233 / 367
獣人王国編
第231話 犯人の特定
しおりを挟む
(信じてください、ね。なるほど……この言葉だけだと嘘だと判断はしにくいな。だけど、俺の能力を嘘を見抜く力だと勘違いしているのか?)
質問に対して他の人物の答えに乗って曖昧な返事をした騎士の一人にレアは視線を向け、相手が20代前半の男性騎士である事を確認する。外見は騎士を装っているが、称号に関しては事前に調査した限りでは白狼騎士団に存在しないはずの称号の持ち主だった。
放火魔だと思われる犯人を一人発見したレアは表面上は平静を保ち、まずはリルに目配せを行い、彼女に犯人が混じっている事を注意する。事情を察したリルは事前の打ち合わせ通りに行動する。
「質問をもう一度行う。君達の中に放火を引き起こした人間はいるのか?自分が無実であるのならば「私は放火をしていない」とだけ答えるんだ」
「えっ……は、はい。分かりました」
「それだけでいいんですか?」
「ああ、それだけでいいんだ。さあ、答えてくれ」
「…………」
リルの言葉に騎士達は困惑するが、その中で犯人と思われる人物の顔色は変わった。それを見てレアは彼が犯人だと確信し、即座に注意を行う。
「そこの男が犯人だ!!捕まえて!!」
「ちぃっ!!」
レアの言葉にリル達は武器を取ると、男性の騎士は抵抗するつもりなのか剣を引き抜く。それを見て真っ先にハンゾウが動き、彼女は背中に抱えていたフラガラッハを振り下ろす。
「ぬんっ!!」
「うわっ!?」
フラガラッハの攻撃力3倍増の効果のお陰か、ハンゾウが振り下ろした刃は男性騎士の所持していた剣の刃を叩き割り、更に彼女は左手を繰り出して顎に掌底を叩き込む。その結果、男性騎士は一撃で意識を奪われ、床に倒れ込む。
「ぐはぁっ……!?」
「おろ?そこまで強く叩いたつもりはないでござるが……」
ハンゾウとしては相手を怯ませる程度の威力で掌底を叩き込んだのだが、フラガラッハの効果のお陰か彼女の腕力も強化されていたらしく、男性騎士は白目を剥いて倒れてしまう。すぐに他の物が駆けつけ、騎士を拘束するとリルがレアに振り返る。
「レア君、こいつが犯人か?」
「はい、間違いありません。こいつが犯人のようです、しかも称号も暗殺者です」
「暗殺者?うちの騎士団に暗殺者なんていないはずなのに……いつの間にか紛れ込んでいたんでしょうね」
「なるほど、やはり暗殺者を使って放火を行ったのか」
拘束した男性騎士が暗殺者だと見抜いた事でレア達は逃げられないようにしっかりと縛り付け、用心のために怪我は治さない。犯人を捕まえる事には成功したが、その様子を見ていた他の騎士達はいったい何が起きたのかと理解出来ない様子だった。
「あ、あの……勇者様、そいつが犯人だというのは本当なんですか?」
「本当だよ、こいつは俺の質問にちゃんと答えようとしなかった。だからかまをかけてみたけど、案の定逃げようとしたでしょ?」
「な、なるほど……勇者様は嘘を見抜く力もあるんですね」
「その通りだ。だが、この能力の事は内密にするんだぞ」
「は、はい!!」
騎士達はレアが本当に他人の嘘を見抜く能力を持ち合わせていると信じたが、実際の所はレアの能力は嘘を見抜く事も出来るだけに過ぎない。だが、いちいち説明する必要もなく、勇者としての能力を不用意に明かすわけにもいかないので適当に誤魔化す。
一方でリリスに麻痺状態に陥ったオウソウの方は倒れた状態で無言のままレアを睨みつけ、若干涙ぐんでいた。身体が動かす事も出来ず、惨めな姿で倒れ続けている事に心が折れかけていた。
「レアさん、こっちの人は犯人じゃないですか?なんかずっと睨んできて気味悪いんですけど……」
「動けないようにしたのはリリスのくせに……オウソウ、あんたは放火魔なの?」
「ぐ、ぐううっ……!!」
まともにしゃべる事も出来ないのかオウソウは嗚咽を漏らすが、詳細画面を確認して特に変化がない事を確認したレアは仕方なく彼を治す事にした。前にリルを「麻痺」に追い込んだ時のように文字変換の能力で「薬」を作り出し、オウソウの口の中へと放り込む。
「ほら、これを飲んで……」
「うぐっ……ぶはぁっ!?」
「うわ、びっくりした!?」
薬を飲み込んだ瞬間にオウソウの麻痺は解除され、彼は勢いよく立ち上がる。そして自分の身体が動ける事に感動した様に両手の指を動かすが、すぐにリリスに振り返って怒鳴りつける。
「こ、この女ぁっ!!」
「おっと、近づかないでください。また注射されたいんですか?」
「ひぃっ!?」
注射器を取り出したリリスを見てオウソウは怯み、どうやら余程注射器を打たれた事がトラウマなのか、まるで予防接種を受ける前の子犬のように震えてしまう。その姿を見てリルはため息を吐き出し、他の騎士達も含めて出ていくように促す。
「君達の無実は証明された。外へ待機していなさい」
『はっ!!』
「……ああっ」
他の騎士達と共に気落ちしたオウソウも後に続き、レア、チイに続いてまさか非戦闘員のリリスにも敗れたという事実に落ち込み、彼はとぼとぼと幕舎から去っていった――
質問に対して他の人物の答えに乗って曖昧な返事をした騎士の一人にレアは視線を向け、相手が20代前半の男性騎士である事を確認する。外見は騎士を装っているが、称号に関しては事前に調査した限りでは白狼騎士団に存在しないはずの称号の持ち主だった。
放火魔だと思われる犯人を一人発見したレアは表面上は平静を保ち、まずはリルに目配せを行い、彼女に犯人が混じっている事を注意する。事情を察したリルは事前の打ち合わせ通りに行動する。
「質問をもう一度行う。君達の中に放火を引き起こした人間はいるのか?自分が無実であるのならば「私は放火をしていない」とだけ答えるんだ」
「えっ……は、はい。分かりました」
「それだけでいいんですか?」
「ああ、それだけでいいんだ。さあ、答えてくれ」
「…………」
リルの言葉に騎士達は困惑するが、その中で犯人と思われる人物の顔色は変わった。それを見てレアは彼が犯人だと確信し、即座に注意を行う。
「そこの男が犯人だ!!捕まえて!!」
「ちぃっ!!」
レアの言葉にリル達は武器を取ると、男性の騎士は抵抗するつもりなのか剣を引き抜く。それを見て真っ先にハンゾウが動き、彼女は背中に抱えていたフラガラッハを振り下ろす。
「ぬんっ!!」
「うわっ!?」
フラガラッハの攻撃力3倍増の効果のお陰か、ハンゾウが振り下ろした刃は男性騎士の所持していた剣の刃を叩き割り、更に彼女は左手を繰り出して顎に掌底を叩き込む。その結果、男性騎士は一撃で意識を奪われ、床に倒れ込む。
「ぐはぁっ……!?」
「おろ?そこまで強く叩いたつもりはないでござるが……」
ハンゾウとしては相手を怯ませる程度の威力で掌底を叩き込んだのだが、フラガラッハの効果のお陰か彼女の腕力も強化されていたらしく、男性騎士は白目を剥いて倒れてしまう。すぐに他の物が駆けつけ、騎士を拘束するとリルがレアに振り返る。
「レア君、こいつが犯人か?」
「はい、間違いありません。こいつが犯人のようです、しかも称号も暗殺者です」
「暗殺者?うちの騎士団に暗殺者なんていないはずなのに……いつの間にか紛れ込んでいたんでしょうね」
「なるほど、やはり暗殺者を使って放火を行ったのか」
拘束した男性騎士が暗殺者だと見抜いた事でレア達は逃げられないようにしっかりと縛り付け、用心のために怪我は治さない。犯人を捕まえる事には成功したが、その様子を見ていた他の騎士達はいったい何が起きたのかと理解出来ない様子だった。
「あ、あの……勇者様、そいつが犯人だというのは本当なんですか?」
「本当だよ、こいつは俺の質問にちゃんと答えようとしなかった。だからかまをかけてみたけど、案の定逃げようとしたでしょ?」
「な、なるほど……勇者様は嘘を見抜く力もあるんですね」
「その通りだ。だが、この能力の事は内密にするんだぞ」
「は、はい!!」
騎士達はレアが本当に他人の嘘を見抜く能力を持ち合わせていると信じたが、実際の所はレアの能力は嘘を見抜く事も出来るだけに過ぎない。だが、いちいち説明する必要もなく、勇者としての能力を不用意に明かすわけにもいかないので適当に誤魔化す。
一方でリリスに麻痺状態に陥ったオウソウの方は倒れた状態で無言のままレアを睨みつけ、若干涙ぐんでいた。身体が動かす事も出来ず、惨めな姿で倒れ続けている事に心が折れかけていた。
「レアさん、こっちの人は犯人じゃないですか?なんかずっと睨んできて気味悪いんですけど……」
「動けないようにしたのはリリスのくせに……オウソウ、あんたは放火魔なの?」
「ぐ、ぐううっ……!!」
まともにしゃべる事も出来ないのかオウソウは嗚咽を漏らすが、詳細画面を確認して特に変化がない事を確認したレアは仕方なく彼を治す事にした。前にリルを「麻痺」に追い込んだ時のように文字変換の能力で「薬」を作り出し、オウソウの口の中へと放り込む。
「ほら、これを飲んで……」
「うぐっ……ぶはぁっ!?」
「うわ、びっくりした!?」
薬を飲み込んだ瞬間にオウソウの麻痺は解除され、彼は勢いよく立ち上がる。そして自分の身体が動ける事に感動した様に両手の指を動かすが、すぐにリリスに振り返って怒鳴りつける。
「こ、この女ぁっ!!」
「おっと、近づかないでください。また注射されたいんですか?」
「ひぃっ!?」
注射器を取り出したリリスを見てオウソウは怯み、どうやら余程注射器を打たれた事がトラウマなのか、まるで予防接種を受ける前の子犬のように震えてしまう。その姿を見てリルはため息を吐き出し、他の騎士達も含めて出ていくように促す。
「君達の無実は証明された。外へ待機していなさい」
『はっ!!』
「……ああっ」
他の騎士達と共に気落ちしたオウソウも後に続き、レア、チイに続いてまさか非戦闘員のリリスにも敗れたという事実に落ち込み、彼はとぼとぼと幕舎から去っていった――
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる