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獣人王国編
第155話 解析の法則
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「……もう目を開けていいぞ」
「あっ……はい」
チイの言葉にレイナはゆっくりと目を開くと、リルが血に濡れた剣を吹いている場面を目撃する。メイの方にはレイナは顔を向けられなかったが、既に彼がどうなったのかは簡単に想像できた。
リルは残された3人の盗賊に視線を向けると、こちらの方はまだ意識は戻っておらず、完全に気絶していた。その様子を見てリルは剣を握り締めながら近付こうとした時、チイが声を掛ける。
「リル様、ここは私が」
「チイ……そうか、なら頼む」
「はい」
チイはリルを引き留めると、自分の短剣を引き抜いて盗賊の元へ向かう。彼女がこれから何をやろうとしているのかを気付いたレイナは反射的に彼女に腕を伸ばそうとするが、止める事は出来なかった。
レイナの行動に気付いたチイは一瞬だけ彼女に視線を向けるが、すぐに気を取り直したように横たわっている3人組の元へ向かう。そして彼女は未だに意識を失っている3人に告げた。
「同情はしないぞ、お前達のせいでどれだけの人間が苦しんだと思っている。だが……せめて楽に逝け」
「う、あっ……」
「ぐっ……」
「ううっ……」
気絶している3人にチイの言葉が届いたとは思えないが、それでも彼女は言葉を口にせずにはいられず、短剣を振り下ろす――
――暗殺者のメイと盗賊3人組の「始末」を終えたレイナ達は急いで牙山へ向けて移動を行う。死体は地面に埋めて装備品に関しては回収するのに時間が掛かってしまった。シロに乗り込んだネコミンの背中に掴まりながらもレイナは黙り込んだまま何も話さない。
最初の内は誰も言葉を交わす事はなかったが、あまりに長い沈黙に流石にレイナ以外の者達も耐え切れなくなり、リルが意を決してレイナに話しかけた。
「レイナ君、気になる事があるんだが……」
「……はい?」
リルはレイナに話しかけると、少しだけ反応は送れたが返事をしてくれた事に安堵して質問を続ける。
「あの時、どうしてメイの奴に尋問したんだ?君の能力を使えばわざわざ奴を尋問する必要などなかっただろう?」
「ああ、なるほど……」
解析の能力を使用すれば気絶している相手からも情報を得られる事は既に証明され、実際に先日の廃村に住み着いていたホブゴブリンを捕まえた時、気絶させた状態からレイナは解析の能力で彼等の内情を把握していた。
だが、今回のメイの尋問でレイナは解析の能力の限界を調べるために敢えて行い、まずは結論から告げる。
「俺の解析の能力、どうも解析の対象が知っているはずの情報しか表示しないようです」
「ん?それはどういう意味だ?」
「例えばですけど、この間のホブゴブリンを解析したときに吸血鬼のアルドラの配下である事は見抜きましたよね?だけど、それ以上の情報を掴む事は出来なかった。アルドラの配下である事は分かっても、アルドラに関する情報は殆ど分かりませんでした」
「そうなの?」
「この事から俺は解析の能力で判明するのは、対象となる相手が知っている限りの範囲の情報しか読み取る事が出来ないんじゃないかと思ったんです。だからメイを尋問をしたとき、その事を確かめるために色々と質問しました」
解析に表示されている内容の真偽を確かめるためにレイナは敢えて今回の尋問を行い、メイの内情を彼の前で話す事でメイの知っている事と知らない情報を見抜く。結果としてはメイは知らない情報を解析の能力で暴く事が出来ないのが判明した。
今まではよく考えずに解析の能力は他人のステータスや特徴を見抜く程度の能力だと思っていたが、実際の所は文字変換の能力を重ね合わせなくても十分に役立つ能力である。
この「解析」を利用すれば対象の人間が知る限りの情報を聞き出せ、しかも相手の能力を暴く事も出来るし、場合によっては文字変換の能力で改竄を行う事も出来る。正に解析の勇者らしい能力だと言えた。
(今までは何となく使っていたけど、この能力だって成長してるんだ。なら、使いこなさいと駄目だな)
これまで以上に解析の能力の重要性を悟ったレイナは自分の能力を改めて確認し、これからは上手く活用するように決める。それと同時に会話を交わした事で少し気が紛れたため、レイナはリルの方に話しかける。
「リルさん、牙山へはどれくらいの距離があるんですか?」
「ん、ああ……そう遠くはないさ。ほら、見えてきた……あれが牙山だよ」
「えっ?」
「「ウォオオンッ!!」」
リルの指し示す方向にレイナは視線を向けると、そこには地面に動物の牙が逆さ向きで置かれたような岩山が存在した。標高は1000メートルを超え、道らしき道は殆ど存在しない場所のため、慎重に進まなければ命を落とす可能性も高い場所にレイナ達は向かう――
「あっ……はい」
チイの言葉にレイナはゆっくりと目を開くと、リルが血に濡れた剣を吹いている場面を目撃する。メイの方にはレイナは顔を向けられなかったが、既に彼がどうなったのかは簡単に想像できた。
リルは残された3人の盗賊に視線を向けると、こちらの方はまだ意識は戻っておらず、完全に気絶していた。その様子を見てリルは剣を握り締めながら近付こうとした時、チイが声を掛ける。
「リル様、ここは私が」
「チイ……そうか、なら頼む」
「はい」
チイはリルを引き留めると、自分の短剣を引き抜いて盗賊の元へ向かう。彼女がこれから何をやろうとしているのかを気付いたレイナは反射的に彼女に腕を伸ばそうとするが、止める事は出来なかった。
レイナの行動に気付いたチイは一瞬だけ彼女に視線を向けるが、すぐに気を取り直したように横たわっている3人組の元へ向かう。そして彼女は未だに意識を失っている3人に告げた。
「同情はしないぞ、お前達のせいでどれだけの人間が苦しんだと思っている。だが……せめて楽に逝け」
「う、あっ……」
「ぐっ……」
「ううっ……」
気絶している3人にチイの言葉が届いたとは思えないが、それでも彼女は言葉を口にせずにはいられず、短剣を振り下ろす――
――暗殺者のメイと盗賊3人組の「始末」を終えたレイナ達は急いで牙山へ向けて移動を行う。死体は地面に埋めて装備品に関しては回収するのに時間が掛かってしまった。シロに乗り込んだネコミンの背中に掴まりながらもレイナは黙り込んだまま何も話さない。
最初の内は誰も言葉を交わす事はなかったが、あまりに長い沈黙に流石にレイナ以外の者達も耐え切れなくなり、リルが意を決してレイナに話しかけた。
「レイナ君、気になる事があるんだが……」
「……はい?」
リルはレイナに話しかけると、少しだけ反応は送れたが返事をしてくれた事に安堵して質問を続ける。
「あの時、どうしてメイの奴に尋問したんだ?君の能力を使えばわざわざ奴を尋問する必要などなかっただろう?」
「ああ、なるほど……」
解析の能力を使用すれば気絶している相手からも情報を得られる事は既に証明され、実際に先日の廃村に住み着いていたホブゴブリンを捕まえた時、気絶させた状態からレイナは解析の能力で彼等の内情を把握していた。
だが、今回のメイの尋問でレイナは解析の能力の限界を調べるために敢えて行い、まずは結論から告げる。
「俺の解析の能力、どうも解析の対象が知っているはずの情報しか表示しないようです」
「ん?それはどういう意味だ?」
「例えばですけど、この間のホブゴブリンを解析したときに吸血鬼のアルドラの配下である事は見抜きましたよね?だけど、それ以上の情報を掴む事は出来なかった。アルドラの配下である事は分かっても、アルドラに関する情報は殆ど分かりませんでした」
「そうなの?」
「この事から俺は解析の能力で判明するのは、対象となる相手が知っている限りの範囲の情報しか読み取る事が出来ないんじゃないかと思ったんです。だからメイを尋問をしたとき、その事を確かめるために色々と質問しました」
解析に表示されている内容の真偽を確かめるためにレイナは敢えて今回の尋問を行い、メイの内情を彼の前で話す事でメイの知っている事と知らない情報を見抜く。結果としてはメイは知らない情報を解析の能力で暴く事が出来ないのが判明した。
今まではよく考えずに解析の能力は他人のステータスや特徴を見抜く程度の能力だと思っていたが、実際の所は文字変換の能力を重ね合わせなくても十分に役立つ能力である。
この「解析」を利用すれば対象の人間が知る限りの情報を聞き出せ、しかも相手の能力を暴く事も出来るし、場合によっては文字変換の能力で改竄を行う事も出来る。正に解析の勇者らしい能力だと言えた。
(今までは何となく使っていたけど、この能力だって成長してるんだ。なら、使いこなさいと駄目だな)
これまで以上に解析の能力の重要性を悟ったレイナは自分の能力を改めて確認し、これからは上手く活用するように決める。それと同時に会話を交わした事で少し気が紛れたため、レイナはリルの方に話しかける。
「リルさん、牙山へはどれくらいの距離があるんですか?」
「ん、ああ……そう遠くはないさ。ほら、見えてきた……あれが牙山だよ」
「えっ?」
「「ウォオオンッ!!」」
リルの指し示す方向にレイナは視線を向けると、そこには地面に動物の牙が逆さ向きで置かれたような岩山が存在した。標高は1000メートルを超え、道らしき道は殆ど存在しない場所のため、慎重に進まなければ命を落とす可能性も高い場所にレイナ達は向かう――
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