解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
221 / 367
獣人王国編

第219話 薬剤師リリスの価値

しおりを挟む
「現在、この国では深刻な薬草不足に陥ってます。その理由は大量の回復薬の生産のせいで薬草の栽培が追い付いていないからです」
「そんなに回復薬が必要なの?」
「当然ですね、この国の強みは薬草が最も育ちやすい環境だからです。だからこそヒトノ帝国はこの国から薬草を輸入しますし、それに薬草の質も高いんです。ですけど、回復薬の生産する場合は大量の薬草を消耗します」
「具体的にはどれくらい……?」
「素材として使用する薬草が多い程に回復薬の品質は高まります。だいたい、市販の回復薬に使用されている薬草は3~4つです。だけど、高品質な回復薬を生み出すにはこの倍も必要になりますからね。他にも薬草には色々と種類があるんですが、この国で自生している「三日月草」や「満月草」と呼ばれる薬草が最も回復薬の調合の素材として役立ちます」
「三日月草と満月草……」
「名前の通りに外見は三日月や、満月のような葉の形をした薬草。でも、どちらも魔物が好んで食べるから自然界では滅多に見つからない」
「なので栽培して薬草を増やすしかないんです。最も、今までの回復薬の製法では薬草を大量に消耗します。なので国中の薬剤師は新しい製法で薬草の消耗する数を増やし、それでいながら品質を落とさないように回復薬を調合するための研究を強いられています。全く、無茶な命令ですよ」


説明を受けたレアは現在のケモノ王国が薬草不足である事、その薬草を調合する薬剤師が重宝されている事を知る。リリスが薬剤師である以上は彼女も狙う輩は多く、白狼騎士団に所属する彼女が薬剤師として功績を立てれば上司であるリルの功績にもなるのでリリスの事を快く思わない輩は多いという。

ハンゾウは職業柄、影でリリスの護衛を行うのに適任のため、彼女は常日頃からリリスの側に控える必要がある。リリスを狙う者がいれば彼女が守り、あるいはリリスを狙う輩の始末も行う。


「拙者の役目はリリス殿の護衛なので、リリス殿からは離れられないでござる。だから今までの潜入活動では同行出来なかったのでござる」
「なるほど……薬剤師のリリスさんを他国へ潜入させるわけにもいかないもんね」
「そういう事です。そもそも私、戦闘ではなく後方支援が得意なんですよ。リルさん達が所有している回復薬も私が作った物ですからね」
「ああ、リリスの調合した回復薬は本当に良く効く。潜入活動を行う時は助かってるよ」
「ぷるぷるっ♪」
「うちのクロミンも中々美味かったと言ってます」
「いえいえ、それなら良かったです……って、私の回復薬をスライムのおやつに与えないで下さい!?」


レアの言葉にリリスは突っ込みを返すと、とりあえずはこの国の現状と薬剤師の価値を知ったレアは考え込む。薬草の問題に関して自分も何が出来る事はないのかと考えるが、上手く思いつかない。


(異世界小説のテンプレだと、地球の肥料とかを使えば植物が急速に育つとかはあるけど、そんなに上手くいくのかな……?)


この世界の植物が地球の肥料に適応するのかは分からないが、とりあえずは薬草の栽培に役立ちそうな道具を文字変換の能力で作り出してリリスに渡してみる事にした。レアは適当な道具を取り出して文字変換の能力を発動しようとした時、何時の間にか着替えたハンゾウが制服を差し出す。


「レア殿、これはお返しするでござる。拙者は自分の制服を持っているからこれはレア殿にお返しするでござる」
「あ、うん……制服か、またこういうのを着る羽目になるとは」
「すまないがこの国に居る間は我慢してくれ。私が陛下に頼んで何処かの領地を分けて貰えれば安心して君が暮らせる環境を用意できるが、今は我慢してくれ」
「はあ……分かりました」


女物の制服を受け取ったレアは仕方なく、今度は「女騎士」として生きていく事を覚悟するとひとまずは自分の部屋に戻る事にした。尚、単独行動だと危険なの城内存在するときは白狼騎士団の何人かと常に行動を共にするように気を付ける。

騎士団の誰かと常に行動を共にするのは不自然に思われないかとレアは考えたが、先日の件でレアは夜な夜な白狼騎士団の団員と肉体関係を築いているという噂は既に城内に知れ渡り、城内の女性の使用人からは冷ややかな視線で見られている。仕方ない事とは言え、今後はこんな視線にも耐えなければならないのかと嘆く。


(早く元の世界へ戻りたい……でも、その前に色々と問題を解決しないと駄目か)


ヒトノ帝国に残してきたクラスメイト達の事も気にかかり、他にもケモノ王国まで連れて来てくれたリル達の力にもならなければならない。ここまでの道中でリル達のお陰で命拾いした場面もあり、彼女達の力にもなりたいという気持ちはあった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...