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獣人王国編
第203話 渾身の一撃
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「ぐふぅっ……中々の攻撃だったぞ。だが、その程度では俺は倒せん!!」
「……まだ、これからです」
口元に血を流し、身体のあちこちに痣を作りながらもライオネルは不敵な笑みを浮かべ、今も腰痛に襲われているにも関わらずにレアと向き合う。身体が不調の状態でも大将軍の意地で戦うライオネルに対してレアは冷や汗を流し、想像以上のライオネルの我慢強さに汗を掻く。
(この人、本当に強い……レベルの差もあるとしても、ここまで耐えるなんて普通じゃない。これが、大将軍なのか……)
肉体面に関しては恐らくはレアがやや勝っているだろうが、ここまでの攻撃でライオネルは損傷は受けても倒れる様子はない。レアの攻撃が通じていないわけではないが、強靭な精神力が肉体を支えていたように感じられる。
自分が優勢のはずなのにレアは追い詰められる感覚に陥り、今までの敵の中ではライオネルよりも厄介な相手は何人もいた。それなのにレアはライオネルが恐ろしく思い、このまま戦い続けてもライオネルが倒せる自信がない。
(この人に敗北を認めさせるなんて出来るのか……いや、弱気になるな!!)
このまま試合を続けてもライオネルが敗北を認めるなど想像できないレアだったが、負けられないのはレアも同じであり、ここで勇者として認めて貰うために最後まで諦めるつもりはなかった。
(落ち着け、精神で負けるな……今までだって何度もこんな状況を乗り越えてきたんだ。考えろ、ライオネルさんに勝つ方法を……)
ライオネルに負けたくないという思いを抱いたレアはどうすれば彼に勝てるのかを考え、ここで文字変換の能力を使ってライオネルのステータスを下げるべきかと思いつく。だが、レベルを下げるにしろ上げるにしろ、唐突にライオネルの肉体に異変を見せれば他の者達が疑問を抱くだろう。
レアは自分の能力が敵対する相手のステータスを下げる力だと説明すれば納得してくれるかもしれない。しかし、出来る事ならば自分の能力の秘密は他の人間に知られたくはない。その点に関してはリル達からも注意を受けており、レアは今回の試合は最後は自分の力で勝たなければならない。
(今の所はライオネルさんは腰痛の原因が俺だとは気付いていないみたいだ……でも、腰痛程度じゃこの人は倒れない。どうする……せめて、もっと強い力があれば……力?)
レアはここで自分のステータス画面を思い出し、とある方法を思いつく。もしもこの作戦が上手く行けばライオネルを倒せるかもしれないが、レア自身も相当な代償を負う事になる。それでも勝ちたいと思ったレアは覚悟を決め、ライオネルの我慢強さを見習って自分も痛みに耐えて勝つ事を決意した。
「ライオネル大将軍……次の一撃で終わらせます」
「何……大きく出たな、その程度の力で俺を倒せると思っているのか!?」
「倒します」
「……ほう、どうやら本気で言っているようだな」
ライオネルは挑発のようなレアの発言に鼻で笑うが、レアの態度と尋常ではない気迫を感じ取り、異様な迫力に冷や汗を流す。このレアの発言は挑発よりも自分自身を追い詰めるための言葉と言った方が正しく、もう後には引けない状況を自ら作り出す。
試合を観戦する者達も次の攻防でレアとライオネルの勝負が決まると確信すると、二人は互いに向き合い、ライオネルは両腕を左右に伸ばして迎撃の体勢を取った。一方でレアの方は右拳を握り締め、左手の指先を視界に表示させた自分のステータス画面に向ける。チャンスは1回限り、もしも失敗すればレアの敗北は免れない。
「……行くぞ、ライオネル!!」
「来いっ!!返り討ちにしてやるっ!!」
レアは気合を込めて怒鳴りつけると、ライオネルも目を血走らせて両腕の筋肉を肥大化させた。その光景に他の者達は圧倒され、これ以上に戦えばどちらも無事では済まないと判断した国王は止めようとした。
「ま、待て二人と……」
「うおおおおっ!!」
「がああああっ!!」
しかし、国王の制止の言葉を言い切る前にレアは駆け出すと、ライオネルも両腕を振り翳す。正面から打ち込もうとするレアに対して、ライオネルは左右の腕を振りぬいて攻撃を仕掛けようとしたが、レアは攻撃を仕掛ける前に左手の指先でステータス画面の「レベル」の項目に触れる。
(……ここだ!!)
攻撃を行う寸前、レアは自分のレベルを「30」から「60」という文字に変化させると、画面が更新される。文字変換でレベルを上昇させる際、レアは一瞬の間の後に成長痛に襲われてまともに身体が動けなくなってしまう。
――しかし、逆に言えばレベルを上げた際に「一瞬」だけレアは成長痛に襲われず、レベルが上昇した状態で攻撃を繰り出す事が出来る。これを利用してレアはほんの僅かな時間ではあるが、ライオネルよりも高いレベルとなって攻撃を行う。
「うおおおおっ!!」
「っ――!?」
レベルが文字通りに倍に上昇したレアの拳がライオネルの腹部に叩きつけられ、そのまま彼の身体を後方へと吹き飛ばし、壁に叩きつける。あまりの威力にライオネルは白目を剥いて倒れ込み、意識を失った。
だが、それと同時にレアの方もレベルを倍に上昇させた事で激痛に襲われ、悲鳴を上げる事も出来ずに倒れ込む。身体が引き千切られるかのような感覚に陥るが、どうにか指先を伸ばしてレアは自分のステータス画面のレベルを元へ戻す。その作業の直後、身体の痛みは引いたがやがて意識が遠のき、そのまま気絶してしまう――
「……まだ、これからです」
口元に血を流し、身体のあちこちに痣を作りながらもライオネルは不敵な笑みを浮かべ、今も腰痛に襲われているにも関わらずにレアと向き合う。身体が不調の状態でも大将軍の意地で戦うライオネルに対してレアは冷や汗を流し、想像以上のライオネルの我慢強さに汗を掻く。
(この人、本当に強い……レベルの差もあるとしても、ここまで耐えるなんて普通じゃない。これが、大将軍なのか……)
肉体面に関しては恐らくはレアがやや勝っているだろうが、ここまでの攻撃でライオネルは損傷は受けても倒れる様子はない。レアの攻撃が通じていないわけではないが、強靭な精神力が肉体を支えていたように感じられる。
自分が優勢のはずなのにレアは追い詰められる感覚に陥り、今までの敵の中ではライオネルよりも厄介な相手は何人もいた。それなのにレアはライオネルが恐ろしく思い、このまま戦い続けてもライオネルが倒せる自信がない。
(この人に敗北を認めさせるなんて出来るのか……いや、弱気になるな!!)
このまま試合を続けてもライオネルが敗北を認めるなど想像できないレアだったが、負けられないのはレアも同じであり、ここで勇者として認めて貰うために最後まで諦めるつもりはなかった。
(落ち着け、精神で負けるな……今までだって何度もこんな状況を乗り越えてきたんだ。考えろ、ライオネルさんに勝つ方法を……)
ライオネルに負けたくないという思いを抱いたレアはどうすれば彼に勝てるのかを考え、ここで文字変換の能力を使ってライオネルのステータスを下げるべきかと思いつく。だが、レベルを下げるにしろ上げるにしろ、唐突にライオネルの肉体に異変を見せれば他の者達が疑問を抱くだろう。
レアは自分の能力が敵対する相手のステータスを下げる力だと説明すれば納得してくれるかもしれない。しかし、出来る事ならば自分の能力の秘密は他の人間に知られたくはない。その点に関してはリル達からも注意を受けており、レアは今回の試合は最後は自分の力で勝たなければならない。
(今の所はライオネルさんは腰痛の原因が俺だとは気付いていないみたいだ……でも、腰痛程度じゃこの人は倒れない。どうする……せめて、もっと強い力があれば……力?)
レアはここで自分のステータス画面を思い出し、とある方法を思いつく。もしもこの作戦が上手く行けばライオネルを倒せるかもしれないが、レア自身も相当な代償を負う事になる。それでも勝ちたいと思ったレアは覚悟を決め、ライオネルの我慢強さを見習って自分も痛みに耐えて勝つ事を決意した。
「ライオネル大将軍……次の一撃で終わらせます」
「何……大きく出たな、その程度の力で俺を倒せると思っているのか!?」
「倒します」
「……ほう、どうやら本気で言っているようだな」
ライオネルは挑発のようなレアの発言に鼻で笑うが、レアの態度と尋常ではない気迫を感じ取り、異様な迫力に冷や汗を流す。このレアの発言は挑発よりも自分自身を追い詰めるための言葉と言った方が正しく、もう後には引けない状況を自ら作り出す。
試合を観戦する者達も次の攻防でレアとライオネルの勝負が決まると確信すると、二人は互いに向き合い、ライオネルは両腕を左右に伸ばして迎撃の体勢を取った。一方でレアの方は右拳を握り締め、左手の指先を視界に表示させた自分のステータス画面に向ける。チャンスは1回限り、もしも失敗すればレアの敗北は免れない。
「……行くぞ、ライオネル!!」
「来いっ!!返り討ちにしてやるっ!!」
レアは気合を込めて怒鳴りつけると、ライオネルも目を血走らせて両腕の筋肉を肥大化させた。その光景に他の者達は圧倒され、これ以上に戦えばどちらも無事では済まないと判断した国王は止めようとした。
「ま、待て二人と……」
「うおおおおっ!!」
「がああああっ!!」
しかし、国王の制止の言葉を言い切る前にレアは駆け出すと、ライオネルも両腕を振り翳す。正面から打ち込もうとするレアに対して、ライオネルは左右の腕を振りぬいて攻撃を仕掛けようとしたが、レアは攻撃を仕掛ける前に左手の指先でステータス画面の「レベル」の項目に触れる。
(……ここだ!!)
攻撃を行う寸前、レアは自分のレベルを「30」から「60」という文字に変化させると、画面が更新される。文字変換でレベルを上昇させる際、レアは一瞬の間の後に成長痛に襲われてまともに身体が動けなくなってしまう。
――しかし、逆に言えばレベルを上げた際に「一瞬」だけレアは成長痛に襲われず、レベルが上昇した状態で攻撃を繰り出す事が出来る。これを利用してレアはほんの僅かな時間ではあるが、ライオネルよりも高いレベルとなって攻撃を行う。
「うおおおおっ!!」
「っ――!?」
レベルが文字通りに倍に上昇したレアの拳がライオネルの腹部に叩きつけられ、そのまま彼の身体を後方へと吹き飛ばし、壁に叩きつける。あまりの威力にライオネルは白目を剥いて倒れ込み、意識を失った。
だが、それと同時にレアの方もレベルを倍に上昇させた事で激痛に襲われ、悲鳴を上げる事も出来ずに倒れ込む。身体が引き千切られるかのような感覚に陥るが、どうにか指先を伸ばしてレアは自分のステータス画面のレベルを元へ戻す。その作業の直後、身体の痛みは引いたがやがて意識が遠のき、そのまま気絶してしまう――
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