解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
208 / 367
獣人王国編

第206話 ギャンの自白

しおりを挟む
「ギャン宰相、今から俺の聞くことを嘘偽りなく答えてくれますか?」
「ふざけるな!!いったい誰のせいで儂がこんな目にあったと思っている?」
「どうやら自分の立場をまだ理解していないようですね、貴方の目の前に存在するのは勇者様なんですよ」
「勇者だと……ふざけおって!!貴様などただの人間のガキではないか!!」
「勇者殿に対しての侮辱は止めろ!!彼はこの俺を倒したのだ!!」
「な、何だと……!?」


ライオネル自身がレアに敗北した事を告げると、ギャンは信じられないという表情を浮かべ、仮にも大将軍であるライオネルを破ったというレアに恐れを抱く。ライオネルの性格上、彼が自分が敗北したなどと言う虚言を吐くはずがなく、実際に彼が負けたという話は本当なのだとギャンは信じた。

レアは地下牢に送り込まれてもギャンの態度が変わっていない事から彼がまだ諦めていない事を察すると、確かにリリスの言う通りにこの機会を逃さずに彼の悪事を暴き、罪人として収監させた方が良いと考えた。そのためにはギャンの口から悪事を暴露させる必要があり、視界に表示された詳細画面にレアは指先を構える。


(実験開始だ……まずは状態の項目を変えてみるか)


文字変換の能力を密かに発動させ、詳細画面に指先を伸ばしたレアは「健康」の文字を別の文字へと変換させる。この際に色々と考えた結果、ここは「自白」という文字を打ち込む。


(さあ、どうなる?)


文字を打ち込んだレアは次にギャンにどのような質問をするのかを考え、そして彼が先日に関わった事件の真相を尋ねる。


「ギャン宰相、昨日起きた城内での殺人事件……犯人は貴方ですね?」
「なっ!?ち、ちがっ……うぐぅっ!?」
「何だ?急にどうした?」


レアの質問にギャンは咄嗟に否定しようとするが、何故か口元を抑えて訳が分からないという表情を浮かべる。それを見たリリスはすぐにライオネルの配下の兵士に命じた。


「その人の腕を抑えて口を開かせてください!!」
「な、何?」
「どうしてそんな事を……」
「……言う通りにしてやれ」


リリスの言葉に兵士達は戸惑うが、ライオネルが賛同したために彼等は慌ててギャンの両腕を抑える。必死にギャンは抵抗しようとするが、そんな彼にレアは再度質問した。


「答えてください!!ケマイヌと警備隊長を殺したのは貴方の仕業なんですか!?」
「あ、ああっ……そ、そうだ。二人を、殺すように命じたのは……儂だ!!」
「何だと!?」


レアの質問にギャンは苦痛の表情を浮かべながら認めると、ライオネルが驚愕の表情を浮かべた。それは他の兵士達も同じであり、あっさりとレアの質問に答えた事に彼等も動揺する。だが、事情を察したリリスは次の質問を行う。


「じゃあ、ケマイヌに命じて一般人を集めて黒狼騎士団の仮装をさせて王都の周囲の見回りを行うように命じたのも貴方ですか?」
「そ、そうだ……ケマイヌに金を渡し、借金で困っている奴等を集めるように命じた。偽物の鎧を用意させたのも儂だ……」
「い、いったいどうなっている……どうして急にこいつは白状を始めた?」
「しっ……今が良い所なんですから静かに」


唐突に「自白」を始めたギャンにライオネルは戸惑うが、リリスがこの機を逃さずに質問を行う。


「貴方がケマイヌと警備隊長を殺したのは自分に関する情報を漏らさないようにするためですね」
「その通りだ……奴等を生かしておけば、儂も無事ではいられん。そう思って、兵士に命じて殺させた……自分達で自害した様に見せかけてな」
「なんて事を……自分が助かるために二人を殺したのか!?」
「それの、何が悪い!?儂と奴等では失う物が違うのだ……それに失敗した奴等は死んで当然だ!!」
「こ、この男……!!」


ギャンの言い分に尋問室の誰もが目つきを鋭くさせ、ライオネルに至っては今にも殴りつけるのではないかと思えるほどに髪の毛や顎鬚を獅子のように逆立たせる。だが、ギャンの方は自分がどうして他人の質問に嘘を吐く事が出来ないのか分からず、激しく混乱していた。

とりあえずは先の2つの事件がギャンの仕業だと判明し、その他の彼の質問はリリスに任せる事にしたレアは椅子から立ち上がる。そして困惑しているライオネルに事情を説明した。


「ライオネル将軍、今ならこの男は質問された事は全部答えると思います」
「あ、ああ……だが、奴に何をしたのだ?」
「一言で言えば……これが勇者である俺の力です」
「勇者の、力……?」
「要するにレアさんの力でこのギャンは嘘を吐けない身体にしたんです。今ならどんな質問にも答えると思いますよ」
「おおっ……!!」
「こ、これが勇者の力……「加護」なのか!!」


リリスの説明に兵士達は感嘆の声を上げ、ライオネルでさえも信じてしまう。ギャンは自分の異変の正体がレアだと気づき、彼は本当に自分の目の前に存在する少年が「勇者」だと思い知らされる。


「そ、そんな……儂は、本当に勇者に手を出したというのか」
「……言っておきますけど、貴方はもう隠し事が出来ない身体にしました。だから無駄な抵抗は止めた方が良いですよ」


レアの言葉を聞いたギャンは目を見開き、直後に怒りを抱いたように顔を紅潮させ、兵士達を振り払ってレアに飛び掛かろうとした。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

処理中です...