」
折角用意した魔除けの石が壊れた事にレアは残念に思うが、残念ながら解析を発動してもただの水晶玉の破片としか表示されず、復元は不可能だった。また、仮に修復出来たとしても大迷宮内に存在する限りでは魔除けの石は効力を失い、ただの水晶玉と化すので意味はない。
落ち込むレナをリリスは慰めるように肩を叩くと、ここから先はやはり魔物との戦闘は避けられない事を再認識して進むように注意する。
「今日の所はもう引き返しましょう。目的は達成しましたし、それにここに残っているとゴブリンにいつまた襲われるかも分かりません」
「でも、まだ入ったばかりなのに……」
「そういう油断はいけませんよ。ここは大迷宮、次の瞬間に何が起きるのか分からない危険な場所ですからね。それに団長が行っていたでしょう?無理をせずに戻って来いと……」
リリスの言葉にレアはリルの言葉を思い出し、冷静になって今回の目的は果たしている事を確認する。確かにリリスの言う事は一理あると思い、レアは彼女の意見を聞き入れて引き返す事にした。
「そうだね、分かった。じゃあ、一旦戻ろうか……」
「この建物はどうやって入るのでござるか?」
「……出入口の扉が見当たらない」
「あれ、おかしいですね……あ、こっちに階段がありますよ」
気を取り直してレア達は外へ戻るために建物へと近付くが、ここで建物の内部に入るための出入口が存在しない事に気付く。建物の周りを調べた結果、どうやら裏側の方に建物の屋上に繋がる階段を発見する。
どうやら建物と思われた建築物の正体は「祭壇」のような建築物であると判明し、階段を登って建物の頂上に辿り着くと、そこには外の世界でレア達が使用した転移台と同じ魔法陣が刻まれていた。中央部には台座が存在し、大きな水晶玉のような物が設置されていた。
「なるほど、建物の中に転移台があるのではなく、この建物自体が祭壇みたいな物だったんですね。資料を見た限りだと建物の中に入ると思い込んでいましたが、これだと身を隠す事は出来なさそうですね」
「しかし、不思議と建物の周囲には嫌な気配が感じられないでござる」
「すんすん……この建物にはゴブリンの臭いが感じない。つまり、この建物にゴブリンは避けている」
「きゅろっ……ここ、なんか近寄りたくない」
「ぷるぷるっ……」
元魔物であるサンとスライムのクロミンは転移台が設置されている祭壇に近付くと、何かを感じ取ったのか嫌な表情を浮かべて立ち止まってしまう。レア達には感じられないが、どうやら祭壇には魔物が近づけないような細工が施されているらしく、そのお陰で祭壇の近くは一種の「安全地帯」と化しているようだった。
安全地帯に関してはヒトノ帝国の大迷宮にも存在し、どうやら巨塔の大迷宮では各階層を行き来する転移台が設置された祭壇自体が安全地帯と化しているらしい。そのお陰でレア達は魔物に襲われる心配はなく、一休み出来た。
「なるほど、これが安全地帯という奴ですか。それならもう安心ですね、すぐに帰必要もありませんし、もう少しだけここを調べてみましょう」
「サン、クロミン。戻る時はこの祭壇に入らないといけないけど、大丈夫?」
「きゅろっ!!大丈夫、我慢する!!」
「ぷるぷるっ」
元は魔物とはいえ、サンの場合は現在は「ダークエルフ」なので祭壇の中に入る事は出来るらしく、クロミンの場合はスライムはそもそも魔除けの石も効かないので我慢すれば入れる様子だった。2人に無理をさせる事にレアは申し訳なく思うが、戻るためには祭壇を利用しなければならないので仕方がない。
一方でリリスの方は祭壇の周囲を歩き回り、転移台のあちこちを調べ、興味深そうな表情を浮かべる。事前にまとめていた大迷宮の資料の確認を行い、まずは元の世界へ戻る方法と次の階層へ移動する方法を確認した。
「どうしたの?」
「いや、魔除けの石が……色を失ってる?」
レアは自分の鞄から魔除けの石を取り出すが、どういう事なのか取り出した瞬間に魔除けの石の輝きが失せてしまい、無色の水晶玉のように変化してしまう。それだけではなく、水晶玉は徐々に亀裂が走ると、その場で砕けて地面に落ちてしまった。
解析で調べる暇もなく所持していた「魔除けの石」が壊れた事にレアは唖然とするが、その様子を見ていたリリスが水晶玉の破片を拾い上げて残念そうに呟く。
「なるほど……どうやら噂は本当だったようですね」
「う、噂?」
「はい、大迷宮内では一部の魔物を退く効果のある魔道具を持ち込む事は出来ないと聞いた事があります。私も実際に大迷宮に入るのは初めてなので噂が真実だったのかは知りませんでしたが、どうやらこの大迷宮内では魔除けの石のような魔石は何らかの影響を受けて効果を失い、ただの水晶玉と化してしまうようです」
「そんな……」
「という事は……ここでは魔除けの石は使えないという事でござるな」
折角用意した魔除けの石が壊れた事にレアは残念に思うが、残念ながら解析を発動してもただの水晶玉の破片としか表示されず、復元は不可能だった。また、仮に修復出来たとしても大迷宮内に存在する限りでは魔除けの石は効力を失い、ただの水晶玉と化すので意味はない。
落ち込むレナをリリスは慰めるように肩を叩くと、ここから先はやはり魔物との戦闘は避けられない事を再認識して進むように注意する。
「今日の所はもう引き返しましょう。目的は達成しましたし、それにここに残っているとゴブリンにいつまた襲われるかも分かりません」
「でも、まだ入ったばかりなのに……」
「そういう油断はいけませんよ。ここは大迷宮、次の瞬間に何が起きるのか分からない危険な場所ですからね。それに団長が行っていたでしょう?無理をせずに戻って来いと……」
リリスの言葉にレアはリルの言葉を思い出し、冷静になって今回の目的は果たしている事を確認する。確かにリリスの言う事は一理あると思い、レアは彼女の意見を聞き入れて引き返す事にした。
「そうだね、分かった。じゃあ、一旦戻ろうか……」
「この建物はどうやって入るのでござるか?」
「……出入口の扉が見当たらない」
「あれ、おかしいですね……あ、こっちに階段がありますよ」
気を取り直してレア達は外へ戻るために建物へと近付くが、ここで建物の内部に入るための出入口が存在しない事に気付く。建物の周りを調べた結果、どうやら裏側の方に建物の屋上に繋がる階段を発見する。
どうやら建物と思われた建築物の正体は「祭壇」のような建築物であると判明し、階段を登って建物の頂上に辿り着くと、そこには外の世界でレア達が使用した転移台と同じ魔法陣が刻まれていた。中央部には台座が存在し、大きな水晶玉のような物が設置されていた。
「なるほど、建物の中に転移台があるのではなく、この建物自体が祭壇みたいな物だったんですね。資料を見た限りだと建物の中に入ると思い込んでいましたが、これだと身を隠す事は出来なさそうですね」
「しかし、不思議と建物の周囲には嫌な気配が感じられないでござる」
「すんすん……この建物にはゴブリンの臭いが感じない。つまり、この建物にゴブリンは避けている」
「きゅろっ……ここ、なんか近寄りたくない」
「ぷるぷるっ……」
元魔物であるサンとスライムのクロミンは転移台が設置されている祭壇に近付くと、何かを感じ取ったのか嫌な表情を浮かべて立ち止まってしまう。レア達には感じられないが、どうやら祭壇には魔物が近づけないような細工が施されているらしく、そのお陰で祭壇の近くは一種の「安全地帯」と化しているようだった。
安全地帯に関してはヒトノ帝国の大迷宮にも存在し、どうやら巨塔の大迷宮では各階層を行き来する転移台が設置された祭壇自体が安全地帯と化しているらしい。そのお陰でレア達は魔物に襲われる心配はなく、一休み出来た。
「なるほど、これが安全地帯という奴ですか。それならもう安心ですね、すぐに帰必要もありませんし、もう少しだけここを調べてみましょう」
「サン、クロミン。戻る時はこの祭壇に入らないといけないけど、大丈夫?」
「きゅろっ!!大丈夫、我慢する!!」
「ぷるぷるっ」
元は魔物とはいえ、サンの場合は現在は「ダークエルフ」なので祭壇の中に入る事は出来るらしく、クロミンの場合はスライムはそもそも魔除けの石も効かないので我慢すれば入れる様子だった。2人に無理をさせる事にレアは申し訳なく思うが、戻るためには祭壇を利用しなければならないので仕方がない。
一方でリリスの方は祭壇の周囲を歩き回り、転移台のあちこちを調べ、興味深そうな表情を浮かべる。事前にまとめていた大迷宮の資料の確認を行い、まずは元の世界へ戻る方法と次の階層へ移動する方法を確認した。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる