解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第153話 メイ・ルンの尋問

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――リル達の治療を終えた後、レイナ達は牙山へ向かう前に捕まえた盗賊3人とメイ・ルンを捕縛する。暗殺者の場合はレイナの「縄抜け」のような能力を覚えている可能性が高いため、普通に縄で縛るだけでは不十分と判断して彼だけは身体を地面に埋めて顔だけを出した状態で尋問を行う。


「さて、君の名前はメイ・ルンだな。冒険者ギルドが発注している手配書にも乗っている。最も名前の方は別名で記されているが……」
「……ちっ、何処で俺の名前を知った」
「口の利き方に気を付けろ、自分の立場をまだ理解していないのか?」


メイは最初の頃はレベルを下げられた影響で脱力感に襲われ、まともに動く事も話す事も出来ない状態だった。しかし、夜が明けるころには大分身体の感覚を取り戻したらしく、普通に話せる状態まで回復していた。


(レベルを下げるだけなら時間経過で脱力感は治るのか……)


レイナは普通に話せるようになったメイを見てレベルを下げた時の現象を把握し、仮にレベルを下げても時間の経過で脱力感は消え去る事を把握する。だが、レベルが下がったという事実に変わりはないのでステータスが下がっている事は間違いなく、感覚を取り戻すのにも時間は掛かる様子だった。

ちなみに他の3人はレベルを上げた影響で身体に激痛が走り、既にレイナは彼等のレベルを元に戻している。放置しているとそのまま死にそうだったので仕方なくレベルを戻したが、こちらの「成長痛」は残念ながら時間が経過しようと治る様子はない。むしろ、激痛に苛まれる間に死ぬ可能性が高い。


(日付が戻ったから文字数は回復しているけど……この人のレベルは元に戻す必要はないか)


日付が変更する前にリル達の治療を終えた事は功を奏し、現在のレイナは文字数が回復していた。だが、解析の能力が強化されているにも関わらずにレイナの文字変換の能力に変化はない。こちらはレベルを上げても能力が強化される様子はなく、文字変換の能力は既に成長の余地がない可能性もあった。


「メイ、お前をこれから近くの街の冒険者ギルドに突き出す。そうなればお前は処刑されるだろう、だが私達の質問に答えれば命だけは助けるように口利きしてやってもいいんだぞ?」
「ふん、一介の冒険者無勢にそんな事が出来るのか?」
「ほう、私達の事を冒険者だと知っているのか?ただの旅人かもしれないぞ?」
「っ……奇怪な魔法で俺を倒した魔術師が普通の旅人のはずがないだろう」


リルの言葉に一瞬だけメイは動揺を示したが、そんな彼に対してリルはこのまま尋問を続けても埒が明かないと判断してレイナに頷く。


「メイさん、どうして俺達が貴方の名前を知っていると思いますか?」
「ふん……最初は驚いたが、大方お前等の誰かが「鑑定士」なんだろう?鑑定士の鑑定の能力を使えば名前程度は見抜くことは容易いはずだ」


レイナの言葉にメイは中々鋭い考察を行う。自分の名前を明かされた事に驚きはしたが、冷静に考えた彼はレイナ達の中に鑑定士の職業を持つ人間がいると判断した。実際の所は違うのだが、その推理の方向性は完全な間違いとは言えない。但し、メイが相手にしているのは鑑定士よりも優れた能力を持つ「解析の勇者」であった。


「メイ・ルン……生まれはヒトノ帝国の辺境地方、元々は捨て子で孤児院で生まれ育った。子供の頃は女の子のように容姿が優れていたから10才になるまで本当に女子として育てられた」
「は?」
「但し、11才を迎えると徐々に肉体が男性として成長を始め、孤児院の他の子供達にもからかわれる事が多くなる。極めつけに名前が可愛すぎるせいで初対面の人間にも馬鹿にされるようになり、それにぐれて孤児院を脱走。その後は偽名を使って冒険者として過ごしていたけど、ある鑑定士に名前を見抜かれて逃走……偽名を使って冒険者活動を行っていた事から冒険者の資格を剥奪」
「ま、待て……待て!!」
「今現在はケモノ王国に拠点を移し、暗殺者として盗賊と手を組む。だけど元冒険者として犯罪に手を染める事にどこか抵抗感を抱きながらも、今更自分の人生を変えられずに暗殺者として過ごす……それが貴方の正体ですね」
「な、な、なっ……!?」
「ほう、中々に壮絶な人生だな」
「その名前、それほど気にしてたのか……」
「少し可哀想に思えてきた」
「ぷるぷるっ……」


自分のこれまでの人生を全て晒されたメイは地面に埋められた状態で顔を真っ赤に染めるが、話を聞いていたリル達も同情してしまう。だが、彼が犯罪に手を染めた事は間違いなく、昨夜の行動は決して許される行為ではない。


「話はまだ終わってません……メイ・ルン、貴方が俺達を襲ったのは偶然じゃありませんね。ある人物に依頼されて俺達の事を探していた。違いませんね?」
「な、何故その事を……貴様、心が読めるのか!?」
「まあ、似たような感じです」


レイナは「解析」の能力を発動させて視界に表示されたメイ・ルンの詳細画面を確認すると、次々と画面が更新されて知りたい情報が表示される。そしてメイ・ルンがレイナ達を襲ったのは決して偶然ではない事まで見抜く。
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