解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ

大中小

181 / 367

獣人王国編

第179話　勇者の歓迎

しおりを挟む

「ギャンよ、リルルの言う通りだ。リルルが使者としてキタノ山脈に向かったという報告は受けておる。リルルがヒトノ帝国から僅かな日数で戻って来た事をお主は説明できるのか？」
「いえ、それは……ですが、同行していた使者は戻ってきていません。もしかしたらリルル王女は影武者を立てて国内に残っていたのでは……」
「苦しい言い訳だな、それならどうして私はこんなにも早く姿を現した？お前の言う通りに私がガオを嵌めるためにわざと国内に残っていたとしても、わざわざこんなにも早く姿を現す理由がないだろう。それこそ牙路や牙山を越えて戻って来た、という普通ならば話しても簡単には信じて貰えない方法で戻って来たと報告するのか？」
「……言われてみればそうですな」

ギャンはリルの言葉に言い返す事が出来ず、リルがこんなにも早く戻って来た事に関してだけは彼も検討が付かなかった。これ以上に口を挟めば国王に怪しまれると思ったのかギャンは黙り込み、それを見た国王はリルに問う。

「リルルよ、勇者は……いや、勇者殿を連れて帰ったというのは本当か？」
「はい、それは本当です。私か、あるいは私の部下が迎えに行けば彼もここへ来てくれるでしょう」
「おおっ……ならば今すぐにその勇者を連れてくる事が出来るのか？もしも勇者を連れて帰ったというのであればリルは大きな功績を上げたことになる」
「しかし陛下……勇者を受け容れたとあればヒトノ帝国が黙っているとは思えません。王女の話が真実だとしても、勇者はこの国に災厄を呼び込む可能性も……」
「何を言っている？過去に召喚された勇者が他の国に亡命した前例も存在する、仮にヒトノ帝国が抗議した所で勇者殿と友好な関係を築ければ何も問題はない。それに帝国に４人の勇者を管理されるよりも、こちらも勇者の１人を管理すれば色々と都合がいいはずだ」
「うむ、確かにリルルの言う通りだ。勇者というのは伝承によれば強大な力を持つ存在に成長するかもしれんからな……その勇者を引き入れられるのであれば悪い話ではない」
「陛下がそうおっしゃるのであれば私はもう何も言いませんが……」

国王はリルの言葉に納得すると、ギャンは何も言い返せなかった。勇者という存在は国にとっても大きな利益を生み出す可能性が高く、実際に牙路や牙山を通過したというリルの話を聞いて国王は勇者に強い興味を抱く。

しかし、当の勇者であるレイナは困った表情を浮かべ、自分はここにいるのに勇者を迎えいれると言われても困り果てる。リルに何か考えがあるとは思うのだが、彼女が何を言い出すのかと視線を向けると、リルは国王に進言する。

「ではすぐに勇者殿を迎え入れましょう。しかし、その前に陛下には頼みたい事があります」
「頼み？」
「実を言うと私が連れ勝った勇者殿は帝国のウサンの不興を買い、ぞんざいな扱いを受けていました。最終的には命を狙われ、投獄までされたそうです」
「なんと……それは不憫だな」
「そこで陛下は勇者殿の事を大事に扱ってください。彼は臣下として迎え入れるのではなく、あくまでも客人として扱ってください」
「ふむ、そういう事情ならば無下には扱えないのう……よかろう、儂の権限で勇者殿には最高の待遇を約束しよう！！皆の者も勇者殿に対して失礼な態度を取るのではないぞ！！」
『はっ！！』

国王の命令に対して家臣達は従うと、それを見たリルは口元に笑みを浮かべ、これで勇者である「レア」を迎え入れる準備が出来た。そして彼女は国王に勇者を迎え入れる役目をチイ、ネコミン、レイナの３人に任せる事を告げた。

「私は謹慎を言い渡されたので迎えには行けませんが、私の配下の３人を向かわせれば勇者殿はすぐに訪れるでしょう。それと勇者殿を出迎える時は決して民衆には悟られないように配慮してください」
「うむ、分かった。ではギャンとリルルよ、お主達は儂の許可があるまでは自室と屋敷にて待機せよ。決して外に出てはならんぞ！！」
「はい、陛下」
「……かしこまりました」

リルとギャンは国王の命令を受けると下がり、リルは王城の自分の部屋へ向かい、ギャンは城下町に存在する自分の屋敷へと戻る。その一方でリル達が連れて来た兵士達はしばらくの間は王城で待機を言い渡され、取り調べを受ける事になった――

――リルは自分の部屋に戻ると、誰も入らなよぅに厳重に注意した後、レイナ達と向かい合う。話を盗み聞きされる事を配慮してリルは部屋の中を隈なく調べ、ネコミンの嗅覚で誰もいない事を調べさせてから安全を確認した。

「すんすんっ……大丈夫、私達以外に部屋の中には誰もいない」
「そうか、それなら安心して話が出来るな」
「リル様、これからどうされるおつもりですか？」
「俺が男に戻ってここまでくればいいんですか？」

安全を確認した後にリルに対してレイナ達は質問すると、彼女は腕を組んで窓の外の様子を伺いながら語り掛ける。

しおりを挟む