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ヒトノ帝国編
第83話 経験石
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「た、倒したのか?」
「あ、はい。もう死んでると思います」
「全く……お前という奴は何度私達を驚かせれば気が済むんだ」
「でも、助かった。亜種を相手に誰も死なないで勝てたのは良い事」
倒れたゴブリンの亜種の死体の元に全員が集まり、状態を調べる。外見を確認した限りでは損傷は見られず、心臓が唐突に停止したかのように死亡していた。リルは短剣を取り出してゴブリンの身体を切り裂こうとしたが、皮膚が硬すぎて彼女の力でも刃を食い込ませる事も出来なかった。
「くっ……硬いな」
「あの、いったい何を?」
「亜種は必ず体内に「経験石」と呼ばれる特殊な魔石を宿している。この魔石を破壊すれば大量の経験値と同時に新しい技能を覚えられる可能性が高い……どうにか回収したいが」
「経験石……じゃあ、ちょっと下がってください。アスカロンでどうにか切ってみます」
鞄からアスカロンを取り出すとレイナはゴブリンの胸元に刃を構え、ゆっくりと切り裂く。切断力に関してはフラガラッハを上回るアスカロンの刃によって皮膚は簡単に切り裂かれ、胸元が切り開かれる。その光景を見てレイナは吐き気を催すが、リル達は慣れているのか特に表情も変えずに覗き込む。
「よし、あったぞ!!」
「リル様、私が取り出します」
「気を付けて……ゆっくりと引き抜いて」
「うえっぷ……」
この中では一番小柄で腕が細いチイが亜種の死体に手を伸ばし、胸元から体内に右手を入れる。その様子にレイナは口元を抑えるが、この世界で生きていくためには必要な知識かもしれないと判断して観察を行う。チイはゴブリンの体内から掌に収まる程度の赤黒い宝石のような物を取り出す。
目的の物を手にしたリル達は喜び、ゴブリンの死体に関しては焼き捨てる事にした。死体を放置しておくと血の臭いを嗅ぎつけた他の魔物を引き寄せる可能性があり、早急に処理を行う。そして水で洗い流した経験石に関してはリルはレイナに渡す事を決めた。
「レイナ君、これは君の物だ」
「えっ……」
「そうだな、お前が倒したんだ。さあ、受取れ」
「遠慮する必要はない」
経験石を手渡されたレイナは困り果て、自分の掌に乗った経験石を見てどうすればいいのか分からず、経験石を凝視してしまう。これをどのように利用すれば経験値が手に入るのか思いつかなかったレイナは素直に尋ねる事にした。
「あの……これって、どうすればいいんですか?」
「経験石は破壊すれば経験値を得られる。しかも普通に魔物を倒したときよりも更に多くの経験値を得られるからな、だから非戦闘職の人間にとっては経験石は魔物と戦わずにレベルを上げる事が出来る代物として人気は高い。それに一定の確率で魔物が使用していた能力を覚えられる可能性もある」
「じゃあ、俺もさっきの魔物の能力を覚える事が出来たりするんですか?」
「運が良ければ、ね」
「破壊するときは経験石用の魔道具を使うのが一般的だけど、レイナの場合はその剣で壊せばいいと思う」
ネコミンがアスカロンを指差すと、レイナは言われる通りに経験石に刃を構え、振り下ろす。その瞬間、アスカロンの刃が経験石を真っ二つに切り裂いた瞬間、経験石が光り輝きながら消え去り、レイナの身体も淡く光った。
「うわっ……!?」
自分の身体の中に熱い何かが送り込まれる感覚に陥り、レイナは驚きながらもステータス画面の確認を行う。するとレベルの項目が一気に「23」にまで上昇しており、先ほどゴブリン亜種を倒したときと経験石を破壊したときに得られた経験値で3レベルも上昇したらしい。
―――――――――――
固有能力
・解析――あらゆる物体の詳細を画面として表示する。生物の場合はステータスとして表示される
・瞬動術――神速と跳躍を組み合わせた高速移動術
・硬化――筋肉を凝縮させ、身体の一部の防御力を上昇
―――――――――――
しかも固有能力の項目の欄に新しい能力が追加されており、先ほどゴブリンの亜種が使用していた「硬化」という能力が芽生えていた。説明文を見た限りだと身体の一部だけ防御力を強化する能力らしく、戦闘の際には防御に役立ちそうな固有能力を得られた。
「やった!!固有能力が増えてる!!」
「おめでとう、無事に能力を覚えられたようだね」
「運の良い奴だ」
「羨ましい」
「えっ……あ、なんかすみません」
「別に謝ることはないさ、君がゴブリンを倒したんだからね」
貴重な固有能力を覚えられた事にレナは喜ぶが、リル達の方は少し惜しむ表情を浮かべる。経験石は滅多に手に入る代物ではなく、大量の経験値と能力を覚えられる機会を逃した事になる。しかし、レイナがいたからこそ被害を出さずにゴブリンを倒したのも事実であり、文句は言えない。
ゴブリンの死体の償却を終えた後、少しだけ休憩を挟むとレイナ達は先を急ぐ事にした。村がもう人が住める状態でなければ野宿を行うのと同じ事であり、それならば今日の内に進めるところまで進むことを決めた。
「あ、はい。もう死んでると思います」
「全く……お前という奴は何度私達を驚かせれば気が済むんだ」
「でも、助かった。亜種を相手に誰も死なないで勝てたのは良い事」
倒れたゴブリンの亜種の死体の元に全員が集まり、状態を調べる。外見を確認した限りでは損傷は見られず、心臓が唐突に停止したかのように死亡していた。リルは短剣を取り出してゴブリンの身体を切り裂こうとしたが、皮膚が硬すぎて彼女の力でも刃を食い込ませる事も出来なかった。
「くっ……硬いな」
「あの、いったい何を?」
「亜種は必ず体内に「経験石」と呼ばれる特殊な魔石を宿している。この魔石を破壊すれば大量の経験値と同時に新しい技能を覚えられる可能性が高い……どうにか回収したいが」
「経験石……じゃあ、ちょっと下がってください。アスカロンでどうにか切ってみます」
鞄からアスカロンを取り出すとレイナはゴブリンの胸元に刃を構え、ゆっくりと切り裂く。切断力に関してはフラガラッハを上回るアスカロンの刃によって皮膚は簡単に切り裂かれ、胸元が切り開かれる。その光景を見てレイナは吐き気を催すが、リル達は慣れているのか特に表情も変えずに覗き込む。
「よし、あったぞ!!」
「リル様、私が取り出します」
「気を付けて……ゆっくりと引き抜いて」
「うえっぷ……」
この中では一番小柄で腕が細いチイが亜種の死体に手を伸ばし、胸元から体内に右手を入れる。その様子にレイナは口元を抑えるが、この世界で生きていくためには必要な知識かもしれないと判断して観察を行う。チイはゴブリンの体内から掌に収まる程度の赤黒い宝石のような物を取り出す。
目的の物を手にしたリル達は喜び、ゴブリンの死体に関しては焼き捨てる事にした。死体を放置しておくと血の臭いを嗅ぎつけた他の魔物を引き寄せる可能性があり、早急に処理を行う。そして水で洗い流した経験石に関してはリルはレイナに渡す事を決めた。
「レイナ君、これは君の物だ」
「えっ……」
「そうだな、お前が倒したんだ。さあ、受取れ」
「遠慮する必要はない」
経験石を手渡されたレイナは困り果て、自分の掌に乗った経験石を見てどうすればいいのか分からず、経験石を凝視してしまう。これをどのように利用すれば経験値が手に入るのか思いつかなかったレイナは素直に尋ねる事にした。
「あの……これって、どうすればいいんですか?」
「経験石は破壊すれば経験値を得られる。しかも普通に魔物を倒したときよりも更に多くの経験値を得られるからな、だから非戦闘職の人間にとっては経験石は魔物と戦わずにレベルを上げる事が出来る代物として人気は高い。それに一定の確率で魔物が使用していた能力を覚えられる可能性もある」
「じゃあ、俺もさっきの魔物の能力を覚える事が出来たりするんですか?」
「運が良ければ、ね」
「破壊するときは経験石用の魔道具を使うのが一般的だけど、レイナの場合はその剣で壊せばいいと思う」
ネコミンがアスカロンを指差すと、レイナは言われる通りに経験石に刃を構え、振り下ろす。その瞬間、アスカロンの刃が経験石を真っ二つに切り裂いた瞬間、経験石が光り輝きながら消え去り、レイナの身体も淡く光った。
「うわっ……!?」
自分の身体の中に熱い何かが送り込まれる感覚に陥り、レイナは驚きながらもステータス画面の確認を行う。するとレベルの項目が一気に「23」にまで上昇しており、先ほどゴブリン亜種を倒したときと経験石を破壊したときに得られた経験値で3レベルも上昇したらしい。
―――――――――――
固有能力
・解析――あらゆる物体の詳細を画面として表示する。生物の場合はステータスとして表示される
・瞬動術――神速と跳躍を組み合わせた高速移動術
・硬化――筋肉を凝縮させ、身体の一部の防御力を上昇
―――――――――――
しかも固有能力の項目の欄に新しい能力が追加されており、先ほどゴブリンの亜種が使用していた「硬化」という能力が芽生えていた。説明文を見た限りだと身体の一部だけ防御力を強化する能力らしく、戦闘の際には防御に役立ちそうな固有能力を得られた。
「やった!!固有能力が増えてる!!」
「おめでとう、無事に能力を覚えられたようだね」
「運の良い奴だ」
「羨ましい」
「えっ……あ、なんかすみません」
「別に謝ることはないさ、君がゴブリンを倒したんだからね」
貴重な固有能力を覚えられた事にレナは喜ぶが、リル達の方は少し惜しむ表情を浮かべる。経験石は滅多に手に入る代物ではなく、大量の経験値と能力を覚えられる機会を逃した事になる。しかし、レイナがいたからこそ被害を出さずにゴブリンを倒したのも事実であり、文句は言えない。
ゴブリンの死体の償却を終えた後、少しだけ休憩を挟むとレイナ達は先を急ぐ事にした。村がもう人が住める状態でなければ野宿を行うのと同じ事であり、それならば今日の内に進めるところまで進むことを決めた。
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