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獣人王国編
第148話 孤児院
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「ところでリル様、これからどうなさるおつもりですか?」
「一先ずは王都へ戻り、父上に報告を行うつもりだ」
「そうですか……ですが、今は止めた方が良いかもしれません」
「何?それはどういう意味だ?」
「実は……あくまでも噂ですが、弟君がお戻りになられたようです」
「弟……ガオが?」
弟の話題になるとリルは表情を険しくさせ、そんな彼女の胸中を察したのか領主は言いにくそうに告げる。
「実はリルル様が使者として帝国へ赴いていた頃、ガオ様は国王様に進言して新しい騎士団を作り出しました。名前は「黒狼騎士団」と呼び、既に国中から集めた50人以上の猛者で結成されております」
「黒狼騎士団だと……団長は誰だ?」
「騎士団の発案したガオ様が団長を勤められております。現在、王都では未だに黒狼騎士団の募集が行われ、人数を増やして勢力を大きくさせているようです。ですが、騎士団に入った者の中には粗暴が悪く、犯罪歴がある人間まで採用しているようです」
「そんな者達を弟は騎士団に入れたというのか!?」
「はい……ガオ様曰く、強さこそが国を守る軍人の象徴、仮に犯罪を犯した者であろうと力が強ければ罪には問わず、それどころか騎士団に入ればこれまでの罪は帳消しすると宣言しました」
「馬鹿なっ……何を考えているガオめ!!」
弟の愚行を聞かされてリルは頭を抱え、まさか自分の不在の間に騎士団を結成していたという事に頭を悩まされる。大方、姉であるリルが騎士団の団長を勤めている事が気に入らないらしく、自分も負けずに騎士団を率いたいと考えたのだろう。
国王もあっさりと騎士団を作り出す事に賛成した辺り、やはりリルよりもガオに甘い部分があるのは明白だった。恐らくは王位を弟に継がせるため、騎士団を利用して功績を上げ、ガオの王位継承に反対する貴族達を納得させようとする魂胆は見え見えだった。
(やはり父上はガオを王位に継がせたいか……だが、あの弟では国が乱れる。それだけは認められない!!)
リルは王位に対して執着があるわけではないが、弟がどのような人間であるのかを知っている彼女はガオだけは王位に継がせるわけにはいかなかった。そのため、一刻も早く国へ戻る事を決意する。
「私はすぐに戻る、一応はホブゴブリンは始末したが残党が残っている可能性もある。今後も気を付けておいた方が良いぞ」
「はい、承知しました……あの、それと気になっていたのですが護衛の方々は何処へ行かれたのでしょうか?」
「ん、ああ……彼女達は孤児院に向かったよ。旅の途中、天涯孤独の少女を拾ったのでね。この街の孤児院に預ける事にしたよ」
「何と……そうだったのですか」
「面倒を掛けるが、出来ればその少女の事を目にかけて欲しい。家族を失った事が原因で取り乱し、訳も分からない事を口にするが聞き流してくれ。可哀想な子供なんだ……」
「なるほど、そういう事情ならば分かりました。定期的に様子を観察し、必要とあらば私が面倒を見ましょう」
「あ、ああ……よろしく頼むよ」
人が良い領主はリルの言葉を聞いて彼女の配下が孤児院に連れていった少女の面倒を見る事を約束する。そんな彼の返事を聞いてリルは口元に笑みを浮かべ、今頃は孤児院に辿り着いたと思われるレイナ達の事を想像すると笑い声を抑えるのに必死だった――
――同時刻、孤児院の方ではレイナとネコミンが両腕を掴んでイヤンを引きずるように連れて行くと、孤児院の経営者である老婆にチイがイヤンの面倒を見るように交渉していた。
「なんと……それでは彼女は家族を目の前で失い、記憶が失って自分が男だと思いこんでいると?」
「はい……私達が保護したときには既に挙動もおかしく、まるで自分の事を男だと思いこんでいます。しかも自分が冒険者だと思いこんでいる様子です……恐らく、記憶を失う前の冒険者に関わる話か、あるいは絵本でも呼んでいたのでしょう。こんなに小さいのに自分が冒険者だと思いこんでいるようです」
「は、離せっ!!こんな所に誰が世話になるか!!俺は正真正銘、銀級冒険者だ!!」
「……このように自分の事を本気で冒険者だと思いこんでいます」
「可哀想な子供……面倒を見て欲しい」
暴れ狂うイヤンをレイナとネコミンが抑えながら老婆に見せつけると、彼女は不憫に思って記憶を失い、自分を冒険者だと思いこむ幼女だと本気で信じる。老婆はイヤンの元へ赴くと、優しい笑顔を浮かべて両手で肩を掴む。
「凄く辛い事があったのね……大丈夫よ、ここは貴女と同じく家族を失った子供もいるわ。皆で共に苦難を乗り越えて生きて行きましょう」
「ちょ、ちょっと待て!!俺は本当に……」
「まずはこの孤児院で暮らす以上は言葉遣いを正しましょう。それと、女の子なのだから乱暴な事はしてはいけませんよ。特に冒険者なんていう危険な職業に憧れてもいけません!!貴女はこれから立派な淑女として育てあげます!!」
「か、勘弁してくれぇええっ!?」
イヤンは教育熱心な孤児院に老婆に引き取られ、彼女の監視の元でこれからは女の子として嗜みを学ばされる事になり、そんな彼を見てレイナ達は内心笑うのを堪えながらリルの元へと引き返した。
※イヤンはこれにて退場です。もしかしたら今後もおまけで出てくるかも……
「一先ずは王都へ戻り、父上に報告を行うつもりだ」
「そうですか……ですが、今は止めた方が良いかもしれません」
「何?それはどういう意味だ?」
「実は……あくまでも噂ですが、弟君がお戻りになられたようです」
「弟……ガオが?」
弟の話題になるとリルは表情を険しくさせ、そんな彼女の胸中を察したのか領主は言いにくそうに告げる。
「実はリルル様が使者として帝国へ赴いていた頃、ガオ様は国王様に進言して新しい騎士団を作り出しました。名前は「黒狼騎士団」と呼び、既に国中から集めた50人以上の猛者で結成されております」
「黒狼騎士団だと……団長は誰だ?」
「騎士団の発案したガオ様が団長を勤められております。現在、王都では未だに黒狼騎士団の募集が行われ、人数を増やして勢力を大きくさせているようです。ですが、騎士団に入った者の中には粗暴が悪く、犯罪歴がある人間まで採用しているようです」
「そんな者達を弟は騎士団に入れたというのか!?」
「はい……ガオ様曰く、強さこそが国を守る軍人の象徴、仮に犯罪を犯した者であろうと力が強ければ罪には問わず、それどころか騎士団に入ればこれまでの罪は帳消しすると宣言しました」
「馬鹿なっ……何を考えているガオめ!!」
弟の愚行を聞かされてリルは頭を抱え、まさか自分の不在の間に騎士団を結成していたという事に頭を悩まされる。大方、姉であるリルが騎士団の団長を勤めている事が気に入らないらしく、自分も負けずに騎士団を率いたいと考えたのだろう。
国王もあっさりと騎士団を作り出す事に賛成した辺り、やはりリルよりもガオに甘い部分があるのは明白だった。恐らくは王位を弟に継がせるため、騎士団を利用して功績を上げ、ガオの王位継承に反対する貴族達を納得させようとする魂胆は見え見えだった。
(やはり父上はガオを王位に継がせたいか……だが、あの弟では国が乱れる。それだけは認められない!!)
リルは王位に対して執着があるわけではないが、弟がどのような人間であるのかを知っている彼女はガオだけは王位に継がせるわけにはいかなかった。そのため、一刻も早く国へ戻る事を決意する。
「私はすぐに戻る、一応はホブゴブリンは始末したが残党が残っている可能性もある。今後も気を付けておいた方が良いぞ」
「はい、承知しました……あの、それと気になっていたのですが護衛の方々は何処へ行かれたのでしょうか?」
「ん、ああ……彼女達は孤児院に向かったよ。旅の途中、天涯孤独の少女を拾ったのでね。この街の孤児院に預ける事にしたよ」
「何と……そうだったのですか」
「面倒を掛けるが、出来ればその少女の事を目にかけて欲しい。家族を失った事が原因で取り乱し、訳も分からない事を口にするが聞き流してくれ。可哀想な子供なんだ……」
「なるほど、そういう事情ならば分かりました。定期的に様子を観察し、必要とあらば私が面倒を見ましょう」
「あ、ああ……よろしく頼むよ」
人が良い領主はリルの言葉を聞いて彼女の配下が孤児院に連れていった少女の面倒を見る事を約束する。そんな彼の返事を聞いてリルは口元に笑みを浮かべ、今頃は孤児院に辿り着いたと思われるレイナ達の事を想像すると笑い声を抑えるのに必死だった――
――同時刻、孤児院の方ではレイナとネコミンが両腕を掴んでイヤンを引きずるように連れて行くと、孤児院の経営者である老婆にチイがイヤンの面倒を見るように交渉していた。
「なんと……それでは彼女は家族を目の前で失い、記憶が失って自分が男だと思いこんでいると?」
「はい……私達が保護したときには既に挙動もおかしく、まるで自分の事を男だと思いこんでいます。しかも自分が冒険者だと思いこんでいる様子です……恐らく、記憶を失う前の冒険者に関わる話か、あるいは絵本でも呼んでいたのでしょう。こんなに小さいのに自分が冒険者だと思いこんでいるようです」
「は、離せっ!!こんな所に誰が世話になるか!!俺は正真正銘、銀級冒険者だ!!」
「……このように自分の事を本気で冒険者だと思いこんでいます」
「可哀想な子供……面倒を見て欲しい」
暴れ狂うイヤンをレイナとネコミンが抑えながら老婆に見せつけると、彼女は不憫に思って記憶を失い、自分を冒険者だと思いこむ幼女だと本気で信じる。老婆はイヤンの元へ赴くと、優しい笑顔を浮かべて両手で肩を掴む。
「凄く辛い事があったのね……大丈夫よ、ここは貴女と同じく家族を失った子供もいるわ。皆で共に苦難を乗り越えて生きて行きましょう」
「ちょ、ちょっと待て!!俺は本当に……」
「まずはこの孤児院で暮らす以上は言葉遣いを正しましょう。それと、女の子なのだから乱暴な事はしてはいけませんよ。特に冒険者なんていう危険な職業に憧れてもいけません!!貴女はこれから立派な淑女として育てあげます!!」
「か、勘弁してくれぇええっ!?」
イヤンは教育熱心な孤児院に老婆に引き取られ、彼女の監視の元でこれからは女の子として嗜みを学ばされる事になり、そんな彼を見てレイナ達は内心笑うのを堪えながらリルの元へと引き返した。
※イヤンはこれにて退場です。もしかしたら今後もおまけで出てくるかも……
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