121 / 367
獣人王国編
第121話 魅了の習得
しおりを挟む
「あれ、勝手に開いた?何か覚えたのか……げっ!?」
『魅了――異性を引き寄せ、自分の虜へとさせる』
ステータス画面の固有能力の一覧にとんでもない能力が追加され、どうやら吸血鬼を倒した事で覚えたらしい。少し前に初めて「亜種」を倒したときのように能力が追加された事を思い出し、どうやら吸血鬼などの存在を倒しても能力を覚える事がある事が発覚した。
気になる事があるとすれば、どうして吸血鬼を倒したときにこちらの画面が表示されなかった事だが、恐らく考えられるとしたら吸血鬼が操作していたアンデッドを全て倒した事が原因かもしれない。吸血鬼本体を倒すだけではなく、吸血鬼が生み出した「僕」も倒す事が習得条件だったのかもしれない。
(それにしても魅了って……これはまたとんでもない能力を身に着けたな)
魅了という能力は異性限定に効果があるらしく、もしもこの姿の状態で発動したらと思うとレイナは背筋が凍り付く。女性に化けている時も何度か男性に声を掛けられたが、この能力を使えば更に多くの男性に言い寄られるかもしれず、はっきりと言って冗談ではなかった。
但し、能力自体は貴重だと思われるので時と場合によっては使い分けるのも悪くないかもしれない。一先ずは家畜小屋の方へと戻ると、レイナはリュックの中に収納しているリル達を呼び出す事にした――
――呼び出したときには既に吸血鬼もアンデッドを葬っていたという事態にリル達は戸惑うが、結果としては犠牲も出さずに吸血鬼を討伐を果たした事は喜ばしい。しかし、リルはレイナから吸血鬼の少女の話を少々気になる事があった。
「吸血鬼は小さな少女……しかも精神状態がまともじゃなかった?」
「はい、なんというか……アンデッドのように理性を失っていたように見えました」
「リル様、これはもしかしたら……」
「ああ……恐らく、その少女は完全には適合出来なかったんだろう」
「適合?」
リルの言葉にレイナは戸惑い、いったいどういう意味なのかと尋ねる前にネコミンが説明する。
「魔物の中には吸血鬼のように普通の人間に力を与えて、自分たちと同じ種族へと変える存在もいる。だけど、必ずしも人間が他の種族になれるとは限らない。上手く種族が変化したとしても、まるで獣のように理性を失ったり、力を使いこなせい場合も多い」
「そんな人間の事を「不適合者」と呼ぶ。今回の場合、その少女は吸血鬼に完全に変異出来なかった事から不適合者だったんだろう」
「そうなんですか……え、ちょっと待ってください。という事は……」
「その少女を吸血鬼に変貌させた別の存在がいる、という事になるな」
吸血鬼の少女を倒した事で事態は解決されたと思い込んでいたレイナだったが、リル達の話を聞いてまだ問題は解決していない事を知る。吸血鬼の少女が不適合者という事は他の何者かが彼女を吸血鬼に変異させた事は間違いない。
まだ吸血鬼が存在するという事実にレイナ達は油断できず、すぐに場所を移動してレイナ達は周辺の様子や他の村がないのかを探索する必要があった――
――それから二日後、予想通りというべきか既に吸血鬼の襲撃を受けて廃村となった村をいくつも発見する。生き残った住民はおらず、村は壊滅状態だった。だが、やっとの事でレイナ達はまだ襲われていない大きな街を発見し、住民に話を聞くことが出来た。
「あんたら、よく無事に辿り着けたな!!最近、ここら辺にはアンデッドが出没するようになってな……」
「この村にも毎晩、アンデッドが押し寄せてくるんだよ。警備兵だけじゃ対応できなくて、俺達一般人も駆り出されている始末だよ」
「悪いが、今は余所者をもてなす余裕はないんだ。この村に泊まりたいというのならあんたらも手伝ってくれや」
街の人間たちの話を聞くところによると、こちらの村の方にもアンデッドが出没するらしく、街の人間は力を合わせて村を守っているという。しかし、聖属性の武器か魔法で攻撃しなければ完全に倒す事が出来ないアンデッドを相手に抵抗する事も難しい。
今現在はどうにか警備兵と街の男達が協力して街を取り囲む防壁を守護しているが、アンデッドは日が傾くと地中から出現し、襲いかかってくるので彼等は碌に寝付けもしなかった。日中でも夜を迎えるとアンデッドが襲いかかってくるという事実に恐怖に苛まれ、碌に休む事も出来ない。
レイナ達は外見が冒険者を装っている事からも村人たちに協力を求められ、共に戦うように願われる。アンデッドの件は放置出来ないため、リルは快く承諾したが街の警護を行う警備隊長に話しかける。
「他の街の警備兵や冒険者に応援は頼んでいないのかい?このままだと耐え切れないんだろう?」
「もうとっくの昔に使者は送っている!!だが、一向に戻ってくる気配がないんだ!!ここから別の街まで二日も掛からないのに一週間も返事が無しなんだぞ!!」
「……なるほど」
連日の街の防衛でナーバス気味になった警備隊長の言葉を聞いたリルは納得すると、レイナ達の元に戻って彼女はこの街に留まる事を告げた。
『魅了――異性を引き寄せ、自分の虜へとさせる』
ステータス画面の固有能力の一覧にとんでもない能力が追加され、どうやら吸血鬼を倒した事で覚えたらしい。少し前に初めて「亜種」を倒したときのように能力が追加された事を思い出し、どうやら吸血鬼などの存在を倒しても能力を覚える事がある事が発覚した。
気になる事があるとすれば、どうして吸血鬼を倒したときにこちらの画面が表示されなかった事だが、恐らく考えられるとしたら吸血鬼が操作していたアンデッドを全て倒した事が原因かもしれない。吸血鬼本体を倒すだけではなく、吸血鬼が生み出した「僕」も倒す事が習得条件だったのかもしれない。
(それにしても魅了って……これはまたとんでもない能力を身に着けたな)
魅了という能力は異性限定に効果があるらしく、もしもこの姿の状態で発動したらと思うとレイナは背筋が凍り付く。女性に化けている時も何度か男性に声を掛けられたが、この能力を使えば更に多くの男性に言い寄られるかもしれず、はっきりと言って冗談ではなかった。
但し、能力自体は貴重だと思われるので時と場合によっては使い分けるのも悪くないかもしれない。一先ずは家畜小屋の方へと戻ると、レイナはリュックの中に収納しているリル達を呼び出す事にした――
――呼び出したときには既に吸血鬼もアンデッドを葬っていたという事態にリル達は戸惑うが、結果としては犠牲も出さずに吸血鬼を討伐を果たした事は喜ばしい。しかし、リルはレイナから吸血鬼の少女の話を少々気になる事があった。
「吸血鬼は小さな少女……しかも精神状態がまともじゃなかった?」
「はい、なんというか……アンデッドのように理性を失っていたように見えました」
「リル様、これはもしかしたら……」
「ああ……恐らく、その少女は完全には適合出来なかったんだろう」
「適合?」
リルの言葉にレイナは戸惑い、いったいどういう意味なのかと尋ねる前にネコミンが説明する。
「魔物の中には吸血鬼のように普通の人間に力を与えて、自分たちと同じ種族へと変える存在もいる。だけど、必ずしも人間が他の種族になれるとは限らない。上手く種族が変化したとしても、まるで獣のように理性を失ったり、力を使いこなせい場合も多い」
「そんな人間の事を「不適合者」と呼ぶ。今回の場合、その少女は吸血鬼に完全に変異出来なかった事から不適合者だったんだろう」
「そうなんですか……え、ちょっと待ってください。という事は……」
「その少女を吸血鬼に変貌させた別の存在がいる、という事になるな」
吸血鬼の少女を倒した事で事態は解決されたと思い込んでいたレイナだったが、リル達の話を聞いてまだ問題は解決していない事を知る。吸血鬼の少女が不適合者という事は他の何者かが彼女を吸血鬼に変異させた事は間違いない。
まだ吸血鬼が存在するという事実にレイナ達は油断できず、すぐに場所を移動してレイナ達は周辺の様子や他の村がないのかを探索する必要があった――
――それから二日後、予想通りというべきか既に吸血鬼の襲撃を受けて廃村となった村をいくつも発見する。生き残った住民はおらず、村は壊滅状態だった。だが、やっとの事でレイナ達はまだ襲われていない大きな街を発見し、住民に話を聞くことが出来た。
「あんたら、よく無事に辿り着けたな!!最近、ここら辺にはアンデッドが出没するようになってな……」
「この村にも毎晩、アンデッドが押し寄せてくるんだよ。警備兵だけじゃ対応できなくて、俺達一般人も駆り出されている始末だよ」
「悪いが、今は余所者をもてなす余裕はないんだ。この村に泊まりたいというのならあんたらも手伝ってくれや」
街の人間たちの話を聞くところによると、こちらの村の方にもアンデッドが出没するらしく、街の人間は力を合わせて村を守っているという。しかし、聖属性の武器か魔法で攻撃しなければ完全に倒す事が出来ないアンデッドを相手に抵抗する事も難しい。
今現在はどうにか警備兵と街の男達が協力して街を取り囲む防壁を守護しているが、アンデッドは日が傾くと地中から出現し、襲いかかってくるので彼等は碌に寝付けもしなかった。日中でも夜を迎えるとアンデッドが襲いかかってくるという事実に恐怖に苛まれ、碌に休む事も出来ない。
レイナ達は外見が冒険者を装っている事からも村人たちに協力を求められ、共に戦うように願われる。アンデッドの件は放置出来ないため、リルは快く承諾したが街の警護を行う警備隊長に話しかける。
「他の街の警備兵や冒険者に応援は頼んでいないのかい?このままだと耐え切れないんだろう?」
「もうとっくの昔に使者は送っている!!だが、一向に戻ってくる気配がないんだ!!ここから別の街まで二日も掛からないのに一週間も返事が無しなんだぞ!!」
「……なるほど」
連日の街の防衛でナーバス気味になった警備隊長の言葉を聞いたリルは納得すると、レイナ達の元に戻って彼女はこの街に留まる事を告げた。
0
お気に入りに追加
975
あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる