解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
214 / 367
獣人王国編

第212話 白狼騎士団と黒狼騎士団

しおりを挟む
「そ、そんな……父上、どうか御考え直しを!!」
「黙れ!!これは王命である!!お主はもう国王に就く資格はない、しばらくの間は謹慎させる!!ライオネル、連れて行け!!」
「はっ!!」
「待ってください、父上!!父上ぇええっ!!」


必死にガオは泣き叫ぶが、そんな彼を見たくもない国王は目を反らし、ライオネルに玉座の間の外へ連れ出すように命じた。残されたギャンに関しても兵士達が連行し、これで二人の処罰を見届けたリルは国王に頭を下げる。


「陛下、お疲れ様でした」
「……もうよい、しばらくの間は一人にさせてくれ。全員、出て行ってくれ」


国王の立場として実の息子であるガオに罰を与えた事に対して国王は落ち込み、誰とも話したくはなかった。国王の気持ちを察した他の人間達は玉座の間から離れると、レアは連れ去られた王子の事を思い出す。


(……子供だったな、思っていたよりもずっと)


リルの弟だと聞いてはいたが、まさか訪れたのが自分とそんなに年齢の変わらない少年だと知ったレアもショックを隠せない。結果的にはレアの行いによってガオ王子もギャン宰相もあのような姿になってしまった事に心苦しい。

だが、悪事を行った彼等を許すわけにはいかず、今回の国王の判断は正しかった。このまま二人を放置すれば国に災いを引き起こす可能性がある以上、許すわけにはいかない。ギャンの命を奪わなかったのは国王の最後の恩情であり、ガオの方も謹慎だけで済んだ。


(同情するな、ここからが大切な場面なんだ)


気持ちを切り替えてレアは共に歩いているリル達に視線を向けると、彼女達は頷いて城内の敷地で待機している黒狼騎士団の元に赴く。その人数は300人は超え、ガオが集めたこの国の中でも武芸に秀でている者達が集まっていた。


「聞け!!黒狼騎士団の猛者たちよ!!ここにおられるのが白狼騎士団の団長であり、このケモノ王国の王女にして王位継承権を持つリルル王女様だ!!」
『っ……!?』


最初にチイが黒狼騎士団の者達にリルの紹介を行うと、騎士団の人間達は目を見開き、リルル王女と知ってその場で跪く。彼等からすれば自分達の主人であるガオが敵対している存在が現れた事に心中穏やかではないだろう。

黒狼騎士団はガオが結成した集団であるため、彼に忠誠を誓う事を条件に彼等は騎士団に入った。しかし、そのガオと敵対しているはずのリルルが今後は黒狼騎士団に管理を任された事に彼等は自分達がどうなるのかと不安を抱く。その気持ちを読み取ったようにリルは語り掛けた。


「最初に私がお前達に命じる事はただ一つ!!黒狼騎士団は本日を以て解散とする!!」
「そ、そんな!?」
「俺達はどうなるんですか!?」
「こっちは仕事を辞めて入ったんですよ!?」
「静まれ!!リルル王女様の御言葉を遮る気か!!」


リルルの発言に黒狼騎士団は騒ぎ出すが、それを見かねたハンゾウが剣を引き抜いて怒鳴りつけると彼等は黙り込む。そんな彼等に安心させるようにリルルは語り掛ける。


「案ずるな!!今後は黒狼騎士団の団員は白狼騎士団に加入してもらう!!待遇に関しては今まで通りと変わりはない!!」
「おおっ……」
「よ、良かった……」


待遇が変わらないという発言に団員達は安堵するが、そんな彼等を見てリルルは表情を一変させて怒鳴りつけた。


「しかし!!この中にもしもガオの命令を受け、悪逆非道な真似をした者がいれば私は容赦なく切り捨てる!!事前に言っておくが騎士という身分を利用して民を乱暴に扱う者は決して許さないぞ!!」
『はっ、はい!!』
「それと今後は私の管理下に入る以上、私の指示に従ってもらう!!私に忠誠を誓えっ!!何があろうと私を裏切らないと誓えるかっ!?」
『はい!!リルル王女様!!』
「王女ではない、今から私の事は団長と呼べ!!」
『団長!!』


300人の騎士を相手にリルルは堂々とした態度で対応を行い、それだけの事で騎士達の中には彼女に尊敬の念を抱く物もいた。彼等はガオに集められた武芸者だが、ガオと比べてもリルルは王族としての覇気と威風を持ち合わせていた。

ほんのわずかな時間で騎士達の不安を取り除き、自分に忠誠を忠誠を誓わせたリルルにはレアも尊敬せざるを得ず、他の者達も誇らしげに彼女を見つめる。一方でリルルは真剣な表情を浮かべ、黒狼騎士団に命令を与える。


「黒狼騎士団はこの日、この場を以て解散を宣言する!!お前達はこれからは白狼騎士団を名乗れ!!」
『承知しました、団長!!』
「また、お前達に紹介したい人がいる。ここにおられるのが帝国から訪れた勇者、レアだ!!」
『勇者……!?』
「あ、どうも……」


勇者という言葉に騎士達は驚くが、そんな彼等にレアはいつもの調子で軽く頭を下げる。そんな彼を見て騎士達は呆気に取られるが、ここで勇者という存在を軽く見られるのはまずいと思ったリルはレアにある事を頼む。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...