237 / 367
獣人王国編
第235話 階層主
しおりを挟む
「――俺達が先行、ですか?」
「そうだ。私とチイは他の部隊の指揮があるから同行は出来ないが、レア君たちには先に大迷宮に入って様子を伺って欲しい」
準備を終えたレア達の元にリルは大迷宮の調査を願い、白狼騎士団の中には大迷宮に挑む事自体が初めての人間が多い。巨塔の大迷宮に関してはリル達も初めて訪れる場所のため、不明な点も多い。
事前に情報を集めてはいるが、その情報に関しても大分前の資料を参考にしており、ここ最近は巨塔の大迷宮に挑む冒険者さえいない。本来、大迷宮という場所は素材の宝庫なので冒険者が群がる場所なのだが、この巨塔の大迷宮に関してはヒトノ帝国よりも危険度が高く、挑む冒険者さえいない有様だった。
「巨塔の大迷宮の近くに村や街が建設されない理由は利益がないからだ。普通、大迷宮という場所は様々な素材が手に入るのだが、この巨塔の大迷宮に関してはその粗衣を入手するのがあまりにも困難なんだ」
「困難?」
「一つ目の理由は魔物の数が他の大迷宮と比較にならないほどに多いからだ。ヒトノ帝国の大迷宮は魔物との遭遇率は決して低くはなかったが、この巨塔の大迷宮の場合は10歩歩くだけで魔物と交戦するとまで言われている」
「そんなにたくさんの魔物がいるんですか?」
「ああ、しかも奴等は決して共食いはしないが他の種族に関しては見境なく襲いかかってくる。つまり、巨塔の大迷宮に入り込めば私達は奴等にとっては只の餌に過ぎない。地上の魔物と違って恐れを抱いて襲いかかってこないという事態には陥らないから厄介だぞ」
リルとチイの説明を受けてレアはこれからとんでもない場所に赴くのだと知るが、ここである事を思い出す。ある方法を利用すれば大迷宮内でも安全に移動できるのではないかと考えるが、その方法を話す前にリルとチイは幕舎から抜け出す。
「今日1日は私達は動く事はない。外で砦の建設を行っておく、君達には負担を掛けるが他に頼れる人間がいない以上、私達の未来は君に任せるよレア君」
「お前とは色々とあったが、その……信頼はしている。ネコミンとハンゾウを頼んだぞ」
「えっ?なんで私の名前がないんですか?ハブられてるんですか?」
「いや、リリスの場合はなんというか……仮に骨だけの状態になっても生き残りそうだから大丈夫かと思って……」
「どんな言い訳ですか!!私はスケルトンじゃないんですよ!?」
チイの言葉にリリスは憤慨するが、ともかく巨塔の大迷宮に最初に挑むのはレア達だと決定した。リルはレアにネコミン達の事を任せると、無事に帰ってくる事を祈った。
「危険だと思ったらすぐに引き返してくれ。それと、今回は第一階層の探索だけでいい。上の階層に繋がる転移台を発見するだけでも上々だ」
「巨塔の大迷宮の第一階層は……確か、草原のような場所に繋がっているんですか?」
「ああ、だが気を付けて欲しいのは美しい草原のように見えても実際の所は巨塔の大迷宮の内部である事は違いないんだ。移動出来る範囲は限られているし、草原という性質上、身を隠す場所も少ない。逆に言えばその分に転移台の位置も分かりやすいと思うが……まあ、頑張ってくれ」
「もしも1日以内に戻ってこなければ私達も救援に向かう。その時はどうにか持ちこたえるんだぞ」
「うん、分かった。一応は聞くけど、第一階層にはどんな魔物が出るんですか?」
「第一階層の場合はゴブリン種が支配している。通常種のゴブリン、上位種のホブゴブリン、稀に亜種のゴブリンも確認されている。だが、一番厄介なのは階層主のゴブリンキングだろう」
「階層主……?」
初めて聞く単語にレアは疑問を抱くと、リリスが代わりに説明を行う。
「大迷宮の階層にはそれぞれ「階層主」と呼ばれる特殊個体が生息するんです。迷宮の守護者というべき存在ですね」
「ゴブリンキングか……どんな奴なんですか?」
「とにかく大きいゴブリン、私達も一度だけ見た事があるけど凄く大きかった」
「巨人族を上回る巨体、それでいながら非力なゴブリンとは思えない程の怪力、更には厄介な事に知能も高い。敵にすれば間違いなくガーゴイルやゴーレムの比ではない相手だろう」
「そんなにやばいんですか!?」
ゴーレムもガーゴイルもレアからすれば恐ろしい相手だが、ゴブリンキングの場合はそれを上回るらしく、そんな存在が待ち受ける階層に今から自分達が挑む事を知ったレアは緊張を隠せない。だが、ここまで来た以上は引き返す事は出来ず、ここはケモノ王国のためというよりもリル達のために頑張る事にした。
幸いと言うべきかこちらにはクロミンとサンも存在し、この2匹を変身させれば大抵の相手は打倒できると考えられる。もしもゴブリンキングが現れた場合はこの2匹のどちらかを元の姿に戻す事態に陥るかもしれない。
「では、健闘を祈る。無事に帰ってくる事を祈っているよ」
「分かりました……皆、出発の準備はいい?」
レアは念のために振り返って確認すると、全員が頷く。そして遂にレア達は巨塔の大迷宮の攻略のために動き出した。
「そうだ。私とチイは他の部隊の指揮があるから同行は出来ないが、レア君たちには先に大迷宮に入って様子を伺って欲しい」
準備を終えたレア達の元にリルは大迷宮の調査を願い、白狼騎士団の中には大迷宮に挑む事自体が初めての人間が多い。巨塔の大迷宮に関してはリル達も初めて訪れる場所のため、不明な点も多い。
事前に情報を集めてはいるが、その情報に関しても大分前の資料を参考にしており、ここ最近は巨塔の大迷宮に挑む冒険者さえいない。本来、大迷宮という場所は素材の宝庫なので冒険者が群がる場所なのだが、この巨塔の大迷宮に関してはヒトノ帝国よりも危険度が高く、挑む冒険者さえいない有様だった。
「巨塔の大迷宮の近くに村や街が建設されない理由は利益がないからだ。普通、大迷宮という場所は様々な素材が手に入るのだが、この巨塔の大迷宮に関してはその粗衣を入手するのがあまりにも困難なんだ」
「困難?」
「一つ目の理由は魔物の数が他の大迷宮と比較にならないほどに多いからだ。ヒトノ帝国の大迷宮は魔物との遭遇率は決して低くはなかったが、この巨塔の大迷宮の場合は10歩歩くだけで魔物と交戦するとまで言われている」
「そんなにたくさんの魔物がいるんですか?」
「ああ、しかも奴等は決して共食いはしないが他の種族に関しては見境なく襲いかかってくる。つまり、巨塔の大迷宮に入り込めば私達は奴等にとっては只の餌に過ぎない。地上の魔物と違って恐れを抱いて襲いかかってこないという事態には陥らないから厄介だぞ」
リルとチイの説明を受けてレアはこれからとんでもない場所に赴くのだと知るが、ここである事を思い出す。ある方法を利用すれば大迷宮内でも安全に移動できるのではないかと考えるが、その方法を話す前にリルとチイは幕舎から抜け出す。
「今日1日は私達は動く事はない。外で砦の建設を行っておく、君達には負担を掛けるが他に頼れる人間がいない以上、私達の未来は君に任せるよレア君」
「お前とは色々とあったが、その……信頼はしている。ネコミンとハンゾウを頼んだぞ」
「えっ?なんで私の名前がないんですか?ハブられてるんですか?」
「いや、リリスの場合はなんというか……仮に骨だけの状態になっても生き残りそうだから大丈夫かと思って……」
「どんな言い訳ですか!!私はスケルトンじゃないんですよ!?」
チイの言葉にリリスは憤慨するが、ともかく巨塔の大迷宮に最初に挑むのはレア達だと決定した。リルはレアにネコミン達の事を任せると、無事に帰ってくる事を祈った。
「危険だと思ったらすぐに引き返してくれ。それと、今回は第一階層の探索だけでいい。上の階層に繋がる転移台を発見するだけでも上々だ」
「巨塔の大迷宮の第一階層は……確か、草原のような場所に繋がっているんですか?」
「ああ、だが気を付けて欲しいのは美しい草原のように見えても実際の所は巨塔の大迷宮の内部である事は違いないんだ。移動出来る範囲は限られているし、草原という性質上、身を隠す場所も少ない。逆に言えばその分に転移台の位置も分かりやすいと思うが……まあ、頑張ってくれ」
「もしも1日以内に戻ってこなければ私達も救援に向かう。その時はどうにか持ちこたえるんだぞ」
「うん、分かった。一応は聞くけど、第一階層にはどんな魔物が出るんですか?」
「第一階層の場合はゴブリン種が支配している。通常種のゴブリン、上位種のホブゴブリン、稀に亜種のゴブリンも確認されている。だが、一番厄介なのは階層主のゴブリンキングだろう」
「階層主……?」
初めて聞く単語にレアは疑問を抱くと、リリスが代わりに説明を行う。
「大迷宮の階層にはそれぞれ「階層主」と呼ばれる特殊個体が生息するんです。迷宮の守護者というべき存在ですね」
「ゴブリンキングか……どんな奴なんですか?」
「とにかく大きいゴブリン、私達も一度だけ見た事があるけど凄く大きかった」
「巨人族を上回る巨体、それでいながら非力なゴブリンとは思えない程の怪力、更には厄介な事に知能も高い。敵にすれば間違いなくガーゴイルやゴーレムの比ではない相手だろう」
「そんなにやばいんですか!?」
ゴーレムもガーゴイルもレアからすれば恐ろしい相手だが、ゴブリンキングの場合はそれを上回るらしく、そんな存在が待ち受ける階層に今から自分達が挑む事を知ったレアは緊張を隠せない。だが、ここまで来た以上は引き返す事は出来ず、ここはケモノ王国のためというよりもリル達のために頑張る事にした。
幸いと言うべきかこちらにはクロミンとサンも存在し、この2匹を変身させれば大抵の相手は打倒できると考えられる。もしもゴブリンキングが現れた場合はこの2匹のどちらかを元の姿に戻す事態に陥るかもしれない。
「では、健闘を祈る。無事に帰ってくる事を祈っているよ」
「分かりました……皆、出発の準備はいい?」
レアは念のために振り返って確認すると、全員が頷く。そして遂にレア達は巨塔の大迷宮の攻略のために動き出した。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる