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獣人王国編
第213話 黒狼騎士団の猛者
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「ここにいる勇者レアは先日、ライオネル大将軍と互角の勝負を繰り広げた!!そして勇者にしか扱えない加護と呼ばれる能力を持っている!!」
「あのライオネル大将軍と……!?」
「加護……勇者の加護の事か!?」
「諸君の中で自分の腕に自信がある者は前に出ろ!!ここにいるレアに傷一つでもつける人間がいたら白狼騎士団の副団長の座を渡そう!!」
「ええっ!?」
「リル様!?」
リルの発言にレアとチイは驚き、正直に言えば二人にとってはとんでもない話だが、傷を与えるだけで副団長の地位が与えられると知って黒狼騎士団の者達は目の色を変える。そして真っ先に手を上げたのは全身を甲冑で覆った男だった。
「よし、俺がやろう!!勇者など、この槍で一突きよ!!」
「ほう、威勢が良いな……名前と称号を言えっ!!」
「俺の名はオウソウ!!称号は重騎士にして、ケモノ王国一の武人だ!!」
名乗り上げたのは身長が180センチを超える甲冑の大男であり、その手には大きな盾とランスを身に着けていた。オウソウと名乗る男は前に出るとレアと向き合い、ランスの刃先を構えた。
「リルル王女!!本当にこの男に掠り傷でも付ける事が出来たら副団長の地位を与えてくれるのだな!?」
「ああ、女に二言はない。約束しよう」
「その言葉、お忘れないように……さあ、お前も構えろっ!!」
「はあ……何でこうなるのかな」
レアはオウソウと向き合うとため息を吐き出し、ここで不思議と自分が落ち着いている事に気付く。これまでに戦った相手と比べると目の前のオウソウに微塵の恐怖も感じられず、ライオネルと相対した時のような恐怖も感じられなかった。レアは念のために解析を発動させ、相手の詳細画面を開く。
(オウソウ、レベルは38か……リルさんよりも上なんだな)
ライオネルには及ばないがレベルはそれなりに高く、団長であるリルよりも上だった。ちなみにリル達のレベルは低い理由は彼女達の普段の任務が潜入活動が主だからであり、魔物と戦う機会は少ないからである。それでも「レベル=強さ」という形式ではなく、レベルが高いからと言って必ずしもレベルの低い人間に勝るとは言い切れない。
オウソウはレアと向かい合うと大盾を構えて防御の体勢を取り、槍を構える。それを見てレアはどうするべきか考え、ここで能力を使うべきか悩む。
(う~ん……この人だったら問題はないかな)
レアは腰に差していたアスカロンに手を伸ばすと、リルの合図も待たずに先にオウソウが仕掛けてきた。彼は奇声のような掛け声と共に大盾で身を守りながら突進を仕掛ける。
「きえぇえええっ!!」
「何、その掛け声っ……おっとと」
盾を使って体当たりを仕掛けたオウソウをレアは右に回避すると、オウソウは舌打ちしながらも体勢を整え、ランスを振り払う。だが、速度が「9倍」に強化されているレアにとってはオウソウの攻撃など避けるのは容易く、文字変換の能力を使わずとも簡単に攻撃を回避できた。
「こ、このっ!!ちょこまかと動きおって!!」
「よっ、ほっ……」
「くそっ……乱れ突き!!」
「おっと」
戦技を発動させてオウソウは連続で突きを放つが、速度を強化した影響なのか、あるいは複数の視覚系の技能を習得したのが原因なのかは分からないが、動体視力の方も以前よりも強化したレアは槍の軌道を読み切って回避する。その彼の動作に騎士団の者達は驚く。
何度もオウソウは槍を繰り出すが、レアの身体に掠る事もなく、それどころか逆に攻撃を仕掛けるオウソウの方が体力を消耗していく。やがてオウソウは戦技を解除すると、肩で息を荒げながら怒鳴りつけた。
「こ、このっ……さっきから逃げてばかりで恥ずかしくないのか!!まともに戦えっ!!」
「はあ、じゃあ……行きます」
レアはオウソウの言葉にアスカロンを構えると、彼の元に向けて駆け出す。まさか本当に攻撃を仕掛けてくるとは思わなかったオウソウは慌てて大盾で身を隠そうとするが、そんな彼に対してレアはアスカロンを振り切る。
「はああっ!!」
「その程度の攻撃……うおおっ!?」
「た、盾がっ!?」
「切り裂いたっ!?」
大盾で身を防ごうとしたオウソウだったが、レアのアスカロンは「切断力」に特化した聖剣であり、まるでバターの如く大盾を簡単に切り裂いた。横向きに剣を振り払ったので左右に切り裂かれた大盾は地面に落ちると、オウソウは驚愕のあまりに腰を抜かしてしまう。
その様子を見たレアはアスカロンを鞘に戻すと、リルに振り返る。彼女もオウソウを見てこれ以上の勝負の必要はないと判断し、一応はオウソウに確認を取った。
「どうだ?まだ続けるか?」
「ぐっ……くそぉっ!!」
「……勝負有り!!」
オウソウは敗北を認めざるを得ず、ランスを投げ捨てる。それを見たリルがレアの勝利を宣言すると、他の騎士達は拍手を送る。
「あのライオネル大将軍と……!?」
「加護……勇者の加護の事か!?」
「諸君の中で自分の腕に自信がある者は前に出ろ!!ここにいるレアに傷一つでもつける人間がいたら白狼騎士団の副団長の座を渡そう!!」
「ええっ!?」
「リル様!?」
リルの発言にレアとチイは驚き、正直に言えば二人にとってはとんでもない話だが、傷を与えるだけで副団長の地位が与えられると知って黒狼騎士団の者達は目の色を変える。そして真っ先に手を上げたのは全身を甲冑で覆った男だった。
「よし、俺がやろう!!勇者など、この槍で一突きよ!!」
「ほう、威勢が良いな……名前と称号を言えっ!!」
「俺の名はオウソウ!!称号は重騎士にして、ケモノ王国一の武人だ!!」
名乗り上げたのは身長が180センチを超える甲冑の大男であり、その手には大きな盾とランスを身に着けていた。オウソウと名乗る男は前に出るとレアと向き合い、ランスの刃先を構えた。
「リルル王女!!本当にこの男に掠り傷でも付ける事が出来たら副団長の地位を与えてくれるのだな!?」
「ああ、女に二言はない。約束しよう」
「その言葉、お忘れないように……さあ、お前も構えろっ!!」
「はあ……何でこうなるのかな」
レアはオウソウと向き合うとため息を吐き出し、ここで不思議と自分が落ち着いている事に気付く。これまでに戦った相手と比べると目の前のオウソウに微塵の恐怖も感じられず、ライオネルと相対した時のような恐怖も感じられなかった。レアは念のために解析を発動させ、相手の詳細画面を開く。
(オウソウ、レベルは38か……リルさんよりも上なんだな)
ライオネルには及ばないがレベルはそれなりに高く、団長であるリルよりも上だった。ちなみにリル達のレベルは低い理由は彼女達の普段の任務が潜入活動が主だからであり、魔物と戦う機会は少ないからである。それでも「レベル=強さ」という形式ではなく、レベルが高いからと言って必ずしもレベルの低い人間に勝るとは言い切れない。
オウソウはレアと向かい合うと大盾を構えて防御の体勢を取り、槍を構える。それを見てレアはどうするべきか考え、ここで能力を使うべきか悩む。
(う~ん……この人だったら問題はないかな)
レアは腰に差していたアスカロンに手を伸ばすと、リルの合図も待たずに先にオウソウが仕掛けてきた。彼は奇声のような掛け声と共に大盾で身を守りながら突進を仕掛ける。
「きえぇえええっ!!」
「何、その掛け声っ……おっとと」
盾を使って体当たりを仕掛けたオウソウをレアは右に回避すると、オウソウは舌打ちしながらも体勢を整え、ランスを振り払う。だが、速度が「9倍」に強化されているレアにとってはオウソウの攻撃など避けるのは容易く、文字変換の能力を使わずとも簡単に攻撃を回避できた。
「こ、このっ!!ちょこまかと動きおって!!」
「よっ、ほっ……」
「くそっ……乱れ突き!!」
「おっと」
戦技を発動させてオウソウは連続で突きを放つが、速度を強化した影響なのか、あるいは複数の視覚系の技能を習得したのが原因なのかは分からないが、動体視力の方も以前よりも強化したレアは槍の軌道を読み切って回避する。その彼の動作に騎士団の者達は驚く。
何度もオウソウは槍を繰り出すが、レアの身体に掠る事もなく、それどころか逆に攻撃を仕掛けるオウソウの方が体力を消耗していく。やがてオウソウは戦技を解除すると、肩で息を荒げながら怒鳴りつけた。
「こ、このっ……さっきから逃げてばかりで恥ずかしくないのか!!まともに戦えっ!!」
「はあ、じゃあ……行きます」
レアはオウソウの言葉にアスカロンを構えると、彼の元に向けて駆け出す。まさか本当に攻撃を仕掛けてくるとは思わなかったオウソウは慌てて大盾で身を隠そうとするが、そんな彼に対してレアはアスカロンを振り切る。
「はああっ!!」
「その程度の攻撃……うおおっ!?」
「た、盾がっ!?」
「切り裂いたっ!?」
大盾で身を防ごうとしたオウソウだったが、レアのアスカロンは「切断力」に特化した聖剣であり、まるでバターの如く大盾を簡単に切り裂いた。横向きに剣を振り払ったので左右に切り裂かれた大盾は地面に落ちると、オウソウは驚愕のあまりに腰を抜かしてしまう。
その様子を見たレアはアスカロンを鞘に戻すと、リルに振り返る。彼女もオウソウを見てこれ以上の勝負の必要はないと判断し、一応はオウソウに確認を取った。
「どうだ?まだ続けるか?」
「ぐっ……くそぉっ!!」
「……勝負有り!!」
オウソウは敗北を認めざるを得ず、ランスを投げ捨てる。それを見たリルがレアの勝利を宣言すると、他の騎士達は拍手を送る。
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