228 / 367
獣人王国編
第226話 魔法腕輪
しおりを挟む
――その夜、レイナは自分の幕内で身体を休めていた。旅の時はキャンピングカーなど用意していたが、後処理に困るという理由もあって白狼騎士団に正式に加入後は野営の際はこの世界の人間の方式に従う。既に勇者レアの能力が他の人間に「状態異常」を引き起こす能力だと知られてしまった以上、今更だが文字変換の能力を使ってこの世界には存在しない道具を取り出す事は出来ない。
見張り役などは基本的には他の人間に任せているため、夜間の間はレイナはゆっくりと身体を休める。これは彼女の事を気遣っての対応というわけだけでもなく、出来る限りはレイナには万全の体調の状態を維持して欲しいというリルの配慮だった。万が一にも窮地に陥った時に力になるのはレイナである事は間違いなく、彼女はレイナの体調を崩さないように最善の処置を行う。
夜の間はレイナは幕の中で他の者達と共に過ごし、早寝早起きを心掛ける。また、勇者レアとして行動を余儀なく場合も想定して男性者の衣服も用意しており、いざという時は男性にすぐに変身する準備も整えていた。
「きゅろろっ……」
「ZZZ……」
「……サンとクロミンはもう寝ちゃったのか。それにしてもクロミンはサンに枕にされてよく怒らないな」
「私も時々枕に使っていた」
「スライム枕は人気がありますからね。餌は水を与えるだけでいいし、手間は掛からないし、正に愛玩動物としては最高の存在ですよ」
幕内ではサンがクロミンを枕にして眠りにつき、この2匹は夜間の間はすぐに眠ってしまう。もしかしたらどちらも昼行性の可能性もあるかとレイナは考える。最もスライムのクロミンはともかく、ダークエルフになったサンも昼行性というのは疑問があるが、その辺の事を気にしても仕方がない。
毛布を蹴り飛ばしたサンにレイナは毛布を改めて掛けなおすと、ネコミンとリリスが集まって何かをしている事に気付き、不思議そうに覗き込むと二人は銀色に光り輝く腕輪を磨いていた。
「二人とも、何してるの?」
「魔法腕輪を磨いているんですよ。万が一の時に備えて、回復魔法を発動させる準備は怠る事は出来ませんからね」
「私も同じ」
「魔法腕輪……確か、魔術師の杖みたいに魔法の触媒の効果を促す魔道具だっけ?」
2人の腕輪には白色に淡く光り輝く水晶玉が装着されており、それを見たレイナは解析の能力を発動させて聖属性の魔石だと見抜く。通常、この世界の魔術師は「魔石」と呼ばれる特殊な鉱石を加工して作り上げられた外見は水晶や宝石のような道具を利用して発動させる事を思い出す。
レイナを継方下ウサンも魔石が装着した杖を利用して攻撃魔法を発動しており、基本的にこの世界の人間は魔石を触媒にして魔法の発動を行っている。魔石が存在せずとも魔法の発動事態は可能だが、その場合は魔力の消耗量も多く、大きな効果を生み出せないという。
「魔石は貴重品ですからね。特に聖属性の魔石なんて簡単には手に入りませんから、本来は保管しておきたいところですが……大迷宮に挑むとなると流石に用意せざるを得ません」
「私も使う時は節約するようにチイから言いつけられてる……だから旅をしていた時も魔石を持っていなかったから回復魔法も碌に扱えなかった」
「なるほど、そうだったのか……でも、それって腕輪だよね。杖に付けなくていいの?」
「魔法を発動させるだけなら腕輪だろうが杖だろうが関係ありませんよ。ですが、この白銀製の腕輪は特別製で魔法の効果を高める作用を持ちます」
「どれどれ……解析」
レイナは二人が見せてくれた魔法腕輪を覗き込み、改めて「解析」を発動させて詳細画面を開く。
――魔法腕輪(マジックリング)――
能力
・魔法効果強化
詳細:装着した魔石の効果を高める腕輪。銀とミスリルの合金なので防具としても扱える。現在の所有者は「リリス・ティスト」
――――――――――――――――
「なんか凄い簡素な説明文が出てきたんだけど……」
「いや、そう言われましても……」
「レイナ、私のは?」
「ネコミンのは……うん、性能は同じだね」
「まあ、これは私達が騎士団に入った時に貰った代物ですからね」
2人が所有している魔法腕輪はリルが用意した代物であり、彼女なりに気を遣って性能が高い腕輪を用意したらしい。だが、聖剣の場合は能力が3~4個ほどの能力が付与されているのに対してこちらの方は能力が1つしか表示されていない。
それでも能力が付与されている魔道具は貴重品らしく、二人の魔法腕輪に関しても高級品らしい。だが、文章を見ていたレイナは「魔法効果強化」という文字に気にかかり、本日の文字変換の文字数が残っている事を確認すると二人に告げる。
「この魔法腕輪……俺の能力で強化してみようか?」
「えっ!?そんな事まで出来るんですか?」
「おおっ……流石はレイナ、ならやってみて」
「失敗したらちゃんと元に戻すから怒らないんでね……でも、どういう文字に書き換えようか」
文面に表示されている文字を見てレイナは思い悩み、とりあえずは「強化」という文字の部分を別の文字に変換する事にした。
見張り役などは基本的には他の人間に任せているため、夜間の間はレイナはゆっくりと身体を休める。これは彼女の事を気遣っての対応というわけだけでもなく、出来る限りはレイナには万全の体調の状態を維持して欲しいというリルの配慮だった。万が一にも窮地に陥った時に力になるのはレイナである事は間違いなく、彼女はレイナの体調を崩さないように最善の処置を行う。
夜の間はレイナは幕の中で他の者達と共に過ごし、早寝早起きを心掛ける。また、勇者レアとして行動を余儀なく場合も想定して男性者の衣服も用意しており、いざという時は男性にすぐに変身する準備も整えていた。
「きゅろろっ……」
「ZZZ……」
「……サンとクロミンはもう寝ちゃったのか。それにしてもクロミンはサンに枕にされてよく怒らないな」
「私も時々枕に使っていた」
「スライム枕は人気がありますからね。餌は水を与えるだけでいいし、手間は掛からないし、正に愛玩動物としては最高の存在ですよ」
幕内ではサンがクロミンを枕にして眠りにつき、この2匹は夜間の間はすぐに眠ってしまう。もしかしたらどちらも昼行性の可能性もあるかとレイナは考える。最もスライムのクロミンはともかく、ダークエルフになったサンも昼行性というのは疑問があるが、その辺の事を気にしても仕方がない。
毛布を蹴り飛ばしたサンにレイナは毛布を改めて掛けなおすと、ネコミンとリリスが集まって何かをしている事に気付き、不思議そうに覗き込むと二人は銀色に光り輝く腕輪を磨いていた。
「二人とも、何してるの?」
「魔法腕輪を磨いているんですよ。万が一の時に備えて、回復魔法を発動させる準備は怠る事は出来ませんからね」
「私も同じ」
「魔法腕輪……確か、魔術師の杖みたいに魔法の触媒の効果を促す魔道具だっけ?」
2人の腕輪には白色に淡く光り輝く水晶玉が装着されており、それを見たレイナは解析の能力を発動させて聖属性の魔石だと見抜く。通常、この世界の魔術師は「魔石」と呼ばれる特殊な鉱石を加工して作り上げられた外見は水晶や宝石のような道具を利用して発動させる事を思い出す。
レイナを継方下ウサンも魔石が装着した杖を利用して攻撃魔法を発動しており、基本的にこの世界の人間は魔石を触媒にして魔法の発動を行っている。魔石が存在せずとも魔法の発動事態は可能だが、その場合は魔力の消耗量も多く、大きな効果を生み出せないという。
「魔石は貴重品ですからね。特に聖属性の魔石なんて簡単には手に入りませんから、本来は保管しておきたいところですが……大迷宮に挑むとなると流石に用意せざるを得ません」
「私も使う時は節約するようにチイから言いつけられてる……だから旅をしていた時も魔石を持っていなかったから回復魔法も碌に扱えなかった」
「なるほど、そうだったのか……でも、それって腕輪だよね。杖に付けなくていいの?」
「魔法を発動させるだけなら腕輪だろうが杖だろうが関係ありませんよ。ですが、この白銀製の腕輪は特別製で魔法の効果を高める作用を持ちます」
「どれどれ……解析」
レイナは二人が見せてくれた魔法腕輪を覗き込み、改めて「解析」を発動させて詳細画面を開く。
――魔法腕輪(マジックリング)――
能力
・魔法効果強化
詳細:装着した魔石の効果を高める腕輪。銀とミスリルの合金なので防具としても扱える。現在の所有者は「リリス・ティスト」
――――――――――――――――
「なんか凄い簡素な説明文が出てきたんだけど……」
「いや、そう言われましても……」
「レイナ、私のは?」
「ネコミンのは……うん、性能は同じだね」
「まあ、これは私達が騎士団に入った時に貰った代物ですからね」
2人が所有している魔法腕輪はリルが用意した代物であり、彼女なりに気を遣って性能が高い腕輪を用意したらしい。だが、聖剣の場合は能力が3~4個ほどの能力が付与されているのに対してこちらの方は能力が1つしか表示されていない。
それでも能力が付与されている魔道具は貴重品らしく、二人の魔法腕輪に関しても高級品らしい。だが、文章を見ていたレイナは「魔法効果強化」という文字に気にかかり、本日の文字変換の文字数が残っている事を確認すると二人に告げる。
「この魔法腕輪……俺の能力で強化してみようか?」
「えっ!?そんな事まで出来るんですか?」
「おおっ……流石はレイナ、ならやってみて」
「失敗したらちゃんと元に戻すから怒らないんでね……でも、どういう文字に書き換えようか」
文面に表示されている文字を見てレイナは思い悩み、とりあえずは「強化」という文字の部分を別の文字に変換する事にした。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる