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ヒトノ帝国編
第87話 検問
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「ここまで大分移動する事が出来た。国境まであと少しだが……少し問題がある」
「問題?」
「レイナ君のお陰で私達は食料や水の補給は出来た。このまま国境へ向かう方が良いだろう。しかし、その前に厄介な場所を通り抜けないといけない」
リルは地図を取り出すと進路上に存在する広大な森を指差し、この森を迂回するかあるいは突き進むのかを相談を行う。
「この森は帝国では魔獣の森と呼ばれている。理由は多数の魔獣種が生息している事から名付けられたらしい」
「魔獣種?」
「オークやコボルトなどの獣の特徴が強い魔物達の事だ。ちなみにゴブリンのような魔物はは魔人種と言われている」
「分かりやすく言えば毛皮が生えた魔物」
「なるほど……?」
国境へ向かうためにはこの魔獣の森を抜けるか、あるいは大きく迂回しないといけない。しかし、迂回する場合はかなりの時間を必要とするらしく、しかも森の周辺には数多くの帝国兵が配置されているという。
「この魔獣の森を通り抜けられる路は一つ、この森を分断するように存在する小さな路だけだ。しかし、この路は帝国軍の砦が複数配置され、検問も行っている。私達が通り抜ける事は難しいだろう」
「え?じゃあ、どうすれば……」
「単純な話だ、帝国が管理していない場所を潜り抜ければいい……最も簡単な話ではないがな」
森の中にはたった一つだけ潜り抜けられる路が存在するが、そこは帝国の軍隊が砦を築き、潜り抜けるのは不可能だった。そうなるとレナ達が出来る方法は限られ、時間をかけて魔獣の森を迂回するか、あるいは危険を犯して魔獣の森を潜り抜けるかの二つである。
仮に魔獣の森を迂回する場合はシロとクロの脚力でも3日は掛かり、一方で森を通過する場合は1日も掛からずに抜け出す事が出来た。森の中で迷う心配もあるが、ここでチイの地図製作が役立つ。迷宮以外の場所でも彼女の能力は役立ち、常に自分の位置を把握する事が出来れば道に迷う心配はない。
「既に私達が帝都を去ってからかなりの時間が経過している。きっと、帝国側も私達の捜索のために地方にまで連絡を届けているだろう。どちらにしろ検問を受ければ鑑定士によって私達の正体がばれてしまうが……」
「じゃあ、森を突き抜けるしかないんですか?」
「ああ、それ以外に方法はない。魔物との戦闘は避けられないと考えてくれ」
リルの言葉に全員が緊張の面持ちを浮かべ、森の中には魔除けの石さえも受け付けない凶悪な魔獣も複数存在するらしく、決して油断は出来ない。リルの先導の元、レナ達は遂に魔獣の森へ向かう――
――帝国領地の国境付近に存在する「魔獣の森」そこには多数の帝国兵が配置され、常日頃から森の観察を行っていた。この森には多数の魔物が生息し、魔人種は存在しない。生息する魔物はオーク、コボルト、ファング(狼型の魔物)、他にも様々な種類が存在するが、中でも一番帝国兵に恐れられている存在がいた。
森の中に存在する帝国兵が築いた砦では1日に1回は必ず魔獣の群れの襲撃を受けており、その中でも森の中腹部に存在する砦は最も激しい被害を受けていた。こちらの砦は幾度も魔獣達によって何度も壊滅の危機に陥っており、毎日のように数多くの死傷者が生まれる。
「隊長、また「奴」が現れました!!」
「ちぃっ……今日だけでこれで3度目だぞ!?くそ、他の砦の援軍はまだか!!」
「既に魔獣は砦の中にも入り込んでいます!!指揮をお願いします!!」
砦の警備を任せている兵隊長は部下の言葉を聞いて即座に外へ飛び出すと、報告通りに砦の内部でも激しい戦闘が繰り広げられ、オークやコボルトなどの魔獣種が兵士達に襲いかかっていた。
「プギィイイッ!!」
「こ、この豚がぁっ!!」
「ガアアッ!!」
「コボルトは壁に追い込んでから始末しろ!!単独で挑むな、数で押し切れ!!」
既に十数体の魔獣が砦の中に入り込み、兵隊長は戦闘中の兵士達に指示を出す。どうしてこれだけの数の魔獣の侵入を許したのかというと、既に砦の出入口は破壊され、外を警備していた兵士達の大半も殺されていた。
――ブモォオオッ……!!
戦闘の際中、砦の外から牛のような咆哮が響き渡り、それを聞いた兵士と魔獣は身体を硬直させた。その鳴き声を耳にするだけでも身体が自然と恐怖して自由に動けなくなる。兵隊長は歯を食いしばりながら出入口に視線を向け、武器を構える。
「来たか……この牛の悪魔めっ!!」
出入口から姿を現したのは牛の頭に人間のような胴体を持ち、それでいながら体躯はオークを上回る大きさの魔獣が出現した。全身はまだら模様の毛皮で覆われており、その手には過去に砦の兵士から盗み出した戦斧が握り締められていた。
この魔物の名前は「ミノタウロス」その戦闘力は魔獣種の中でも上位に位置しており、ゴブリンよりも知能が高く、他種族の魔物さえも従えるだけの知性を誇る。場合によって人語さえも理解し、言葉を話せる個体まで存在した。
「……ブモォッ!!」
「プギィイイイッ!!」
「ガアアアッ!!」
「怯むな、迎え撃てっ!!」
『わああああっ!!』
砦内にてミノタウロスが号令を行うように鳴き声を上げると、それに呼応して魔獣達の士気が上がり、兵隊長も負け地に兵士達に反撃を命じた――
「問題?」
「レイナ君のお陰で私達は食料や水の補給は出来た。このまま国境へ向かう方が良いだろう。しかし、その前に厄介な場所を通り抜けないといけない」
リルは地図を取り出すと進路上に存在する広大な森を指差し、この森を迂回するかあるいは突き進むのかを相談を行う。
「この森は帝国では魔獣の森と呼ばれている。理由は多数の魔獣種が生息している事から名付けられたらしい」
「魔獣種?」
「オークやコボルトなどの獣の特徴が強い魔物達の事だ。ちなみにゴブリンのような魔物はは魔人種と言われている」
「分かりやすく言えば毛皮が生えた魔物」
「なるほど……?」
国境へ向かうためにはこの魔獣の森を抜けるか、あるいは大きく迂回しないといけない。しかし、迂回する場合はかなりの時間を必要とするらしく、しかも森の周辺には数多くの帝国兵が配置されているという。
「この魔獣の森を通り抜けられる路は一つ、この森を分断するように存在する小さな路だけだ。しかし、この路は帝国軍の砦が複数配置され、検問も行っている。私達が通り抜ける事は難しいだろう」
「え?じゃあ、どうすれば……」
「単純な話だ、帝国が管理していない場所を潜り抜ければいい……最も簡単な話ではないがな」
森の中にはたった一つだけ潜り抜けられる路が存在するが、そこは帝国の軍隊が砦を築き、潜り抜けるのは不可能だった。そうなるとレナ達が出来る方法は限られ、時間をかけて魔獣の森を迂回するか、あるいは危険を犯して魔獣の森を潜り抜けるかの二つである。
仮に魔獣の森を迂回する場合はシロとクロの脚力でも3日は掛かり、一方で森を通過する場合は1日も掛からずに抜け出す事が出来た。森の中で迷う心配もあるが、ここでチイの地図製作が役立つ。迷宮以外の場所でも彼女の能力は役立ち、常に自分の位置を把握する事が出来れば道に迷う心配はない。
「既に私達が帝都を去ってからかなりの時間が経過している。きっと、帝国側も私達の捜索のために地方にまで連絡を届けているだろう。どちらにしろ検問を受ければ鑑定士によって私達の正体がばれてしまうが……」
「じゃあ、森を突き抜けるしかないんですか?」
「ああ、それ以外に方法はない。魔物との戦闘は避けられないと考えてくれ」
リルの言葉に全員が緊張の面持ちを浮かべ、森の中には魔除けの石さえも受け付けない凶悪な魔獣も複数存在するらしく、決して油断は出来ない。リルの先導の元、レナ達は遂に魔獣の森へ向かう――
――帝国領地の国境付近に存在する「魔獣の森」そこには多数の帝国兵が配置され、常日頃から森の観察を行っていた。この森には多数の魔物が生息し、魔人種は存在しない。生息する魔物はオーク、コボルト、ファング(狼型の魔物)、他にも様々な種類が存在するが、中でも一番帝国兵に恐れられている存在がいた。
森の中に存在する帝国兵が築いた砦では1日に1回は必ず魔獣の群れの襲撃を受けており、その中でも森の中腹部に存在する砦は最も激しい被害を受けていた。こちらの砦は幾度も魔獣達によって何度も壊滅の危機に陥っており、毎日のように数多くの死傷者が生まれる。
「隊長、また「奴」が現れました!!」
「ちぃっ……今日だけでこれで3度目だぞ!?くそ、他の砦の援軍はまだか!!」
「既に魔獣は砦の中にも入り込んでいます!!指揮をお願いします!!」
砦の警備を任せている兵隊長は部下の言葉を聞いて即座に外へ飛び出すと、報告通りに砦の内部でも激しい戦闘が繰り広げられ、オークやコボルトなどの魔獣種が兵士達に襲いかかっていた。
「プギィイイッ!!」
「こ、この豚がぁっ!!」
「ガアアッ!!」
「コボルトは壁に追い込んでから始末しろ!!単独で挑むな、数で押し切れ!!」
既に十数体の魔獣が砦の中に入り込み、兵隊長は戦闘中の兵士達に指示を出す。どうしてこれだけの数の魔獣の侵入を許したのかというと、既に砦の出入口は破壊され、外を警備していた兵士達の大半も殺されていた。
――ブモォオオッ……!!
戦闘の際中、砦の外から牛のような咆哮が響き渡り、それを聞いた兵士と魔獣は身体を硬直させた。その鳴き声を耳にするだけでも身体が自然と恐怖して自由に動けなくなる。兵隊長は歯を食いしばりながら出入口に視線を向け、武器を構える。
「来たか……この牛の悪魔めっ!!」
出入口から姿を現したのは牛の頭に人間のような胴体を持ち、それでいながら体躯はオークを上回る大きさの魔獣が出現した。全身はまだら模様の毛皮で覆われており、その手には過去に砦の兵士から盗み出した戦斧が握り締められていた。
この魔物の名前は「ミノタウロス」その戦闘力は魔獣種の中でも上位に位置しており、ゴブリンよりも知能が高く、他種族の魔物さえも従えるだけの知性を誇る。場合によって人語さえも理解し、言葉を話せる個体まで存在した。
「……ブモォッ!!」
「プギィイイイッ!!」
「ガアアアッ!!」
「怯むな、迎え撃てっ!!」
『わああああっ!!』
砦内にてミノタウロスが号令を行うように鳴き声を上げると、それに呼応して魔獣達の士気が上がり、兵隊長も負け地に兵士達に反撃を命じた――
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