解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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獣人王国編

第151話 暗殺者

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「ぐあっ!?」
「リルさん!!」
「離れてっ!!」


刃を突き刺されたリルを咄嗟にレイナが受け止めると、ネコミンが魔力で構成した爪を振り翳してテントを切り裂く。その際にリルに刃を突き刺した人物は引き下がったらしく、刃が引き抜かれた。

刃は左肩を貫通したが、リルは歯を食いしばって痛みを堪えると切り裂かれたテントから飛び出して自分を攻撃した人物の確認を行う。3人がテントを出ると、そこには短刀を構えた黒装束の男が存在した。


「ひひひっ……よく気付いたな、気配も臭いも完全に殺していたんだがな」
「貴様、暗殺者(アサシン)か……!!」
「暗殺者……!?」


暗殺者という言葉にレイナはリルに肩を貸しながら男の様子を伺うと、年齢は20代後半程度で身長は小さく、恐らくは150センチ程度しかない。全身を黒一色の衣服に身を包み、両手には短刀を握り締めていた。レイナだけではなく、獣人族で人よりも感覚が鋭いネコミンとリルにさえも接近を気付かせずに攻撃してきた事に驚く。

過去にレイナは廃墟街にてリル達を発見したときは隠密や無音歩行などの技能を駆使しても存在を知られてしまった。後に正体が気付かれた理由は獣人族特融の「嗅覚」の鋭さで臭いで気付いた説明されたが、この男は何故かその臭いさえも完全に消して近付いた事になる。


「そんなに不思議そうな顔をするな。お得意の鼻が利かなくて戸惑っているんだろう?だが、いくらお前等獣人族が嗅覚に優れようとこの「消臭石」さえあれば臭いなんて完全に消せるんだよ!!」
「消臭石?」
「あらゆる臭いを吸収して封じ込める事が出来る風属性の系統の魔石だ……本来は下水道などに設置する代物だがな」
「……私でも気付けなかった」


獣人族の中でも人一倍嗅覚に優れているネコミンでさえも臭いには気付く事が出来ずに悔し気な表情を浮かべ、リルが暗殺者と呼んだ男は笑みを浮かべる。そして自分の後ろの方を指差すと、そこには横たわるシロとクロの姿が存在した。


「お前等のペットはもう動けないようにしている。安心しろ、まだ殺してはいない……白狼種と黒狼種は希少種だからな、欲しがる奴等も多いから高く売れるしな」
「「ク、クゥンッ……」」
「シロとクロまで……許さない!!」
「おい、待ちな!!こっちには人質もいるんだぞ!?」


身体が痺れて動けないのか横たわった状態で呻き声を上げるシロとクロを見て、ネコミンが怒ったように右手の魔爪を構えるが、彼女の背後から声が掛かった。全員が振り返ると、そこにはチイを地面に抑えつける盗賊3人の姿が存在し、彼女の首筋に刃を構えていた。


「動くなよ!!一歩でも動いたらこいつを殺す!!」
「へへっ……まさかこんな場所にこんな上玉が4人もいるとはな。奴隷商人に売る前にたっぷりと可愛がってやるぜ」
「馬鹿野郎!!こいつらが処女だったら傷物にすれば価値が下がるだろうが!!ここは我慢しろ……そうすれば街に赴いた時に好きなだけを女を抱かせてやる!!」
「ちぇっ……相変わらずにシャドの旦那は厳しいな」


どうやら盗賊3人と暗殺者は仲間同士らしく、暗殺者の名前はシャドというらしい。レイナは捕まっているチイに視線を向けると、彼女は痺れた状態でありながらも目配せを行い、自分に構うなとばかりに目配せを行う。


(チイは意識は残っているのか……よし、解析!!)


レイナは解析の能力を発動させ、チイの状態の項目を確認すると「麻痺」と表示されていた。どうやら身体が麻痺して上手く動けない様子らしく、彼女の体調が万全ならば捕まる事はなかっただろう。

恐らく攻撃を仕掛けたのはチイを抑えた盗賊ではなく、リルに刃を差した暗殺者の仕業だと考えられた。音も立てずにシロとクロを先に仕留め、その後にチイに不意打ちで毒を仕込んだ矢を撃ち込み、身体を麻痺させたのだろう。


(リルさんも顔色が悪い……解析)


左肩を短刀の刃で貫かれたリルの顔色も悪く、念のためにレイナは解析を発動させて調べると、やはりというべきかリルの方も状態の項目が「麻痺」と表示されていた。先ほどから黙っているので不思議に思っていたが、どうやら刃に塗り込まれた麻痺性の毒が体内に浸透してきたらしく、レイナが支えなければ立てない状態だった。

現在のレイナ達は盗賊3人にチイを人質として抑えつけられ、動けるのはレイナとコトミンだけだった。しかもレイナはリルを支えているので戦えるのはネコミン一人だけであり、彼女は暗殺者を警戒するように向かい合う。


(まずいな……どうすればいいんだろう。二人をすぐに治療しないといけないのにこいつらが邪魔だ)


視界に表示されたリルとチイの詳細画面を確認してレイナは冷や汗を流し、指先を動かせば文字変換の能力を発動して二人を瞬く間に回復させる事も出来るのだが、盗賊3人と暗殺者から目を離せない。だが、ここでレイナはある事に気付く。


(あれ……解析で2つ以上の画面を表示させる事なんて出来たっけ?)


視界の端に表示されたリルとチイの二人分の詳細画面に気付いたレイナは、2つの画面を同時に表示させたままの状態で維持が出来るようになった事を知る。
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