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獣人王国編

第162話 ダークエルフの少女

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「ふむ……恐らくだが、この子は人の言葉を理解しても口にする事が出来なかったから話せないんだろう。だが、練習すれば言葉を話せるようになるかもしれない」
「きゅろっ?」
「そういえば俺の世界でもこんな話を聞いた事があります。狼に育てられた人間の赤子が育ち、狼同然に生きてきた話を……その子供は人間に回収されたんですけど、最初は人間の言葉なんて理解できずに本物の狼だと思いこんでいたという話です。だけど、人間に回収された後にいくつかの単語は話せるようになったとか……(実際にはこの話は嘘である可能性が非常に高いです)」
「今回の場合は人間が魔物に育てられたのではなく、魔物が人間に変化した事になるが……確かに人間の環境で暮らしていけば人の言葉を話せるようになるかもしれないな」
「きゅろっ?」
「ぷるぷるんっ♪」


首を傾げる少女にクロミンは近づき、自分と同じように姿を変化した少女に嬉しそうに身体を弾ませる。後輩が出来たとでも思っているのか、クロミンは少女の頭に乗り込む。


「ぷるるんっ♪」
「きゅろろっ♪」
「おおっ、クロミンが懐いている。仲間が出来たと思っているのかな?」
「ちょっと待て、まさかこの子供を連れて行く気か!?いや、確かにこんな姿で放置はできないが……」
「流石に子供を連れて行くとなると少々問題だな……かといって、このまま放置は出来ないが」
「すいません、まさかこんな小さい子に変化するとは思わなくて……」


レイナはあくまでも種族を変化させただけでサンドワームがこのような少女に変化するとは思わなかった。恐らく、サンドワームの年齢基準に慌てて外見も変化したのだろうが、どうやらレイナ達と出会ったサンドワームはまだサンドワームの視点だと子供だったらしい。

最も子供とはいえ、普通の人間ではなくてダークエルフであるため、何らかの力を持っている可能性はある。試しにレイナはクロミンを可愛がるサンドワームに話かけた。


「えっと、サンドワームちゃんでいいのかな?俺の言葉が分かる?」
「きゅろっ?」
「サンドワームちゃんって……まあ、確かに言い方がないか」
「もっと可愛い名前を後で付ける」


呼び出されたサンドワームは不思議そうにレイナに首を傾げると、どうやら人語は話せずともレイナの言っている言葉の意味は理解出来るらしく、彼女の命令通りに動く。


「じゃあ、あそこまで歩いてくれる?」
「きゅろろっ」
「おお、良かった。ちゃんという事を聞いてくれる……よし、それならそこで三回くるっと回って」
「きゅろろっ!!」
「ほうっ、ちゃんと私達の言葉は理解しているんだな。となると、人語が話せないだけで普通の子供と変わりはないのか」


言葉自体は完璧に理解しているらしく、少女はレイナの言う事をよく聞いた。それを見てリル達は安心する一方、これからの旅路に彼女が付いていけるのか不安を抱く。


「レイナ、とりあえずはこの子のステータスを確認してみたらどうだ?魔人族ではあるが、ダークエルフは私達と同じようにレベルや職業を持っているはずだ」
「そうなの?じゃあ、調べてみるね……サンちゃん、クロミンおいで~」
「きゅろろ~♪」
「ぷるぷる~んっ♪」


レイナが両手を広げて声を掛けると、少女とクロミンが争うように駆けつけ、レイナ抱き上げられる。二人ともレイナに服従された事に対して特に不満は抱いている様子はなく、素直に命令を聞いた。


(妹がいたらこんな感じなのかな……いや、どちらかというと娘みたいな感じがする。まあ、それはともかく……解析!!)


抱きかかえた少女に対してレイナは解析の能力を発動すると、瞬時に少女の詳細画面が表示され、内容がサンドワームの時と比べて変化している事を確認した。


―――ステータス―――

種族:ダークエルフ

職業:戦士

性別:女性

年齢:10才

状態:健康(服従)

レベル:1

特徴:ダークエルフとして生まれ変わった少女。言葉はまだ話せないが、他人の言葉は理解出来る

―――――――――――


詳細画面もサンドワームの時と比べて更新されており、特徴の項目の説明文を見てレイナはやはり言葉は理解出来ても話せない事を知る。また、ダークエルフに変化した事でレベルと職業と年齢が加えられており、年齢に関してはサンドワームの基準で10才程度だったので10才と表示されているのだろう。

職業の「戦士」というのはレイナも初めて見るが、名前の響きから戦闘職である事は間違いない。また、レベルが1と低めなのは意外に思えたが、普通の魔物はレベルの概念がないのでダークエルフに生まれ変わった事でレベルがリセットされた状態だと思われた。


「この職業は戦士、レベルは1のようです」
「きゅろっ?」
「ほう、戦士か。中々レアな職業を引いたな」
「え?今、名前を呼びました?」
「いや、レアといっても君の事じゃないんだが……」


リル曰く、戦士という職業は戦闘職の中でも稀少らしく、中々に優れた職業だという。
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