解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
154 / 367
獣人王国編

第154話 覚悟

しおりを挟む
「レイナ、私達の存在をこの男は知っていたというのか!?」
「はい。といっても、俺達を見つけたのは只の偶然です。前に立ち寄った街で俺達の情報を聞きつけて追いかけてきたようです。あの盗賊達はただの付き添いで事情は説明してなかったみたいですけど……」
「ぐっ……な、何故そこまで知っている!?お前はいったい何者だ!?」
「なるほど、その様子だと私達の事は知っていてもレイナ君の事は知らないのか」


メイはレイナが自分しか知り得ない情報を次々と明かす事に恐怖を抱き、いったい何者かと疑問を抱く。しかし、その態度が彼がレイナの正体を知らない事を示していた。


「俺の事は本当に何も知らないんですか?あ、嘘を吐いても分かりますよ」
「……とある街でリル王女の傍にいる女が黒色の牙竜を召喚してアンデッドの大群と吸血鬼を屠ったという噂は耳にしている。だからお前は召喚魔術師ではないのか?」
「召喚魔術師?」
「転移系の魔法で物体を移動させたり、あるいは契約を交わした精霊を呼び寄せる事が出来る魔術師の職業だ」
「なるほど、つまりレイナ君の事は召喚魔術師だと勘違いされて噂は広まっているのか……確かにあの時、レイナ君の正体を話してはいなかったからな」


アンデッドが襲撃された街でレイナはクロミンを黒竜へと変化させ、アンデッドを一掃したのは事実である(実際はアンデッドを操っていた吸血鬼を聖剣で倒したのだが)。既に噂は他の街にも流れているらしく、どうやら一般人の間でもリルが戻って来たという話は知れ渡っている様子だった。


「メイ・ルイ、お前の雇い主が分かったぞ。大方、ガオの奴かあるいは奴に与する人間に私を殺して連れてくるように言われたんだろう?」
「……知るか、俺を雇ったのは金払いが良い黒ずくめの男だった。前金で金貨10枚、お前を殺したら金貨100枚、更に死体を運んで来たら金貨200枚払うと言ってきたんだ」
「やれやれ、私の首が金貨200枚とは安く見られたな」
「リル様!!冗談でもそのような事を言うのはお辞めください!!それではまるでリル様が賞金首のようではないですか!!」
「縁起でもない」
「それもそうだな……だが、暗殺者を依頼して高額な報酬まで約束するとは、ガオの奴め本気でこの機会に私の命を狙うつもりか」


弟の企みを知ったリルは眉を顰め、やはり昔は仲が良かった相手だけに彼女も思うところはあった。だが、敵として命を狙うのならばリルも本気で逃げなければならず、まずは王都へ向かう必要がある。


「とりあえず、こいつらはどうしますかリル様?まだ生きてはいますが、動けるまでに回復するには時間が掛かると思います」
「多分、数日ぐらいは筋肉痛で悩むと思います。回復薬とかがあれば別だと思いますけど……」
「本来ならば街まで連れて引き渡すべきだが、このまま戻る事は出来ない。もしも弟が放った刺客がいれば命を狙われかねないからな」
「じゃあ、始末する?」
「え、殺すんですか……?」
「ぷるぷるっ?」


ネコミンがあっさりと始末するのかを聞いてきたため、クロミンを抱いていたレイナは驚くが、リル達の状況を考えたら生かしておく必要がない。自分達の命を狙い、更には野営用のテントまで破壊された。このまま逃がせばリル達の情報が他の人間にも伝わり、再び命を狙いに訪れる可能性もあった。

ここは平和な日本ではなく、日常で人が死ぬことが珍しくない世界である事はレイナも理解していた。しかし、いざ相手が魔物ではなく人間となるとレイナは躊躇してしまい、本当に他に方法はないのかと思う。


(リルさん達の立場を考えると敵は見逃せないのは分かるけど……)


リル達もこれまでに人を殺した事がないわけではなく、実際にレイナはリルと初対面時に殺されかけた。彼女達は目的のためならば邪魔をする存在を排除する覚悟があった。


(……そういえばあの二人も元々は人間だったんだよな)


レイナの脳裏に彼が倒した二人の吸血鬼の事を思い出し、片方は理性を失った少女、もう片方は少女を吸血鬼へと変貌させたアルドラをレイナは既に切っている。彼女達が多くの人間を殺めたのは事実であるし、レイナが倒さなければ大勢の人間が命を失っていただろう。

しかし、どちらも元々は人間であった事は間違いなく、少女の方はともかくアルドラは人間に等しい存在だった。レイナが倒してきた魔物とは違い、彼女の場合は吸血鬼でありながらも人と同じ意思を持っていた。


(もう、ここは俺の世界じゃないんだ……受け入れろ、受け入れなければ死ぬんだ!!)


自分を言い聞かせるようにレイナは唇を噛みしめ、そんなレイナの考えを察したのか、リルは地面に埋もれたメイに淡々と告げる。


「悪いが、お前達をここで生かして帰すわけにはいかない。ここでその命を絶たせてもらう」
「……覚悟はできている、殺せ」
「そうか、分かった。苦しまずに逝かせてやる」


リルは剣を引き抜くと、頭だけの状態のメイに刃を構え、勢いよく振り翳す。刃がメイの頭部に触れる瞬間をレイナは見て居られずに瞼を閉じるが、耳元に血飛沫が舞う音が広がった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...