解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第195話 倍率変換

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「他にも色々と気になる事はありますけど……そうですね、次は倍率を変換できるのか試しましょう」
「倍率?」
「例えばフラガラッハの攻撃力3倍増の効果を、数字を3から別の数字へ変換させる事も出来ますか?」
「う~ん、試した事はないけど……やってみるね」


リリスの言葉にレアは自分のフラガラッハを手に取ると、解析を発動させて詳細画面を開く。その際に画面に表示された「攻撃力3倍増」に指先を向け、数字を変換させる。


「多分、大丈夫だと思うけど……ていっ!!」
『攻撃力9倍増』


指先で数字を書き換えた途端、フラガラッハが一瞬だけ光り輝く。無事に成功したらしく、試しにレアは剣を握り締めた状態で何か試し切りは出来ないのかを問う。


「上手くいったと思うけど、何か切って試したいな」
「それならこの机でいいんじゃないですか?どうせ処分するしかないですし、ほら投げますよ!!」
「え、ちょっ!?」


リリスが先ほどハンゾウによって切り裂かれた机を持ち上げると、意外に力があるのかレアの元へ投げ込む。唐突に投げつけられた机に対してレアは咄嗟にフラガラッハを構えると、まるでアスカロンの如き切れ味で机を真っ二つに切り裂く。

そのあまりの切れ味に全員が驚く中、レアの方もリリスの言ったとおりに攻撃力が強化されている事に冷や汗を流し、同時に倍率の変換も行える事を知る。


(そうか、数字を書き換えれば一桁の数字でも9倍まで上昇させる事ができるのか……という事はもしかしたら俺が覚えている技能で数字が表示されている能力も強化できるかもしれない)


レアは「剛力(攻撃力が4倍)」「金剛(防御力が4倍)」「神速(速度が4倍)」の3つの身体強化系の技能を覚えており、これらの能力も文字変換を利用すれば更に倍率を強化する事が出来る。そうなればこれまで苦戦してきた相手とも能力無しでも戦える力を手に入れられるかもしれない。

最初は文字を変換させるだけの能力など何の役に立つのかと嘆いたが、ここまでレアが生き延びれたのはこの文字変換の能力の恩恵であり、正に名前通りに「レア」な能力だった。だが、ここで気になるのは何者が自分にこの能力を授けたかである。


(この世界に転移したとき、聞こえてきたあの女の人の声……あれは誰の声だったんだろう?)


最初にヒトノ帝国に召喚された際、レアは学校の教室から帝城の召喚の間に転移する際に聞こえた声を思い出す。しかし、考えた所で声の主の正体を現時点の情報だけで推察する事は不可能だった。


(考えても仕方がないか……それより、あっちの世界に戻る方法を探さないと)


レアはケモノ王国へ訪れたのはリル達を手助けするためだけではなく、元の世界へ戻る手掛かりを得るためであった。フラガラッハを鞘に戻した後、レアはリルに振り返って用件を尋ねようとした時、扉の方がノックされた。


『勇者様、食事の準備が出来ました。入ってもよろしいですか?』
「え?あ、えっと……」
「私達がここにいるのを知られるとまずい……皆、隠れる」


使用人と思われる女性の声が外側から響き、どうやら食事を運んできたらしい。すぐにリル達は部屋の中に身を隠すと、レアは扉の方へ向かう。


『勇者様、食事を運んできましたので中に入ってもよろしいですか?』
「ああ、うん問題ない……いや、ちょっと待って!?少しだけ待って!?」
『は、はい?』


だが、ここでレアは切り裂かれた机の存在を思い出して慌てて片付けを行う。机に関しては早急にフラガラッハで細々に切り裂き、それをリュックの中に放り込む。その後は新しい机を用意する羽目になり、仕方なく解析と文字変換の能力で「机」を生み出す。今回は事前に最初に存在した机のデザインを覚えていたので制作に成功すると、扉を開くと数名の使用人が入り込み、食事の準備を行う。

彼等は食事を用意すると部屋に待機しようとしたが、それをレアは断って外で待っているように促す。使用人も仕事のために部屋に残ろうとしたのだろうが、一人じゃないと落ち着いて食べられないと適当な言い訳をして部屋から退室させた。


「それでは勇者様、何か用事がありましたらお呼びください」
「では、ごゆっくりどうぞ」
「うん、ありがとう……」


女性の使用人に部屋の外に待機してもらうと、レアは扉を閉じて安心した表情を浮かべる。部屋の中から使用人が消えた事を察知したのか、隠れていた者達が姿を現すと、クローゼットにて部屋の中の様子を覗き見していたのかリルはため息を吐く。


「全く、陛下め……もう先手を打ってきたか」
「え?先手?」
「さっきの女性使用人達の顔を見ただろう?妙に綺麗な顔立ちの娘ばかりだと気付かなかったのかい?」
「言われてみれば……」
「それに食事の方も見てくださいよ。美味しそうに見えますけど、これ全部滋養強壮効果が高い料理ですよ」
「きゅろろっ♪」
「ぷるぷるっ♪」
「あ、こら、勝手に食べちゃ駄目でしょっ」


机の上に並べられた料理を見てリリスが滋養強壮の効果がある食材ばかりで作られた事を見抜くと、サンとクロミンが嬉しそうに食べ始める。
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