解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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ヒトノ帝国編

第104話 牙路

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――帝都を出発してから5日の月日が流れ、レイナが強化させた「魔除けの石」の効果のお陰か、予想以上に早く帝国の領地を抜け出してレイナ達は遂に「牙路」と呼ばれる場所へ辿り着く。

この「牙路」はキタノ山脈と海の間に存在する唯一のケモノ王国とヒトノ帝国が平地で繋がる地域であり、ここを通ればケモノ王国の領地へと入る。しかし、この牙路を利用する人間は滅多におらず、余程の命知らずかあるいはこの地域の危険性を馬鹿しかいない。



牙路の名前の由来は竜種である「牙竜」が支配圏に納めている地域であり、かつてヒトノ帝国がケモノ王国へ送り出した軍隊はこの牙路を通過しようとした際、数匹の牙竜によって数万人の犠牲者を生み出して撤退したという歴史がある。それ以降、この地域はケモノ王国とヒトノ帝国が通じる路である事、そして牙竜の住処という理由から「牙路」と名付けられた。



牙竜は竜種の中では「下位種」に当たるが、それでも戦闘力は凄まじく高く、しかも正確は狂暴で好戦的である事からケモノ王国とヒトノ帝国の人々の中で最も恐れられている竜種である。

さらに最悪な事に牙竜は生息地域を離れて人里に現れる事も多々あり、そのせいで両国は牙路の近くには村や街は作る事は出来ず、監視のために兵士さえも送り込む事が出来ない。それほどまでに牙竜という存在は恐れられ、手が付けられない危険な相手である事を示していた――




「――という訳だ。牙竜がどれほど危険な存在か分かったか?」
「う~ん……なんか、話しが凄すぎて逆に想像しにくいです」
「まあ、他国から人間にとってはそういう反応をするだろうな」


牙路に辿り着いたレイナ達はシロとクロに乗り込み、移動を行いながらも会話を行う。今回はレイナはチイの後ろに乗り込み、彼女から色々と牙竜の生態を教わる。ちなみにリルとネコミンはクロに乗り込んで先行を行い、魔除けの石をネコミンが掲げながら移動を行う。

今の所は順調に進んでおり、あと1時間も移動すれば牙路を通過してケモノ王国の領地へ入ろうとしていた。現時点では牙竜が姿を現す様子はなく、他の魔物も現れる様子はない。


「それにしてものどかで綺麗な風景だな……そんなに恐ろしい魔物が支配しているとは思えないや」
「まあ、確かにな……ここを通るのは私も初めてだ。思っていたよりも綺麗な場所だ」
「だが、油断はしない方が良い。今の所は問題ないが、もしも牙竜が現れた場合は私達では勝てない」
「……でも、レナなら何とか出来るんじゃないの?」
「う~ん……その牙竜というのを見ない限りは何とも言えないかな」


どんな相手だろうとレイナが解析の能力を発動させ、詳細画面を開くことが出来れば対処は出来るかもしれない。ちなみに現在のレイナは年齢を文字変換の能力で変化させ、現在は「15才」の身体に戻っていた。


「……おい、レナ。私にひっついて胸を押し付けるな!!私に対する嫌がらせか!?」
「い、いや……しっかりと掴まっていないと落ちそうだから、別にそんなつもりじゃ……」
「何だと!?私の胸が小さすぎて掴みにくいから落ちやすいというのか!?」
「そんな事は言ってないよ!?」
「はあっ……相変わらずチイは胸に関する事は思いこみが激しい」
「全く、まだ成長期なのだからそんなに焦る必要はないだろう」
「御二人に私の気持ちは分かりません!!毎回、服屋に訪れる度に少年と間違われて男物の服を店員に勧められる私の気持ちが分かりますか!?」
『ご、ごめんなさい……』


チイの涙目の訴えにレイナ達は謝罪を行い、それからしばらくの間は3人でチイを慰める事になったが、唐突にシロとクロが移動の際中に立ち止まる。


「ウォンッ!?」
「グルルルッ……!!」
「うわっ……ど、どうしたの?」
「すんすん……血の臭いがする、しかも人間の血じゃない」
「臭いって……」


レイナは何も感じられないが、どうやら進路方向に血の臭いを感じたシロとクロは立ち止まり、ネコミンも嗅ぎつけたのか彼女は冷や汗を流す。


「血の臭いがどんどんと強くなっていく……この先に何かが待ち受けている」
「まさか、牙竜か!?」
「遂に現れたか……ん?レイナ君、それはなんだ?」
「双眼鏡です」


以前に文字変換の能力で作り出した双眼鏡を取り出したレイナは前方に構えると、ついでに技能の「遠視」も発動させた。この技能は視力を一時的に高める能力であり、双眼鏡も組み合わせる事で更に遠くの景色を確かめる事が出来た。

双眼鏡越しにレナは前方の様子を伺うと、かなり離れた位置に存在するが、何か魔物の死体のような物が横たわっていた。その魔物の死骸を捕らえたレナは呆気に取られ、これまでに遭遇した魔物と比べてもあまりにも異形な姿形をしており、同時に心当たりがある風貌だった――
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