解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
135 / 367
獣人王国編

第135話 盗賊?

しおりを挟む
「この人達も死んでる。でも、それにしては身体が不自然に綺麗な気がする」
「え、それってどういう意味?」
「これを見ろ、傷を負っているのは首筋だけだ。つまり、首を切られて出血死したという事だな」


兵士達の死体は何故か全員が首筋を噛み千切られた跡があり、こちらの方は馬を殺したファングという魔物の仕業だと思われるが、全員が同じ殺され方である事にリル達は疑問を抱く。


「ファングは性格は獰猛だが、基本的に人間を食べる事は少ない。余程腹が減っていたのならともかく、基本的にファングの主食は獣の肉だけ……人間を餌として喰らう事は滅多にないはずだが……」
「でも、実際にこの人達は襲われてますよね?」
「確かにそうだが、死体は綺麗なままだ。首筋以外に傷を負っていない……それに腹を減らして襲ってきたのならば馬の死体が残っているのも気にかかる」


もしも馬車を襲ったファングの狙いが餌を得るためだった場合、兵士や馬の死体が残っている事はあり得ない話だった。襲いかかったファングが少数、あるいは単体で全ての死体を食いきれなかったとしても、それならば兵士の死体の装備が剥ぎ取られている事が説明できない。

魔獣種であるファングが人間の装備を奪うはずがなく、そもそも綺麗に死体から服を剥ぎ取るなど出来るはずがない。ならば考えられるのはファングの他に何者かが兵士達の死体から装備を剥ぎ取ったとしか考えられなかった。


「この横転した馬車も気にかかる。ファングだけでこんな大きな馬車を倒れさせることが出来るとは思えない」
「じゃあ、ファング以外の何かに襲われたんですか?もしかして、人間?」
「その可能性もある。考えられるとしたらファングを飼っている盗賊の仕業とか……」
「盗賊……そういえば街で聞き込みを行った時、最近この周辺で盗賊が現れたという話を聞いています」


チイは街で聞いた噂の事を思い出し、その内容を語る。半年ほど前から旅人や商人が襲われるという事件が多発しているらしい。


「私達が宿泊した街だけではなく、この地域に存在する村や他の街の人間も被害を受けているそうです。何でも用事があって他の街に行こうとした人間達が道中で襲われ、その後は荷物も装備も全て奪われた状態で放置されるとか……」
「ふむ、その噂の内容と確かに一致しているな」
「ですが、何度も冒険者や兵士がこの地域一帯の調査を行ったようですが、盗賊らしき存在は確認されていないとの事です。被害者の遺族に泣きつかれて何度も入念に調査を行ったそうなんですが、結局は盗賊の存在は確認されませんでした」
「なるほど、余程用心深い相手という事か」


周辺地域の村や街の人間達が何度も調査を行ったが、結局は盗賊の姿は発見されず、調査は断念したという。一か月前に調査が打ち切られた後は盗賊の被害はなくなったので調査した人間達は既に盗賊が別の地方へ逃げたと判断したが、今現在の状況はその盗賊とやらに使者が襲われたとしか思えない。


「リル、これからどうする?」
「……とりあえずは彼等の事を街の人間に報告する前に、まずは現場の調査を行う。まだ近くにその例の盗賊とやらもいるかもしれない」
「レイナ、お前の能力で何か分からないのか?」
「う~ん……とりあえず調べてみる」


チイの言葉にレイナは兵士達の死体に視線を向け、まずは両手を合わせて彼等の冥福を祈った後、解析の能力を発動した。だが、予想通りというべきか死体に対しては解析の「詳細画面」は開くことはなく、彼等が誰に殺されたのかは分からなかった。

レイナはやはりダメだった事をリル達に伝えようとすると、不意に横転した馬車が視界に入り、こちらならば解析の能力が発動して何か手掛かりを掴めるのではないかと試しに解析を行う。


(解析)


馬車を視界に納めた状態でレナは解析を発動させると、死体と違ってこちらの方は詳細画面が表示され、どのような経緯で馬車が壊れたのかを確認できた。


『馬車(破損)――右側の車輪に強い衝撃を受け、横転した際に破損』


武器や魔道具の場合とは異なり、表示される画面は質素な物だが壊れた経緯を確認する事は出来た。文章によると右側から強い衝撃を受けて壊れたようだが、確かに馬車の右側の車輪は砕け散った状態だった。


(もう少し詳しい内容を調べられないかな……あ、出来た)


レイナが破壊に至るまでの経緯を知りたがると、自動的に画面が更新されて内容が変更し、正に「詳細」が表示される。


『馬車(破損)――移動中、ファングを従えたホブゴブリンの攻撃を受けて右側の車輪ごと破壊され、そのまま横転した』


更新された文章を見てレイナは驚き、内容を見るとどうやら盗賊の襲撃だと思われたが、実際はファングを従えた「ホブゴブリン」の仕業であると判明した。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...