解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
147 / 367
獣人王国編

第147話 イヤンの扱い

しおりを挟む
「――くそぉっ……どうしてこんな事に」
「悪い事をするからこうなるんだ。ほら、さっさと手伝え」
「ちくしょうっ!!」


正真正銘の幼女と化したイヤンはレイナ達に命じられるがままに働き、眠りこけたホブゴブリンから装備品を外す。殆どのホブゴブリンが人間(この場合は獣人)から奪った装備品を身に着けており、他にも建物の中には大量の食糧が発見された。

恐らくはアルドラが住民をアンデッドに変化させた村々からも奪ったと思われ、相当な量の食糧が保管されていた。レイナは収納制限が存在しない鞄とリュックに次々とホブゴブリンから回収した装備品と食料を詰め込み、最後にホブゴブリンの始末を行う。


「本当に起きないなこいつら……」
「ふん、俺の作り出した昏倒玉を舐めるなよ。仮に赤毛熊であろうと1時間は何をされようと絶対に起きない代物なんだよ!!」
「口の悪い幼女だな……よし、そろそろ止めを刺そう」
「ちょっと可哀想だけど……仕方ないよね」
「同情は不要、このホブゴブリン達も人間を襲っている」


レイナ達は気絶して動かないホブゴブリンの始末を開始するため、武器を引き抜く。レイナはアスカロンを利用して次々と眠っているホブゴブリンの首を切り裂き、苦しむ暇もなく命を奪う。

他の者達もレイナと同じくホブゴブリンの始末を実行し、やがて30体近くのホブゴブリンを全て始末した。また、魔王軍の旗に関しては回収を行い、これで危機は排除された事になる。


「ふうっ……一時はどうなるかと思ったが、これでもう大丈夫だろう」
「それにしても魔王軍が既にケモノ王国内の領地に侵入し、これほどの数のホブゴブリンを用意していたとは……アルドラという吸血鬼の件も気になりますし、すぐに王都へ戻って報告した方がよろしいのではないでしょうか?」
「そうだな、連絡役の使者も殺された事もあるし……とりあえずは街に戻って事情を説明しよう。それとホブゴブリンの死体はこのまま放置するぞ」
「何だと!?素材を剥がないというのか!?」
「そうだ。こいつらは魔王軍の一員であるという証拠だ。街の人間を連れて確かめさせ、魔王軍が既にケモノ王国の領地内に侵入している事を他の人間にも伝えねばならない」


リルの言葉にイヤンは信じられない表情を浮かべ、冒険者にとっては苦労して倒した魔物の素材を放置するなどあり得ない話だが、状況が状況だけに素材の回収は後回しになる。一応は何体かの死体はリュックに詰めこむと、今度はイヤンのこれからの扱いを話し合う。


「さて、今度は君に関して話し合わねばならないな。イヤン君?」
「な、何だと……どういう意味だ?」
「お前をこれから解放するべきか、それとも連れて行くべきかを話し合う」
「何だって!?」


イヤンはてっきり役に立てば自分を元に戻して解放すると思い込んでいたが、大迷宮の一件の事を考えると簡単に許すわけにはいかず、そもそも彼は人を殺している。


「言っておくがお前は恋人が死んで半狂乱に陥り、私達を殺そうとしただろう?実際に暴狼団の連中はお前に殺されてしまったからな。その罪を忘れたとは言わせないぞ?」
「うっ……あ、あの時の事は悪いと思っているよ。だけど、暴狼団の連中に関してはお前等だって迷惑がっていただろう!?」
「そんな言葉を吐けるうちはどうやら反省していないようだな。確かに暴狼団は私達に突っかかっていたが、それでも殺したいほど憎い相手ではなかった」
「ま、待てよ!!それなら俺を殺すつもりか!?」
「そんな事をすれば私達もお前と同じ過ちを犯した人間になってしまうだろう。殺しはしない……が、相応の罰を受けて貰う」
「ば、罰……!?」


イヤンは怯えた表情を浮かべて身体を縮こまセると、外見が幼女なのでとても可哀想に想えるが、決して彼の罪は軽い物ではない。リルは考えた結果、ある判決を下す。


「これから君は――」




――その後、どうにか街に戻ったレイナ達は使者が殺された事、そしてこの近辺で略奪を繰り返していたホブゴブリンの集団の始末を行ったことを警備兵と民衆に伝えた。最初は驚かれたが、持ち帰ったホブゴブリンの死体と略奪されていた武器や防具や食料などを見せると話を信じて貰う。

すぐに街の警備兵はリル達の案内の元でホブゴブリンが住処としていた廃村へと訪れ、他のホブゴブリンの死体とアルドラが残したと思われる魔王軍の旗を確認する。彼等も直に目にした以上はリル達の話を信じたらしく、もしも王都から問い合わせられた時に証人になる事を誓う。


「リル様、この度の件は誠にありがとうございます。これでこの近隣の村や街に平和が取り戻せました」
「気にする事はない、領主殿もこれで魔物共に頭を悩まされる事はなくなっただろう」
「おっしゃる通りですな。はははっ……」


リル達はこの近隣の領地を治める領主の元に赴き、事態の説明を行う。領主の男は長い間も頭を悩ませていたホブゴブリンの集団が討伐された事でリル達に深く感謝し、彼女達を快く迎え入れる。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

処理中です...