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獣人王国編
第176話 処罰の要求
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「……国王様、今のケマイヌの発言を聞いたでしょう。あの弟は私を殺すだけではなく、王女である私を辱めようとしたのです。それでも国王様はガオを許せと言うのですか!?」
「国王様!!いくら王子と言えど、この話が事実ならば決して許される事ではありません!!」
「そうですぞ!!これは許されざる大罪です!!」
「ぐぬぬっ……あの馬鹿め、今回ばかりは許せん!!今すぐにガオを呼び寄せよ!!」
リルの言葉に大臣たちも賛同し、国王も堪忍袋の緒が切れたのかガオを呼び戻すように伝えた。国王とリルはあまり仲が良くないとレイナは聞いていたが、こうして見ると国王もリルの事を娘として想っている事が感じられた。
(リルさん、ちょっと嬉しそうだな……やっぱり、親子なんだな)
レイナはリルの顔色を伺うと、彼女は他の人間には気付かれないように取り繕うが、口元に笑みを浮かべていた。自分よりもガオの事を大切にしている国王が自分のために激怒してくれた事が嬉しいのだろう。
だが、国王が自分に対して愛情を抱いている事を再確認しながらもリルは畳み掛け、ここで一気にガオの処罰を決めるように促す。
「陛下、もしもガオが戻ってきたらどのような処罰を与えるのかお聞かせください」
「むっ……そ、それはガオが戻ってきてから決めてもよいではないか?」
「お言葉ですが、私はあの愚弟の部下に危うく辱められるところでした。しかも私だけではなく、私の大切な騎士達にも手を出そうとしたのです。こればかりは許せません」
「そ、そうか……ならば、どのような処罰を与えるのかはお主に任せる」
「ありがとうございます、陛下」
『おおっ……!!』
国王は何かを諦めたようにリルにガオの処罰を決めるように命じた。それを聞いた大臣たちは声を上げ、チイとネコミンも嬉しそうに頷く。レイナもリルの言う通りに上手く事が運んだことに驚きを隠せない。
(なんか、完全にリルさんの作戦通りに事が進んでる気がする……でも、どんな罰を与えるつもりなんだろう)
ここでリルはガオ王子にどのような処罰を与えるのか気になり、全員が固唾を飲んで彼女の返事を待つ。そしてリルが悩んだ末に告げたのは意外な提案だった。
「それでは……ガオが結成した黒狼騎士団を解散させる、というのはどうでしょうか?」
「な、何……騎士団の解散?そんな事でいいのか?」
「はい」
「り、リル様?どうしてそんな……」
意外なリルの申し出に国王だけではなく、チイさえも戸惑う。レイナもリルの発言には驚いたが、彼女は説明を続けた。
「そもそも今回の事態はガオに騎士団を統率する権利を与えたのが問題なのです。私を襲った兵士達はこの王都の民ですが、彼等は黒狼騎士団に加入して貰えると勘違いして騙されて入ったんです。ならば今回の処罰でガオの結成した黒狼騎士団を解散させ、奴にはもう二度とと騎士団を作る事を許さないでください」
「それだけでいいのか?お主が望むのならばもっと重い罰でも儂は構わんが……」
「ええ、構いません。ですが、黒狼騎士団を解散するとなれば既に加入している者達も不満に思うでしょう。そこで彼等には本人の希望があるならば我が国の兵士としてならば受け入れる事を構わない事を伝えてください。また、女性に限り私の白狼騎士団に入団を希望する者がいれば私が面接を行い、必要と判断した人間を騎士団に加入する事も伝えてください」
「なるほど、黒狼騎士団の者達の中には強者が多いと聞いておる。確かにそんな人材をみすみす手放すのは惜しいな……よかろう、それでお主の気が済むのならば儂はお主の提案に従おう」
「ありがとうございます、陛下」
国王は安心した表情を浮かべ、彼はリルがてっきりガオに対してもっと重い処罰を与えると考えていた。しかし、彼女の提案した処罰は要するにガオが騎士団を結成する前の状況に戻るだけであり、そんな事で良いのであれば国王も反対はしない。
――しかし、今回のリルの提案を聞いてレイナは彼女の真の狙いを見抜く。黒狼騎士団が解散すればガオは自分の勢力を大きく削がれ、折角集めた優秀な人材を失う事に等しい。自分の意思で動かす事が出来る騎士団がいなくなればリルの命を狙うのも難しくなり、何よりも黒狼騎士団の者達にも恨みを持たれる可能性もあった。
黒狼騎士団は仮にも一国の王子であるガオが率いる騎士団となれば、それなりの地位を約束された立場だろう。しかし、騎士団が解散すれば彼等はただの兵士として働かなくてはならず、立場は一変する。しかも騎士団が解散した理由がガオ王子の凶行だと知れば彼等の心情も穏やかではなくなるだろう。
ガオは騎士団を失うだけではなく、騎士団に加入した者達に恨まれる可能性もあり、更に黒狼騎士団の女性隊員は敵対するリルの白狼騎士団に引き抜かれれば、ガオにとっては正に最悪な状況に陥る。味方の勢力を削がれ、恨まれ、リルの勢力が強まる。
しかも国王はリルが重い罰を与えなかった事に安心し、疑いもせずに彼女の処罰を引き受けた。これは国王がリルに対する信用も深まった事を示し、逆にガオの信用が下がったのは間違いない。こうしてリルはガオの失敗を最大限に生かし、敵の勢力を削ぐどころか自分の立場をより強固にした。
「国王様!!いくら王子と言えど、この話が事実ならば決して許される事ではありません!!」
「そうですぞ!!これは許されざる大罪です!!」
「ぐぬぬっ……あの馬鹿め、今回ばかりは許せん!!今すぐにガオを呼び寄せよ!!」
リルの言葉に大臣たちも賛同し、国王も堪忍袋の緒が切れたのかガオを呼び戻すように伝えた。国王とリルはあまり仲が良くないとレイナは聞いていたが、こうして見ると国王もリルの事を娘として想っている事が感じられた。
(リルさん、ちょっと嬉しそうだな……やっぱり、親子なんだな)
レイナはリルの顔色を伺うと、彼女は他の人間には気付かれないように取り繕うが、口元に笑みを浮かべていた。自分よりもガオの事を大切にしている国王が自分のために激怒してくれた事が嬉しいのだろう。
だが、国王が自分に対して愛情を抱いている事を再確認しながらもリルは畳み掛け、ここで一気にガオの処罰を決めるように促す。
「陛下、もしもガオが戻ってきたらどのような処罰を与えるのかお聞かせください」
「むっ……そ、それはガオが戻ってきてから決めてもよいではないか?」
「お言葉ですが、私はあの愚弟の部下に危うく辱められるところでした。しかも私だけではなく、私の大切な騎士達にも手を出そうとしたのです。こればかりは許せません」
「そ、そうか……ならば、どのような処罰を与えるのかはお主に任せる」
「ありがとうございます、陛下」
『おおっ……!!』
国王は何かを諦めたようにリルにガオの処罰を決めるように命じた。それを聞いた大臣たちは声を上げ、チイとネコミンも嬉しそうに頷く。レイナもリルの言う通りに上手く事が運んだことに驚きを隠せない。
(なんか、完全にリルさんの作戦通りに事が進んでる気がする……でも、どんな罰を与えるつもりなんだろう)
ここでリルはガオ王子にどのような処罰を与えるのか気になり、全員が固唾を飲んで彼女の返事を待つ。そしてリルが悩んだ末に告げたのは意外な提案だった。
「それでは……ガオが結成した黒狼騎士団を解散させる、というのはどうでしょうか?」
「な、何……騎士団の解散?そんな事でいいのか?」
「はい」
「り、リル様?どうしてそんな……」
意外なリルの申し出に国王だけではなく、チイさえも戸惑う。レイナもリルの発言には驚いたが、彼女は説明を続けた。
「そもそも今回の事態はガオに騎士団を統率する権利を与えたのが問題なのです。私を襲った兵士達はこの王都の民ですが、彼等は黒狼騎士団に加入して貰えると勘違いして騙されて入ったんです。ならば今回の処罰でガオの結成した黒狼騎士団を解散させ、奴にはもう二度とと騎士団を作る事を許さないでください」
「それだけでいいのか?お主が望むのならばもっと重い罰でも儂は構わんが……」
「ええ、構いません。ですが、黒狼騎士団を解散するとなれば既に加入している者達も不満に思うでしょう。そこで彼等には本人の希望があるならば我が国の兵士としてならば受け入れる事を構わない事を伝えてください。また、女性に限り私の白狼騎士団に入団を希望する者がいれば私が面接を行い、必要と判断した人間を騎士団に加入する事も伝えてください」
「なるほど、黒狼騎士団の者達の中には強者が多いと聞いておる。確かにそんな人材をみすみす手放すのは惜しいな……よかろう、それでお主の気が済むのならば儂はお主の提案に従おう」
「ありがとうございます、陛下」
国王は安心した表情を浮かべ、彼はリルがてっきりガオに対してもっと重い処罰を与えると考えていた。しかし、彼女の提案した処罰は要するにガオが騎士団を結成する前の状況に戻るだけであり、そんな事で良いのであれば国王も反対はしない。
――しかし、今回のリルの提案を聞いてレイナは彼女の真の狙いを見抜く。黒狼騎士団が解散すればガオは自分の勢力を大きく削がれ、折角集めた優秀な人材を失う事に等しい。自分の意思で動かす事が出来る騎士団がいなくなればリルの命を狙うのも難しくなり、何よりも黒狼騎士団の者達にも恨みを持たれる可能性もあった。
黒狼騎士団は仮にも一国の王子であるガオが率いる騎士団となれば、それなりの地位を約束された立場だろう。しかし、騎士団が解散すれば彼等はただの兵士として働かなくてはならず、立場は一変する。しかも騎士団が解散した理由がガオ王子の凶行だと知れば彼等の心情も穏やかではなくなるだろう。
ガオは騎士団を失うだけではなく、騎士団に加入した者達に恨まれる可能性もあり、更に黒狼騎士団の女性隊員は敵対するリルの白狼騎士団に引き抜かれれば、ガオにとっては正に最悪な状況に陥る。味方の勢力を削がれ、恨まれ、リルの勢力が強まる。
しかも国王はリルが重い罰を与えなかった事に安心し、疑いもせずに彼女の処罰を引き受けた。これは国王がリルに対する信用も深まった事を示し、逆にガオの信用が下がったのは間違いない。こうしてリルはガオの失敗を最大限に生かし、敵の勢力を削ぐどころか自分の立場をより強固にした。
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