141 / 367
獣人王国編
第141話 夜襲
しおりを挟む
「……来たぞ、気を付けろ」
木陰から様子を伺っていたリルが全員に声を掛けると、遂にホブゴブリンとファンが姿を現す。運が良い事に先ほどまでは2匹同士で巡回していたのに対して今回は1匹ずつ姿を現した。
数が少なければレイナ一人でも対処できる可能性があり、彼は音を立てずに風下の方から移動を行う。そして上手くホブゴブリンとファングの背後に回り込むと、アスカロンを引き抜く。
(大丈夫だ、昼間の時のようにやればいける……問題ない)
心の中で不安を抑えるように自分に言い聞かせると、覚悟を決めたレイナは背後から接近してアスカロンを振りぬく。まずは背中側からホブゴブリンの胴体を貫き、確実に仕留める。
「グギャアッ……!?」
「ガアッ!?」
「ふんっ!!」
隣を歩いていたファングが驚愕の声を上げるが、続けてレイナはフラガラッハを引き抜いてファングの頭上に振りぬく。血飛沫が舞い上がり、ファングの頭部が切り裂かれるとホブゴブリンとファングの死体が地面に横たわる。それを確認したリル達が急いで向かう。
「よし、見事な手腕だ。流石はレイナ君だな」
「ふうっ……大分、戦闘も慣れてきました」
「よし、じゃあすぐに死体を運び込むぞ」
ホブゴブリンとファングの死体をリル達は急いで木陰の方に運び込み、簡単に見つからないように隠す。死体を隠しておけば他のホブゴブリンに気付かれるのにも時間が掛かり、その間にレイナ達が村の中に忍び込む余裕が出来る。
邪魔者がいなくなったのでレイナ達は壊れかけの木造製の柵を潜り抜けると、村の中に入り込む。ここから先は隠密行動のため、シロとクロは置いて先に進む。万が一に発見された場合を考え、クロミンだけは連れて行く。
「もしも見つかった時は頼りにしてるよクロミン」
「ぷるぷるっ(任せて)」
クロミンが黒竜に変化すれば大抵の魔物は敵ではなく、仮にホブゴブリンが100匹存在しようがクロミンの敵ではない。だが、見つかなければわざわざ貴重な文字変換の能力を使わずに済むため、レイナ達は慎重に村の様子を調べる。
村の中に関してはホブゴブリン達は特に警戒は敷いていないのかあっさりと侵入する事が出来た。どうやらホブゴブリン達は村の中心部の方に新しい住居を建設しているらしく、大量の木材が放置された状態だった。
「フゴォオオッ……」
「ギギィッ」
「グギィッ」
建物の陰に身を隠しながらレイナ達は村の中心部に集まったホブゴブリンの様子を伺うと、地面に絨毯を敷いて身体を休ませる者、訓練を行うかのように素振りを行う者、寝転んで雑談を行う者まで存在した。
こうして見ているとホブゴブリンがどれほど人間に近い生物なのか思い知らされ、レイナは彼らをどうするべきかリルに尋ねるように視線を向ける。リルとしても目の前の状況に困惑し、まさかこんな場所でこれだけのホブゴブリンが生息しているなど思いもしなかった。
「奴等……何者でしょうか?ただの野生の魔物とは思えません」
「ホブゴブリンがいくら頭がいいといっても、おかしいと思う」
「そうだな、魔除けの石に耐性を持つどころか利用している時点でこいつらは普通じゃない……それに奴等の身に着けている装備は間違いなく人間から奪った物だ。放置は出来ないが……流石に数が多いな」
村の中で存在するホブゴブリンは確認するだけでも30匹は超え、これだけの数を相手にするとなるとレイナ達も1匹残さずに倒すのは難しい。クロミンを黒竜に変化させて襲わせるという手もあるが、1匹でも取り逃がすと面倒な事態に陥る。
レイナはホブゴブリンの正体を見抜くため、リル達にどうにかホブゴブリンを殺さずに1匹だけ捕まえる事が出来ないのかを相談する。
「俺の能力を使えばこのホブゴブリン達の正体が分かるかもしれません。どうにか1匹だけでも連れ帰る事は出来ませんか?」
「そうだな……よし、やってみよう」
リルはレイナの言葉に従い、しばらくの間はホブゴブリン達の様子を伺っていると、1匹のホブゴブリンが立ち上がって移動を開始した。どうやらもよおしたのか股間を抑えて走り抜け、そのまま村の中心部から離れた。
レイナ達はそれを見て絶好の好機だと見抜き、ホブゴブリンの後を追う。結果としてはホブゴブリンは村を取り囲む木造製の柵まで移動を行うと、その場で小便を行う。
「ギギィッ……」
魔物といっても生物である事に変わりはないので用を足す事もあるらしく、何が悲しくてこんな夜中に魔物の小便を行う姿を見なければならないのかとレイナは思ったが、やがて用を足したホブゴブリンは元の場所へ戻ろうとした。
しかし、そんなホブゴブリンの背後からこっそりとリルは近付くと、剣を引き抜いて柄の部分をホブゴブリンの首元に叩きつける。その結果、ホブゴブリンは悲鳴を上げる暇もなく意識を奪われ、気絶してしまう。
木陰から様子を伺っていたリルが全員に声を掛けると、遂にホブゴブリンとファンが姿を現す。運が良い事に先ほどまでは2匹同士で巡回していたのに対して今回は1匹ずつ姿を現した。
数が少なければレイナ一人でも対処できる可能性があり、彼は音を立てずに風下の方から移動を行う。そして上手くホブゴブリンとファングの背後に回り込むと、アスカロンを引き抜く。
(大丈夫だ、昼間の時のようにやればいける……問題ない)
心の中で不安を抑えるように自分に言い聞かせると、覚悟を決めたレイナは背後から接近してアスカロンを振りぬく。まずは背中側からホブゴブリンの胴体を貫き、確実に仕留める。
「グギャアッ……!?」
「ガアッ!?」
「ふんっ!!」
隣を歩いていたファングが驚愕の声を上げるが、続けてレイナはフラガラッハを引き抜いてファングの頭上に振りぬく。血飛沫が舞い上がり、ファングの頭部が切り裂かれるとホブゴブリンとファングの死体が地面に横たわる。それを確認したリル達が急いで向かう。
「よし、見事な手腕だ。流石はレイナ君だな」
「ふうっ……大分、戦闘も慣れてきました」
「よし、じゃあすぐに死体を運び込むぞ」
ホブゴブリンとファングの死体をリル達は急いで木陰の方に運び込み、簡単に見つからないように隠す。死体を隠しておけば他のホブゴブリンに気付かれるのにも時間が掛かり、その間にレイナ達が村の中に忍び込む余裕が出来る。
邪魔者がいなくなったのでレイナ達は壊れかけの木造製の柵を潜り抜けると、村の中に入り込む。ここから先は隠密行動のため、シロとクロは置いて先に進む。万が一に発見された場合を考え、クロミンだけは連れて行く。
「もしも見つかった時は頼りにしてるよクロミン」
「ぷるぷるっ(任せて)」
クロミンが黒竜に変化すれば大抵の魔物は敵ではなく、仮にホブゴブリンが100匹存在しようがクロミンの敵ではない。だが、見つかなければわざわざ貴重な文字変換の能力を使わずに済むため、レイナ達は慎重に村の様子を調べる。
村の中に関してはホブゴブリン達は特に警戒は敷いていないのかあっさりと侵入する事が出来た。どうやらホブゴブリン達は村の中心部の方に新しい住居を建設しているらしく、大量の木材が放置された状態だった。
「フゴォオオッ……」
「ギギィッ」
「グギィッ」
建物の陰に身を隠しながらレイナ達は村の中心部に集まったホブゴブリンの様子を伺うと、地面に絨毯を敷いて身体を休ませる者、訓練を行うかのように素振りを行う者、寝転んで雑談を行う者まで存在した。
こうして見ているとホブゴブリンがどれほど人間に近い生物なのか思い知らされ、レイナは彼らをどうするべきかリルに尋ねるように視線を向ける。リルとしても目の前の状況に困惑し、まさかこんな場所でこれだけのホブゴブリンが生息しているなど思いもしなかった。
「奴等……何者でしょうか?ただの野生の魔物とは思えません」
「ホブゴブリンがいくら頭がいいといっても、おかしいと思う」
「そうだな、魔除けの石に耐性を持つどころか利用している時点でこいつらは普通じゃない……それに奴等の身に着けている装備は間違いなく人間から奪った物だ。放置は出来ないが……流石に数が多いな」
村の中で存在するホブゴブリンは確認するだけでも30匹は超え、これだけの数を相手にするとなるとレイナ達も1匹残さずに倒すのは難しい。クロミンを黒竜に変化させて襲わせるという手もあるが、1匹でも取り逃がすと面倒な事態に陥る。
レイナはホブゴブリンの正体を見抜くため、リル達にどうにかホブゴブリンを殺さずに1匹だけ捕まえる事が出来ないのかを相談する。
「俺の能力を使えばこのホブゴブリン達の正体が分かるかもしれません。どうにか1匹だけでも連れ帰る事は出来ませんか?」
「そうだな……よし、やってみよう」
リルはレイナの言葉に従い、しばらくの間はホブゴブリン達の様子を伺っていると、1匹のホブゴブリンが立ち上がって移動を開始した。どうやらもよおしたのか股間を抑えて走り抜け、そのまま村の中心部から離れた。
レイナ達はそれを見て絶好の好機だと見抜き、ホブゴブリンの後を追う。結果としてはホブゴブリンは村を取り囲む木造製の柵まで移動を行うと、その場で小便を行う。
「ギギィッ……」
魔物といっても生物である事に変わりはないので用を足す事もあるらしく、何が悲しくてこんな夜中に魔物の小便を行う姿を見なければならないのかとレイナは思ったが、やがて用を足したホブゴブリンは元の場所へ戻ろうとした。
しかし、そんなホブゴブリンの背後からこっそりとリルは近付くと、剣を引き抜いて柄の部分をホブゴブリンの首元に叩きつける。その結果、ホブゴブリンは悲鳴を上げる暇もなく意識を奪われ、気絶してしまう。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる