解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
126 / 367
獣人王国編

第126話 クロミン推参!!

しおりを挟む
「う、嘘だろ……何だよ、あれ」
「もう、終わりだ……」
「諦めるな!!な、何とか食い止めるんだ!!」
「食い止めるって……どうやってだよ!?」


迫りくる数体の牙竜の姿に対して兵士も冒険者も半数は諦め、城壁に移動したレイナ達も冷や汗を流す。災害の象徴とされる竜種が数体、それもアンデッドと化して迫りくる光景を見て殆どの人間が諦めかけた。

レイナでさえも流石にこの状況を覆す策は簡単に思いつかず、駄目元で解析の能力を発動させた。クロミンの時のように牙竜を操作する事が出来るのかを試すが、解析は「生物」にしか通用しないのかアンデッドに対しては詳細画面が開かない。


(アンデッドには解析が使えないのか!?なら、どうすれば……!!)


迫りくる牙竜の数は4体、それに対して城壁を防衛する人間はせいぜい300~400人程度、数の上では1体辺りに100人で抑えつけるしかないが、相手は並み大抵の敵ではない。

解析が通じない以上は自力で戦って倒すしかなく、レイナはエクスカリバーを取り出して対処するしかないのかと思われた時、地上の方から城壁に飛び移る影が現れた。


「「ウォンッ!!」」
「ぷるるんっ!!」
「うわっ!?びっくりした!!」
「シロ、クロ?それにクロミンまで……」
「どうしたんだ急に……」


頭にクロミンを乗せたシロとクロが城壁に現れ、急に自分達の元に戻って来た彼等にリル達は戸惑うが、クロミンが何かを伝えるようにレイナの元へ急ぐ。


「ぷるぷるぷ~るっ!!」
「え、何?自分も戦いたい?」
「レイナ、スライムの言葉が分かるのか!?」
「いや、何となく意思が伝わるというか……」


レイナは胸元に飛び込んできたクロミンが身体を震わせて何かを伝えようとしている事を察し、すぐにクロミンの考えを読み取る。そして迫りくる牙竜に視線を向け、ここはクロミンに任せるしかないかと思い、自分の分の聖水を取り出す。

クロミンを元の姿に戻すために必要な文字数は「4文字」のため、クロミンを戦わせるなら本日中はレイナは文字変換の能力は使えなくなってしまう。だが、この最悪な状況を覆すためにはクロミンの力は必要不可欠だった。


「解析……頼んだぞクロミン!!」
「ぷるっくりんっ!!」
「そんな鳴き声も上げられるのか……いけ、クロミン!!君に決めた!!」


解析を発動させてクロミンの詳細画面を文字変換の能力で改変すると、レイナは城壁から聖水を咥えたクロミンを落とす。その事に他の者達は気付いた様子はなく、絶望の表情を浮かべて迫りくる牙竜達を見ていた。

しかし、投げ放たれたクロミンは空中にて身体を光り輝かせると徐々に巨大化を果たし、やがて「黒竜」へと変身する。城壁の人間達は唐突に地上に出現した黒竜に気付き、更に大きな悲鳴を上げた。


「ガアアアアアッ!!」
「う、うわぁああっ!?」
「な、なんでここにも牙竜がっ!?」
「まずい、逃げろっ……えっ!?」


黒竜は咆哮を放つと口元に咥えていた聖水の瓶を破壊し、牙に聖水を滲ませる。この聖水は魔物に対しては影響は与える事はなく、アンデッド以外の存在には無害であった。そして聖水を牙に馴染ませた黒竜は駆け出すと、真っ先に牙竜の1体に噛みついて叩き潰す。


「ガアアッ!!」
「ギャウッ!?」
『ガアッ……!?』


数秒も経過しない内に牙竜の一体が黒竜によって地面に叩きつけられ、そのまま首の骨をへし折られる。通常の牙竜よりも体格が大きく、亜種特融の高い戦闘力を誇る黒竜にとっては通常種の牙竜など相手にもならず、聖水を滲ませた牙を食い込ませて首元を引き千切る。


「アガァッ!!」
「ッ……!?」


首を千切られた牙竜は断末魔の悲鳴を上げる事も出来ずに倒れ込み、そのまま灰と化す。その様子を見ていた他の牙竜は強力な生物の気配を感じ取り、真っ先に黒竜へと向かう。


『ガアアッ!!』
「グガァッ!!」


怪獣映画の如く迫りくる3体の牙竜に対して黒竜は尻尾を振り払い、顔面を引っぱ叩く。戦闘力という点では黒竜の方が勝るが、アンデッドと化した牙竜は痛覚は存在せず、躊躇なく傷を負っても襲いかかって来た。


「ガアアッ!!」
「ガウッ!!」
「アガァッ!!」
「ッ……!?」


黒竜の身体に3体の牙竜の牙が食い込み、流石の黒竜も苦痛の表情を浮かべ、3体がかりで抑え込まれてしまう。その様子を城壁の上で見ていたレイナは見ていられず、シロとクロに頼んで黒竜の元まで運んでもらおうとした。


「シロ君、クロミンの所まで連れて行ってくれる」
「ウォンッ!!」
「なっ!?本気かレイナ!?危険過ぎるぞ!!」
「だからって、このまま見捨てられないよ!!」
「やれやれ……仕方ない、私達も行こう」
「仲間は見捨てない、それが銀狼隊の……いや、騎士団の掟」


レイナの言葉にチイは驚くが、ネコミンとリルも賛成してくれ、4人はシロとクロに乗り込むと黒竜の援護のために城壁から飛び降りようとした。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...